雨 夜 の 月 |
「貴方がいない時は、いつも月とお話をするの。」 僕を愛してくれた人はそう言った。僕が君に会えない時/会わない時、僕は理不尽と知りながらも夜空で笑う月に嫉妬した。 人間界に浮かぶ月を見上げ、僕は思う。一人きり残された僕、君の不在を何で補えば良い? 「アレは…私だから」 闇に塗れ込められた夜空に、孤独に浮かぶ白い月。アレが君なら、何故僕は今一度君と言葉を交わすことが叶わないのだろう。 アレが君なら、僕に優しく語りかけてくるはず。温かな手を差し伸べてくれるはず。柔らかな愛を投げかけてくれるはずなのに…。 僕は、君を愛していたか分からない。愛することの意味すら分からない僕だから。ただ、僕を愛してくれる君が好きだった。そう、それは誰でも同じ。僕を愛してくれる人なら、僕は誰でも愛するコトが出来るだろう。 それでも、君は僕を愛してくれた。君が僕を愛してくれていた頃、どうして気付いて上げられなかったのだろう。僕も、君を愛していたかもしれないコトに。それは誰にでも抱くことの出来るような感情じゃなくて、もっと特別な何か。でなくて、君がいなくなったことにこんなにも落胆する僕は有り得ないだろう。 白い月が、少しずつ雲に隠される。月が消えても、僕の中には特別な思いは呼び起こされない。アレは君じゃない。君は、君しかいない。 開け放した窓から入った夜風が、乾いた僕の頬を撫でる。冷たい風が体を冷やす前に、僕は窓を閉めた。それでも、カラダの何処か奥の方がやけに寒い気がした。 苦しみはいつも繰り返し。後悔しても後悔しても、何故過ちばかり繰り返すのか。僕の目の前で塵と化したあのコのように、僕は君すら失った。今更気付いてどうすれば良い…もう手を伸ばしても届かない。 空を覆う重たい雲が湿気を帯びて、やがて雫を落とす。天上から降り注ぐ雨は、静かにリズムを刻んで窓を叩いている。闇の世界に降りる、微かな雨音が僕を更に孤独の世界に導く。 月を無くして雲が泣く。 君を無くして、どうして僕は泣けないのだろう。 |
短い話…小説と呼ぶにはおこがましすぎますね。
珍しくノーマルなお話。
ロキスピです…互いの名前は一つも出てませんが。
ココで一つ個人的なことをば…
スピカ(てかアングルボダ)はロキの愛人です。
正妻は別にいます…北欧神話の中では、ってコトですが。
実はロキスピよりロキ×正妻を推したい天神。
でもこんな話も良いかな…とね。
魔ロキ、もっと北欧神話の設定沢山出さないかな…。
天神美香
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