思い出すのは、貴方がいた風景ばかり。
失くしたモノを追い続ける程、愚かではないけれど
過去を振り返らずにいられる程、私は強くは生きられない。
Not titled
ひどく散らかった汚い部屋で
貴方はいつも音痴な鼻歌ばかりを歌っていた。
私は貴方のベッドに寝転んで、笑いながら耳を傾けていた。
「いつか、二人だけの唄でも作ろうか」
ふざけて話した遠い記憶。
いつの間にか流れた、ありふれた日常。
白い紙に書き綴ったコトバ達。
貴方の声が静かに命を吹き込んでいく。
相変わらず音痴な歌…それでも、私は貴方の澄んだ声が好きだった。
私のコトバに
貴方の歌声
一つになる二人の唄…。
「いつか、この唄に名前を付けよう。」
そう言ったのは、貴方だった。
「二人で考えようね」
そう答えたのは、私だった。
時は流れて、季節は変わる。
「あの日」は過去に流れて想い出に変わり
「いつか」は行き着かぬ未来の夢へと消えるのでしょうか…
「…唄の名前は何が良いかな」
何もない、寒い部屋で私のコトバが彷徨う。
答えてくれる貴方は…見つからない。
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