蛇は祝福を叫んだ
「お幸せに!」
神には聞こえぬ胸の内
とても素晴らしい所だった
苦渋など一つもなく
笑い合っていれば良い世界だった
何一つ不自由ない世界
人は楽園と呼んだ
でもね
ぼくは気付いたんだ
一つだけ、この世界にないモノ
咲き乱れる花々
曇るコトを知らない青い空
永遠不変の約束の地
外界から閉ざされた神の庭園
何一つ不自由ない世界
自由だけが追い出された世界
あなたは満足だったろうね
裏切りなど考えていなかっただろう?
「広い広い鳥の籠
愚かな鳥達は籠の存在にすら気付きはしない
何でも与えよう
飛ぶコトなど忘れるまで
幸福に酔わせてしまえばよい」
君達は満足だったかい?
二人向き合ってなどいないで
ほら
外を見てごらんよ
どこまでも広がる無限の世界
神の与えぬ自由が溢れている
ぼくが教えてあげる
甘い甘い蜜の果実
恐れるコトなんてないんだよ
ただ夢から醒める時間になっただけ
むせかえる芳香
鳥の籠の鉄の扉が軋む
神は叫んだ
「出てけ!」
やっと訪れた
解放の時だ
君達は知恵と自由とを手に入れた
さぁ行け
果てしない荒野を
どこまでも続く自由の世界を
神に見放された土地
神に愛されたモノ達が行く
恋人達は手を取り合い自由の世界ヘ
泣くコトなかれ
二人の未来は明るいだろう
去り行く二人の背に
ぼくは祝福を叫んだ
「お幸せに!」
ぼくは一人
籠の中…
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