FILTRIUM
―浄化する白い布―
FILTRIUM    
        
 
FILTRIUM は、濾過を意味するラテン語で、つまりフィルターのこと。
フェルト(Felt)の語源にもなっている言葉です。
ウール繊維を絡み合わせ、縮ませて作る不織布=フェルトは、その昔ワイン醸造のための濾し布として使われてきました。
今日フィルターとして馴染み深いものの一つに、空気清浄器に内蔵されている布状の物があります。これには、お菓子のワッフルを連想させるような、凹凸のある織物構造を見る事が出来ます。
表面積が広いのは、空気中の微粒子をしっかりと吸着させるための工夫です。
また、空気浄化と言えば、近年、羊毛繊維自体に室内の空気をきれいにする力がある事がわかってきました。
シックハウス症候群の原因とされる有害化学物質 (ホルムアルデヒド等 ) をわずか1時間でほぼ 100%取り除き、無害なものに変化させる働きが実証されています。

濾過をイメージする織物を制作するために、上記のような繋がりから、布の構造・素材・技法を選びました。
そして、フィルターの働きを感じさせる凹凸を、布表面に現すために、様々な試行錯誤を繰り返しました。
ウール繊維の選択、糸の撚糸の強弱、織物組織、仕上げ加工など…
これらは、"布は平らなものというとらえ方を崩す"ための大事な要素となっていて、この展覧会のもう一つのテーマでもあります。

さまざまな表情ある布がつくりだす空間を、視覚・触覚・嗅覚で体感していただき、人が心身ともに快適に暮らすための道具として、
テキスタイルが持つ可能性を提案していきたいと考えています。

                                                 
                           
                                           
2002年11月
個展「FILTRIUM:浄化する白い布」 あいさつ文より
於:ワコール銀座アートスペース
   
 
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