初めて買ったビートルズ
中学2年の頃、友達からビートルズのカセットを借りて次第にはまっていった私は、自分でもビートルズのアルバムがほしいと思うようになっていった。ステレオは持っていなかったのでカセットテープを探しに町へ出た。しかし、私の欲しかったアルバム(カセット)は4,980円。お小遣いの少なかった私に買える物ではなかった。
そんな私に、ある時、5,000円もの大金を手にするチャンスがやってきた。中学3年生の修学旅行だ。ばあちゃんから、5,000円の小遣いをもらい、真っ先に考えたのは、「この5,000円であれが買える」ということだった。その晩、私は寝れなかった。「明日から修学旅行だー。わくわく・・・」ではない。「この5,000円をどうしよう」と悩んだのだ。そして、決意した。3泊4日の修学旅行。この5,000円をすべて残して帰ってこようと!
こうして、私のケチケチ修学旅行は始まった。函館朝市でみんながイカソーメンを食べている時に、「んー、イカ、あんまり好きじゃなくてー」。
風呂上がりにみんなでロビーでジュースを飲んでいる時には、一人で部屋に戻り茶をすすっていた。
トラピスチヌ修道院のクッキー。両親に買っていこうか。ばあちゃんに買っていこうか・・・・。いや、ここは我慢だ。
函館元町。「めんどくさいから電車で行くべー」という友達に、「歩いた方が早いってえー。いろいろ見れるし、トレーニングにもなるしよー。どっちが早いか競走するか?」と一人で歩いた。
五稜郭で木刀を買って「部屋でチャンバラやるべ」という友達に、「じゃ、オレ、切られ役やるからよー。木刀はいらんわ。」
最後の日、お土産タイムというのがあった。お土産は荷物になるので、最後の日に買おうということで、そのためにスケジュールが組まれ、お土産店にバスが停まった。さあ、ここまでついに一銭も使わずに過ごしてきた私にとって、最後の難関だ。持ちきれないくらいのお土産を買いあさる友達や、並んでいるまんじゅう、キーホルダー、ペナント、クマの置物などを横目に、私はお土産を探すフリをして小1時間過ごした。そしてついに3泊4日、一銭も使わずに修学旅行を終え、無事旭川に着いたのだ。中学時代最大の想い出となる修学旅行。これが私の想い出だ。
休みだった翌日、財布を握りしめ、自転車で町へ向かい、レコード屋に入った。そして1本のカセットをレジに置き、あの5,000円札を出した。ついに使うときがきた。本当に本当に苦労して温存した5,000円。そして手に入れた最初の1本。家に帰ってから何度も何度も聴いた。
アルバムのことなど何も知らなかった私が、「赤いやつ」とよんでいたそのアルバムが、借りて聴いていただけの私のビートルズ人生を大きくかえることになった。
高校進学で小遣いが増え、大学でアルバイトを始め、そして就職。使えるお金が増えるにつれ、気がつけば400枚を越えるコレクションになっていた。
今、私は中学校教員という仕事をしており、何度も修学旅行というものに行っている。去年も行ってきた。函館の風景はあの頃と変わらない。イカソーメンを我慢した朝市。電車に乗らず、ひたすら歩いた元町・・・・。修学旅行に行くたびに、あの時の、ちょっと切ない思いがよみがえる。
修道院でクッキーが目に入った。そういえば、あの時、小遣いをくれたばあちゃんに、お土産の一つも買わなかったっけ・・・。買って帰って、墓に供えよう。
ばあちゃん、今頃、お土産、ごめん。
そして・・・・・ありがとう。あの5,000円。ホントに、「 大事に 」 使わせてもらったよ。
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