イマジンの館

 
 約20年前。大学時代にビートルズのファンクラブが主催するビートルズ旅行団というものに参加しました。ロンドン・リバプール8日間の旅。自分の人生の中でも一番いい想い出として残っている夢のような8日間でした。

 中でも一番の想い出は、一人でアスコットのジョンの家に行ったこと。ティッテンハースパークとよばれる広大の敷地の中の白亜の館。あのアメリカ編集盤・ヘイジュードのジャケット(ドアの前に立っている写真)を撮影した最後のフォトセッションが行われたり、有名なところではイマジンがレコーディングされた、あの白い屋敷です。

 その日は旅行団の日程の中では自由行動の時間。みんなはビートルズとは関係のないロンドン市内観光に出かけていったが、私は一人、あの屋敷のあるアスコットに行こうと決めていました。屋敷の場所はわからないが、写真は切り抜いて持ってきた。地元の人に聞けばわかるだろうと汽車に乗り、何時間くらいかかっただろうか、アスコット駅についた。
 さて、一体、どこにあるんだ、この屋敷。ということで、通行人に写真を見せて、「ドゥーユーノウ・ディス・ハウス? ジョンレノンズ・ハウス」。ところが、答えは「ノー」ばかり。とうとう知っている人は見つけられなかった。帰ろうかと思ったが、ここまで来たからにはなんとか探し出そうと、とりあえず、牧場の中にあるということは知っていたので、田舎道のほうへ向かって歩き出した。これが大正解だった。

 何時間くらい歩いただろうか。途中で昼食もとったし、歩き出してかなりの時間がたっていたと思うが、突然、目の前に牧場らしい広大な芝生の土地が見えてきた。物置小屋があって、そこに白いペンキで落書きがしてある。「john」と書いてあるではないか。もしかして、この牧草地の中に・・。そう思った私は柵を乗り越え、牧草地の中を歩き出した。すると、はるかかなたに白い建物が見えてきた。間違いない。あれだ。興奮して走り出した。そして、ついに目の前にあの屋敷が現れた。庭にはサージェントのロゴをあしらった馬車みたいなものも置いてある。完全に不法侵入しているが、ここでビートルズは最後の写真を撮ったんだ、イマジンを作ったんだと、しばらく呆然としていたと思う。
 ふと我に返って、思い切って玄関側に回ってみた。クルマが3台止まっていた。1985年の話なので、ジョンがいるわけないのだが、当時はリンゴの持ち物になっていた。も、も、もしかして、リンゴがいるのか・・・??どうする?不法侵入だぞ、これは。黙って帰るか、それとも、このベルを鳴らしてみるか・・・・。

 鳴らしてみました。出てきたのは若いお兄さん。たぶん管理人か何かだろうと思う。「リンゴはいますか?」と聞いたら「今、アメリカに行ってる」という答えだった。その後、日本から来たとか写真を撮らせてください、とか何とか言ったけど、丁重にお断りされ、表の門までつれていかれ敷地からは放り出されてしまった。表の門は何と頑丈なこと。監視カメラまでついている。(当然か)。おそらく自分がこっちから回っていたら、入れなかっただろう。運良く、牧場の裏の方から入り込んだので、建物まで行けたのだ。

 30年近く前のできごとですが、今までの自分の人生の中で最高の想い出です。

 また行きたいなー。