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今こそ大阪ルネサンスを

課題は地域総合戦略の確立

平成10年2月定例府議会本会議より

大阪府の平成10年度当初予算案を審議する2月定例府議会で、酒井  豊府議は本会議で財政難に直面する府の財政健全化や行政改革、中小企業が抱える深刻な課題の解決など“明日の大阪づくり“の取組みについて質問しました。              

 酒井府議   今、大阪府民にとっては、厳しい経済情勢の中で、それぞれがどのように生活設計を立てていけばいいのか。どのように商いをしていけばいいのか、ということが最大の問題で、地域の行政体である大阪府が、この状況を一体どのように捉え、どんな対応をしてくれるのか、について大きな関心が持たれている。

  府の財政を単に健全化することだけが目的なら、今大阪に住み、働き、学ぶ人々や、大阪で活動している企業、団体が直面している深刻な課題を解決することにはならない。そのためにも、大阪が直面している課題の解決を目標とした財政再建、行政改革でなければならない。

    行政の目的

  「行政の目的は何か」ということであるが、今回の部局再編を含む行政改革推進計画案についても、財政再建プログラム試案でも、このような観点から見ると、大阪府という組織を維持するためにはどうすればよいのか、ということから出発している。
  
地方行政は、元来、住民の繁栄、安全・健康及び福祉を保持し、都市基盤の整備・管理をする責任がある。大阪府という組織は、公共サービスを行う目的で設けられたものであり、行政は手段にすぎない。手段にすぎない組織が、自己防衛に汲々として、本来の目的をおろそかにするということは断じてあってはならない。

    経済政策とは何か

  地方行政は、人間のあらゆる活動に対応して福祉や教育、保健、環境保護、文化振興など多くの役割を果たしているが、これらの営みのすべての根幹をなすものが、実は経済なのである。
  
産業の活性化が税源の涵養という意味で、府の財政再建に大きな意味をもつことや、苦境にある中小企業の支援など、いずれも大切な問題であり、その通りだと思う。否もっとしっかりやってもらわなければと思う。しかし、これをもって大阪経済全体についての本質に迫るものであるかという点では、今一つ釈然としないものがある。即ち、これらの施策は経済政策の一部であっても、経済政策の全体をなすものではない、ということを明確に認識しておかなければならない。個別企業や産業団体を相手にすることだけが経済政策ではないので、空港等の都市基盤の建設や教育による人材育成なども含めた包括的な問題が含まれているということを十分承知しておかなければならない。地域を根本のところで支える経済に対し、行政が総合的に取り組む、これが経済政策の根幹なのである。

   産業立地

  知事は産業立地拠点についていくつかの新しい方向を示したが、大阪府域全体の産業立地、言い換えると大阪の土地生産性をどうするかという視点から問題点を指摘したい。
 
現在、府内で従業員30人以上の製造事業所が使っている敷地は、約5千ha。府域面積で割ると37分の1以下である。そこでの付加価値生産額は約6兆円。それを1ha当たりで割ると約12億円の付加価値を生産している。これを電機機械産業並みの1ha当たり約26.5億円まで引き上げることができれば、府内総生産を18%以上、金額で実に約7兆2500億円引き上げることができる。こうした意味で、現在の府域産業用地の高付加価値化を進めることが極めて重要な課題である。
 
さらに注目すべきは、臨海部の広大な低未利用地で、重化学工場団地として造成されたが、事業所が撤退し、その土地生産性は極めて低いものになっている。ベイエリアの開発計画は策定されたが、その実施にあたっては、この面からの視点が欠くことのできない課題である。
 
大事なことは府域産業用地の高付加価値化を総合的に考える戦略、仕組みを立てることである。

   地域総合戦略と行財政改革

  経済政策上の最重点課題に対応するため、府の地域総合戦略、行財政改革をいかに確立するかということが、今まさに問われている。経済政策の推進は、府行政の要で、商工対策や中小企業対策は商工部でというような次元の時代ではない。府トータルに経済政策の本質を捉え、府機能を最大限に発揮できるような仕組みを、この度の改革の中に明確に位置づけることが強く要請されていたのである。
 
本来、行政改革は今後の政策のあるべき姿を見定め、戦略を立て、これを実施するための最善の方策を整えるというものでなければならない。
 
財政再建プログラムについても同様で、単に府財政の収支を償わせるための計画ではなく、府民の生活と将来の大阪発展を支えるに足る財政基盤を、しっかり担保する計画であって、初めて財政再建プログラムといえる。

   知事とは

  知事は単なる行政組織の長であるだけでなく、地域全体の責任者である。以上申し上げてきたことについて、地域責任者、知事としてどのように考えているのかお聞かせ願いたい。

   大阪ルネサンス

  大阪が21世紀を目前に控え地域規模の激しい競争の中で真の豊かさを獲得していくことができるか、没落の道を歩むのか、時代の大きな転換期に直面している。
  私どもは、今まさに大阪のルネサンスを実現できるかどうかという瀬戸際に立っている。大阪の持てる力を十二分に発揮して、明日の大阪づくりに取り組まなければならない。

総合的戦略体制を整備し 新たな府政の確立めざす  〜知事答弁〜   

横山知事 府政運営の根幹にかかわる貴重な質問をいただき、私の思いを卒直に申し上げます。
  これまでの答弁は、どこかで一番大事なものが欠落しているではないか、という指摘ですが、府政はこれまで内包していた諸問題が一気に噴出し、個々の課題への対応に多くの時間と労力を費やしているのも事実で、府政全般を総括する知事としては、問題の本質と社会全体の流れを見据え、政策の展開を図らなければならないと肝に銘じている。
 府政運営方針で申し上げましたように、大阪が持つ力を十二分に発揮できるよう府民や企業、団体がどのような役割、機能を担うべきか、その中で府行政としてどのような役割を果たせばよいか、新たな関係を構築していかなければならないと存じている。
 都市の活力をうみ出し、府民生活向上を図るため、大阪の都市としての発展シナリオを猫き、社会全体の活動を支え促進する、ハード・ソフト両面にわたる基盤や仕掛け、いわばインフラをきちんと整えていくことが、府政としての基本的な役割と考えている。そのためにも、府財政の破綻は何としても避けたい。その建て直しを図るとともに、府政の総合的な調整や戦略づくりを行う体制を整備し、社会経済環境の変化に対応しうる新たな府政の確立をめざす。
 大阪経済の活性化を府政の重要課題としてとらえ、総合的な取り組みを進めていく。府の経済政策は、商工行政の範畴にとどまるものではなく、今後とも大阪湾ベイエリアなど限られた土地の有効活用や関西国際空港二期事業をはじめとする交流の基盤づくりに力を注ぐなど、府内の土地が持つ価値を高めていくため、府政の総合力をフルに発揮していきたい。
 “今こそ、大阪ルネサンスを”という力強い提言をいただいた。大阪の個性、大阪の持ち味を忘れず、それを十二分に発揮する都市戦略を打ち立て、実行していくことが、現在の厳しい社会経済情勢を打ち破り、将来の明るい希望につながるのだと、私自身、確信しているところである。関西全体を視野に入れた取り組みをすすめていきたい。
 21世紀の大阪の明るい将来に向けた布石となるよう今後の府政運営に果敢に取り組む決意である。

原点に返って問題の処理を  〜酒井府議 再質問〜

酒井府議 今、知事から答弁いただきました。こういう質問をするとこういう答えが返るだろうと、こんな思いで間かしていただいた。問題は、本当にそのことが今の大阪府の体制の中でできているだろうか、言葉でなく、実際に今の体制の中で問題処理ができるか、ここにあるわけです。
 例えば、行政改革の計画案の中で、どれほどの取り組みがあったのか、それぞれの部門がそれぞれでやっている。もっと総合的にそのことを基本的に議論する場が必要じゃないか。残念ながら、そうなっていないのが現状じゃないかと思う。
 今回の改革案、推進計画等では、商工部と労働部の扱いについて、大阪経済の活性化として試みたと言っている。しかしこれも実際には、労働部の中身は全部国にいってしまう。それで商工行政と労働行政の一体化を図るんだと、こういっている。そんな問題ではない。そこら辺も基本的に認識が欠けているんじゃないかと思う。改めてこれは知事だけでなく、職員の皆さんも含めて、原点に立ち返って議論願いたい。