もう1度、ブラックコーヒー。





お、あんたかい。
俺に話を聞きたいってのは。
何が起きても驚きもしないご時世だが、
とんだ物好きもいたもんだ。

まあ、入りなよ。
何か飲むかい?

…と言っても、
ここにはビールとミネラルウォーターしかないんだが。

……ああ、これかい?

これはセレインちゃん用の特別なヤツだ。
悪いが、あんたにはやれねえな。
セレインちゃんは未成年だし、
酒やタバコは大嫌いなんだとさ。
だから、
たまにセレインちゃんが来た時にだけ、
淹れてやるんだ…このコーヒー。

……で、何から話せばいいのかね?


軍人になった理由?そうだな…。
あまり前向きな理由じゃないんだがな。

まあ、ぶっちゃけて言うと、
早く家を出たかったんだよ。

色々あったんでな。


……ま、その辺のことはいいじゃねえか。


そして、あんたも知ってると思うが、
士官学校時代に、ヨウコと出会ったんだ。

あれは、いい女だったな。
……今でもマジでそう思うぜ。
ヨウコは俺にとって、初めての女だったからな。


……気持ち的に、だが。


今みたいに、気持ちに余裕なんてなかったし、
一刻も早く抱いてしまいたかったんだな。

でもあの時の、
ヨウコを好きだって気持ちは、
自分で言うのもなんだが、本物だったと思うぜ。

あれ以来、しばらくは
誰かと本気で付き合うことを
避けてたよな。


……気持ち的に、だが。


そして、のらりくらりと
なんとなく過ごしてきて、
適当に昇進もしたりしてな。

まあ、同期のヤツらよりは遅い昇進だったがな。
俺がなかなか昇進できないのは、
性格に問題があるんだとよ。

フン、
性格なんてもんは、そう簡単にゃ直らねえしな。
俺は全然かまわなかったがね。

任務だって、ソツなくこなしてたしな。
…いやむしろ、そこいらの連中よりは、
よっぽど確実だったと思うぜ。

そんな俺が唯一、失敗したと言えるのが、
レジスタンスに奪われた
連邦の試作機奪取の任務、
そして出会ったのが、
レジスタンスの女、セレインだった。

や、あの時は本当にいい女だと思ったぜ。

……ただ単に、
ストレートの黒髪の女が好み、と言われちまえば
それまでなんだが。

あの時は、まだお互い敵同士だったし、
俺もまさか、あんなに何度も出会って、
何度も撃墜されることになるとは(笑)
正直思ってなかったしな。

しかし、それからは失敗続きで、
そろそろ俺の立場もヤバくなってきたかな、と思った時、
手を差し伸べてくれたのは誰あろう、
敵であるはずのセレインだった。

……こんな風に言うと、
『手なんぞ差し伸べていない!この馬鹿!』
とか言われそうだがな。

俺にとってセレインは、
本当に、俺を救ってくれた女神のような存在なんだ。

……いや、こりゃあマジだぜ。

だから、どんなにセレインが俺の事を煙たがろうと、
俺は、ずーっとあの女のそばに居続けるつもりだ。

俺は、
俺の命が尽きるまで、セレインを守ってやる、と
今まで思ってきた。

だが最近では、
それは少し違う、と考えるようになってきた。


命が尽きるまで、ではなく……


セレインを守るために、俺は、生き続ける、
生き抜いてやる、ってな…。



もういいだろ?
……仕方ねえ。
とっておきだが、一杯だけ淹れてやるぜ。

ブラックでよければ、な。




(あとがき)
リッシュのモノローグ、インタビュー形式にしてみました。
どこまで本気なのか、なかなか本音の部分が見えない彼ですが、
本音を吐露していると思いたいですね。(特に後半部分)

まだまだなぞの多いヤツですが、
(なぜ早く家を出たかったのか、理由はお茶を濁してますし)
彼の過去をもっと掘り下げていければいいな、と思います。

ちなみにタイトルは、またまた昔のヒット(…したのか?)曲。
わかる方、いるかしら…?


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