あ はぴい ばあすでい 〜version R&S〜



〜serein side〜

誕生日など、私にとっては意味の無いものだと思っていた。



…それでも幼い頃は、父と母がささやかながら祝ってくれていた。
小さなケーキに蝋燭を灯し、プレゼントも用意してくれて、
笑顔で、ひとときを過ごしていた。

それなりに嬉しかった、と思う。


コロニーが占領され、母を亡くし、父を亡くし、レジスタンスに関わるようになってからは、
自分の生まれた日など、何の意味も持たない、
戦いの中の日常の、ほんの一時に過ぎない。
戦うだけ戦って、いつ死んでもおかしくない、

…誕生日など、ただのお飾りに過ぎない。





そう…思っていた。




どうやって調べたのか、あの男が私の誕生日だからと言って、
小さな包みを差し出した。

「…どういうつもりだ」
私は言う。

「どうもこうも、今日はお前の誕生日だっていうじゃねえか。
惚れた女の大事な日だ。祝うのは当然のことだと思うがな?」
奴は言う。

「大事、だと…!?
では聞くが、貴様、何を根拠に誕生日が大事だと言い切れる…?」
「…プッ……ククク…ク…。さすがだぜ、セレインちゃん。
お前の事だ、そうくるんじゃねえかと薄々わかってはいたが、
誕生日でさえ、そういう風に否定的に捉えてるとはな」


…まただ。

ヤツは私に一歩近付き、まるで子供に教え、諭す様に、
尚且つ真剣な表情で、私を見る。


「本当に根拠なんて必要か…?
お前も俺も、こうしてこの世に生を受けなければ、出会うこともなかったんだぜ?
この世に生まれて、こうして生きているだけで、すげえことだと俺は思うがな」
「…ふん、相変わらず気楽な奴だな。こうして生きているからこそ、辛い目に遭う。
本当に、生まれてきた意味なんてあるのか…?」
「俺の好きな女が生まれた日だ。
無神論者だが、これだけは神に感謝しても、し足りないくらいだぜ」
「……」
「生まれてきた意味、か。
それは…こうして俺と出会ったことそのもの、ってことじゃダメか…?」
「…っ、貴様と出会ったこと、か。
貴様と出会ってからというもの、ろくなことが無い。
出来ればこんな腐れ縁、終いにしたい位だ」
「それが運命ってヤツだ。はっきり言うが、
俺以上に、お前の事をこんなに理解できる人間は、そうはいないと思うがな」
「貴様…!貴様が一体、私の何を理解しているというのだ!?」
「さあて、ね。クククク…」




…………全く。

相変わらず、掴み所の無いヤツだ。
たまには違う事が言えないのか。



しかし……

誕生日…か。

そう、悪くはない。


この小さな包みを見ていると、そんな気がしてきたよ。



物は考えようだな、なあ、レラ……。







〜rish side〜

誕生日なんて、俺にとっては何の意味も持たない。
そう思って今まで生きてきた。



が…。



それが、大事な意味を持つものだと思い出させてくれたのは、
他の誰でもない、お前なんだぜ、セレイン。
お前は気付いていないんだろうがな。
俺も、お前に随分と助けられているんだぜ。
俺達の居る場所…この修羅場で、こうして誕生日の祝いをしていること自体、
お前と出会うまでは想像もつかなかったからな。


こんなに愛しいお前が生まれた日…これを祝わずに、何を祝うというのか。





…なんてな。

こんな細けえ事は、お前には言わないぜ。
絶対に、な。



お前に伝える言葉は、ただひとつ…。

セレイン…。






……愛している。





(あとがき)
…あーもう、何かすみませんでしたっっ!
最近某ネオロマゲームをやっているせいか、リッシュが妙〜〜に甘々ですな。
それはそれで、かなり嬉しい展開なのですが(笑)。

まあ、それはそれとして。
今回の「あ はぴい ばあすでい」は、
対になったふたつのエピソードが集まって1つのお話、というつもりで
書いてみました。
是非アクラミヴァージョンと読み比べていただきたいです。

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