源泉の宿・宿泊記

蔦温泉/蔦温泉旅館(★★★★☆)
湯船の底からの自噴泉
(蔦温泉旅館池を挟んた正面から) (玄関上部に掲げられた年季モノの看板) (蔦温泉旅館の玄関口)

蔦温泉旅館は十和田湖畔から奥入瀬を抜け、ブナの原生林の奥に佇む一軒宿です。宿の前はロータリー風の車のアプローチがあって、その中に噴水付きの池があり、わきにはおみやげ物屋さんなどもあって拓けているように見えますが、実は周辺は十和田樹海と呼ばれるブナの原生林に囲まれていて、裏手には蔦沼、鏡沼、長沼などの蔦七沼が点在しています。

●料 金 1泊2食 10,000円〜
●所在地 青森県上北郡十和田湖町大字奥瀬字蔦野湯
●電 話 0176-74-2311
●交 通 東北自動車道青森ICから国道103号線を八甲田山方面へ約45k
●食 事 夕食/和食(部屋食)、朝食/和食(新館1階のお食事処)
●風 呂 内湯のみ(「久安の湯」(男性用だが女性専用時間あり)、「泉響の湯」(男女別各1))
●施 設 全50室
●イン/アウト イン14:00/アウト10:00
●宿泊日 2003.10.30-11.1

■温泉 蔦温泉では源泉の上に床板を敷いて湯船を設けています。露天はなく、男女別の内湯があるのみ。男女交代制の「久安の湯」と男女別の「泉響の湯」です。「久安の湯」は古めで風情のある浴室です。壁も湯船も屋根も天井の梁もすべて総木造り。材質はブナかもしれません。湯船はだいたい5m×5mくらいでしょうか。お湯は無色透明で、湯船の縁から絶えず掛け流っています。温泉は湯船の底から直に湧いていて、よく見ると底の板の隙間からときおりボコ、ボコと泡が立ち上ってくるのが見えます。湯船の端からお湯がチョロチョロ注がれているように見えますが、それは温度調整用の冷水(湧き水)です。湯船からかなりお湯が掛け流っているように見えるので、湯船の底からの湧出量が結構あるのかもしれません。透明ながらなかなか良いお湯でした。温度もちょうどよく、湯の流れる音を聞きながら、いつのまにか頭はボケーっと腑抜け状態になってしまいそう。しかし、こんなときが温泉の至福のひと時といってもいいのかも。(「久安の湯」は男性専用時間が午前9時〜午後11時30分。女性専用時間が午前0時〜翌朝8時まで。)もうひとつの内湯「泉響の湯」は男湯と女湯があります。こちらはまだ新しく平成8年にリニューアルしたようです。湯気抜きのため、最高部が12mの高い天井を持った湯殿です。窓が高いところにあるため、採光がそれほどなく、昼間でも浴場内は暗めになっています。しかしこれが瞑想しているようでなかなかいい雰囲気を醸し出しています。湯船は「久安の湯」と同じように5m×5m程度の大きさです。「泉響の湯」ももちろん湯船の底から温泉が自噴しています。お湯は静かにかつ確実に縁から溢れ出しています。湯温は気のせいか、「久安の湯」より少し熱めに感じました。個人的にはこの「泉響の湯」より「久安の湯」の方が湯温が熱すぎなかったせいか落ち着けたような気がします。まあこれは好みの別れるところでしょうけど。
(内湯へ続く本館の廊下) (久安の湯) (泉響の湯)
■部屋 今回泊まったのは本館2階の21号室。角部屋ですが窓は一方向のみ。BT、洗面はなし。和室8畳ですがプラス2畳分の床の間、2.5畳分程度の広縁が付いているため広く感じました。床の間には床板、床柱をはじめ飾り棚、ふすま戸のついた戸棚などあらゆる部分に天然の木が使われていました。木の節目のようなものが浮き出たちょっと高価そうな手のかかった造り。また、床の間と広縁の境に用いられる飾り戸もなかなか手の込んだ造りでいい感じでした。部屋の戸はふすまで鍵もなく、貴重品をしまう金庫もありません。(本館は宿泊客も少なく静かで、あまり気にする必要もありませんでしたけど)また廊下を歩くとギシギシときしみ、向かいの部屋の人の声やテレビの音が丸聞こえだったりもします。とはいえ、これらはマイナス面というよりも、こうした建物の古さが逆に趣きとして心地良く感じられるような…そんな部屋でした。この部屋で平日10,000円〜はかなりお手頃だと思います。建物が古いだけに、特に女性でトイレの状態を心配する人もいると思いますが、なかなか凝った造りと小奇麗さがあって安心して利用できるトイレでした。(トイレは本館1階、男女共用)トイレへ続く渡り廊下の途中に外壁がなく外気が入り込んでくるので、10月末としては多少寒く感じましたが、個室に区切られたトイレの中にも部屋と同様に木が惜しみなく使われており、好感のもてる造りとなってました。以上は全て本館のことを書いています。新館のことはよくわかりません。探索にいってもよかったんですけど、ちょっと今回はそこまでしませんでした。たぶん新館の方が洗練された新しい感じがして、若い女性の受けはいいんでしょうけど。でもここに来たら個人的にはやはり本館に泊まったほうがいいと思います。この宿の雰囲気を直に肌で味わうためにも。
(本館2階21号室) (床の間側の様子) (本館2階の廊下)
■料理 夕食は部屋食でした。大きなお膳に乗せて運ばれてきたものと1人前の鍋もの、そして御飯です。お膳に乗せて運ばれてきたメニューは、さしみ(ニジマス、ホタテ、イカ)、きのこの和え物、野菜の煮物、山菜の酢味噌和え、山菜の3種盛り(姫タケ、ふき、高菜)、天ぷら(カニの足、白魚、さつまいも、ししとう)、香の物、ホヤ?の塩辛、果物(柿、りんご)です。本館の料理は新館とは違うということで、多少心配していましたが、いえいえ期待以上。決して豪華な料理ではありませんが、山菜や川魚を中心とした素朴な田舎料理といった感じで良かったです。量的にも程よくどれも美味しくいただけました。次に朝食です。朝食は新館1階のレストランのテーブル席で頂きます。メニューは、しゃけ、すじこ、ふきの煮付け、温泉卵、長芋のとろろ、香の物、味噌汁、御飯、ヤクルトといったもの。このレストランは外来客向けにもオープンしていて従業員の対応はきめ細やかに感じられました。御飯やお茶がなくなったお客さんに、すぐにおかわりをいれて回ってくれていました。
(夕食) (朝食)
■接客 全般的に見ると従業員の接客は過度なサービスもなく必要最低限といったところ。まあ歴史があるとはいえ田舎の旅館なので、きめ細やかなサービスを期待しない方が良いと思います。でも本館の部屋係の仲居さんは、ちょうどしゃべる機会があったせいか、愛想がよく感じの良い女性でした。他の人たちも喋れば意外と気さくで愛想が良いのかもしれません。別に不満に思うようなことはありませんでした。
■その他 チェックイン開始の2時にちょうどチェックインできました。その頃はまだ日帰り入浴客が多く、玄関は入浴に来る人、帰る人、そして早めにチェックインした人で比較的にぎわっていました。帳場と従業員の休憩室?でしょうか。宿の正面玄関を入って左右の部屋がガラス張りになっていて、中の様子が見えるのが、今まで泊まった旅館にはなく、面白かったです。
(玄関側から見たガラス張りの帳場) (玄関側から見た本館の階段)
(宿のオフィシャルHPはこちらから)

■源泉チェック■
無色透明
泉質 単純泉
源泉温度 44度
湧出量 ?リットル/分
PH 7.24
湧出状態 自然湧出
飲泉