■温泉 |
源泉は自炊棟や旅館部を挟んで上と下にそれぞれひとつずつあります。下の源泉には湯畑があり、白い硫黄成分が湯畑一面に沈殿していて、そのなかからブクブクと源泉が自然湧出している様子を垣間見ることができます。この湯畑は「賽(さい)の河原」と呼ばれています。周囲には立入禁止の看板がしっかりとりつけられていますが、これほど間近で温泉が地面から湧き出ている様子を見られるというのも珍しいと思いました。下の源泉からは男女別の内湯と女性専用露天風呂のある温泉棟へ、上の源泉からは混浴の温泉棟へと、いくつもの木の樋を渡して湯船へダイレクトに温泉が注がれているようでした。各種温泉本や旅雑誌では、黒湯温泉というと混浴の露天や打たせ湯がクローズアップされているように思えるのですが、大浴場の内湯も総木造りで、なかなかのものでした。湯船の大きさとしては黒湯温泉の中では一番広く、木製の窓から山の自然を眺めながら入るのも格別です。また女性用大浴場にのみ露天が付いています。内湯よりやや小さめですが、広々とゆったりした湯船だそうです。周りを木の塀で囲っていますが、特に閉鎖感もなく、正面のみ山の自然が眺められるように窓のような開口が設けられているとのこと。女性の場合、混浴の露天には入りにくいので(脱衣所が共同)、大浴場併設の露天の方が自然を楽しみながらゆったりお湯にひたれるのではないでしょうか。また、旅館部の1階に宿泊者のみが入れる内湯があります。別棟の大浴場と比べるとかなり小さめでこじんまりとしていますが、窓からは山の自然を眺め、川のせせらぎの音を耳にしながら湯浴みができます。脱衣場には畳が敷いてあり、素足に心地良いです。ここ(旅館部1階の内湯)は、日帰りの入浴者が来ないので、落ち着いて入浴できると思います。もちろん混浴の露天や打たせ湯もなかなかのもので、自然の木々で組んだ柱、杉皮で葺いた屋根、ほんのり灯る裸電球を眺めながらの湯浴みは、頭の中から余計なものを一切忘れさせてくれるようでした。 |
|
 |
 |
 |
(「賽の河原」と呼ばれる湯畑) |
(別棟にある男性用大浴場) |
(女性用大浴場に併設の露天風呂) |
 |
 |
 |
(旅館部1階の男性用内湯) |
(混浴の露天風呂) |
(泊まった部屋・旅館部29号室) |
|
■部屋 |
今回泊まったのは旅館部の29号室でした。スリッパを脱ぐ板の間部を含めて8畳ほどの正方形の部屋。照明は裸電球がひとつのみ。テレビはもちろんBTなしのシンプルな部屋ですが、角部屋で窓が2つあったせいか、8畳のみの割には部屋の狭さや圧迫感のようなものは全く感じられず、気持ちよく過ごせました。一つの窓からは源泉の湧き出している「賽の河原」も見下ろせ、とても満足のいく部屋でした。 |
|
|
■料理 |
まずは夕食から。メニューは山や川の幸が中心の素朴な手料理といった感じの和食ですが、1品のみ洋風にアレンジした一皿がありました。具体的には、山菜二皿(ふき、わらびなど)、酢の物、イカの塩辛、イワナの塩焼き、茶碗蒸、鍋もの(うどん付き)、鳥の唐揚げを洋風にアレンジしてナスを添えた一皿、そして漬物、御飯、ピリ辛さつま揚げとネギのお吸い物です。山奥の秘湯の宿なのであまり期待はしていませんでしたが、思った以上に品数も多く、見た目にも、そして量的にも満足のいく食事でした。ビールもすすみ、美味しく頂くことができました。朝食の方は、山菜三皿、温泉卵、海苔、塩じゃけ、豆の煮付け、漬物(いぶりがっこと梅干し)、きのこの味噌汁。山菜中心でこちらも量的にも満足いくもので、美味しく頂くことができました。 |
|
 |
 |
(夕食) |
(朝食) |
|
■接客 |
宿泊の受付は事務所棟の1階で行います。紙に代表者の名前などを記入すると、別棟の旅館部の部屋まで案内してくれます。秘湯らしい必要最低限の素朴な応対です。そんな中、部屋に案内してくれる際、また食堂に行った際に言われた「いらっしゃいませ」の言葉が妙に印象に残りました。 |
■その他 |
(Ima-mat追記):8月末に泊まったのですが、夜になると蛾が多くて困りました。トイレや浴室などの窓が少しでも開いていると、蛾がたくさん入ってきて、灯りの周りで飛び回り、入るのに勇気が要ります。別棟にある大浴場の入り口の扉付近にも蛾が数え切れないほどびっしりと止まっており、扉を開けるとその何匹かが、一緒に浴場に入ってきてしまうのです(泣)。女性で(男性でも)虫嫌いの方は要注意です。 |