源泉の宿・宿泊記

黒川温泉/新明館(★★★☆☆)
黒川温泉の礎(いしずえ)を築いた名(?)宿


黒川温泉はひと昔前までは閑古鳥が鳴く温泉街だったようです。しかし、20数件の宿の経営者たちが力を合わせ、多くの温泉地がこれまで失ってきた田舎の原風景、そしておばあちゃんの家に戻ってきたような「癒し」を取り戻す作業を温泉街が一丸となって地道に積み重ねた結果、今や若い女性客もたくさん訪れる大人気の温泉地へと変貌を遂げました。その作業の中心的存在が後藤哲也氏。この後藤氏が館主を努め、また黒川温泉人気の礎となった宿「新明館」に宿泊しました。

●料 金 1泊2食(サ込み・税別) 15,000円。 食事処で囲炉裏料理の場合は15,500円(事前要予約)。
●所在地 熊本県阿蘇郡南小国町黒川温泉
●電 話 0967-44-0916
●交 通 熊本空港−県道36号−国道443号−国道57号−やまなみハイウェイ−瀬の本高原−国道442号−黒川温泉
●食 事 (夕食)部屋または食事処 18:00〜20:00/(朝食)1階大広間 8:00〜9:00
●風 呂 内風呂・男女各1、露天風呂・混浴1、女1、洞窟風呂・混浴1、女1、家族風呂1
●施 設 和室14室
●イン/アウト イン15:00/アウト10:00
●宿泊日 2004.12.25-26

■温泉 新明館のお風呂の構成は次のとおりです。
@ 岩戸風呂(混浴露天風呂)
A 穴風呂(混浴?)
B 洞窟風呂(女性専用洞窟風呂)
C 内風呂(男女別内湯)
D 家族湯(宿泊者専用)
E 風の湯(宿泊者専用・女性専用)
入浴可能時間は@〜Bは午後10:30から清掃で、翌朝6:30から新しいお湯で利用できます。C〜Eは常時入浴可ですが、翌朝午前9:30より清掃が入ります。照明の明かり加減のせいか、いずれの湯船も夜の方がグーっと雰囲気が良くなるようです。(日中は立ち寄り客が多くザワザワして落ち着きません)


@ 岩戸風呂(混浴露天風呂)
混浴ですが、正直女性は入りづらいかも。そもそも脱衣場が分かれているわけでもないし、日中は立ち寄り客も多く、男性は穴風呂との間を裸のまま行き来していたりもしますし‥女性に入りづらいエリアになっていると思いました。岩造りの露天で宿の前を流れる川(筑後川)を見やるロケーションです。露天は洞窟風呂、穴風呂を含めいずれも木製のスノコの上で脱衣しますが、昼間はなにぶん立ち寄り客が多いので、スノコが最初から濡れた状態になってしまっていて、着替えるとき正直気持ちがいいものではありませんでした。


A 穴風呂(混浴?)
これも混浴と謳っていますが、脱衣場はひとつしかなく実際女性が入るのは無理かも。中は湯気でモワモワで最初はよく見えないのですが、慣れてくると少しは見えるようになってきます。洞窟内だとお湯が淀んでいるような気がしていたのですが、奥に湯口があってそこからは常時新鮮なお湯が流しっぱなしになっていました。湯の華もかなり見受けられました。湯口の近くはお湯も熱いのでかなり身体も温まります。


B 洞窟風呂(女性専用洞窟風呂)
一見入り口が2つあり、複雑な構造に思えますが、中に入るとぐるっと一周できるようになっています。やはり奥に湯口があって、その付近は熱くなっています。この洞窟風呂を館主の後藤さんがたった一人で掘って作ったということですが、思ったほどの感動はありませんでした。他の露天などに比べると、かなり年期が入ってつまらない浴槽に思えます。しかしお湯的には一番新鮮な感じもしました。


C 内風呂(男女別内湯)
3m四方くらいの館内にある男女別の内湯です。お湯は比較的熱めなのが掛け流されています。洗い場も湯船と同じくらいの広さがあります。湯船は黒っぽいレンガ様のコンクリートブロック(?)で作られたもの。隣にある女性用内風呂とは黒い板塀で仕切られていました。


D 家族湯(宿泊者専用)
宿泊客専用の家族風呂ですが、夜9時までは予約制となっています。予約した時間になったらフロントで鍵を借りて行きます。夜9時以降は立ち寄り客もいなくなるので、宿泊客は空いていればいつでも入浴できます。岩を組み上げて塗り固めたような感じのほぼ円形(直径2〜2.5mくらいか)の岩風呂で、中は2人で入るならかなり余裕のある空間となっています。壁湯温泉/福元屋の家族風呂と似たような造りでしたが、雰囲気的には福元屋の方がずっと良かったです。


E 風の湯(宿泊者専用・女性専用)
宿泊者専用の女性用の露天です。階段を登って裏山の中ほどにあり、階下の混浴露天に比べ、立ち寄り客がいないため、静かな自然を楽しめ、落ち着ける環境になっています。ただ、脱衣小屋から湯舟まで少し距離があり、そこを裸足で歩くと足が汚れるのが気になりました。
源泉チェック
無色
泉質 ナトリウム−塩化物・硫酸塩温泉
源泉温度 74.5度
湧出量
PH 3.4
飲泉 不可
■部屋 2階の角部屋の「富士」の間でした。引き戸を開けるとスリッパを脱ぐスペース、そして6畳の和室に1畳半より広めの板の間スペース、そこに洗面台が付いています。トイレは共用です。部屋は黄土色の壁にこげ茶を基調とした色合いで落ち着けました。
■料理 夕食は事前の予約の際に、囲炉裏料理か和食懐石かを選んでおきます。和食懐石は部屋食となりますが、囲炉裏料理は渡り廊下を渡った別館の「庄屋」で頂きます。今回は囲炉裏料理を選びました。「庄屋」には囲炉裏の付いたテーブルが7つありました。テーブルには食前酒の山葡萄酒、とろろ、野菜スティックともろみ味噌、シイタケのワサビ漬け、馬刺し、カボスと漬物、そして焼く野菜や肉が並べられています。囲炉裏にはすでに炭が赤々と燃えていて、そのうえに鉄板(?)がかかっていて、すぐに焼けるようになっています。また、アマゴの串刺しが炉に刺さっています。後で、生野菜、ご飯、お吸い物、そして最後に果物で締めくくります。囲炉裏で焼く料理は楽しくお酒も進み美味しかったです。
(別館の「庄屋」の入り口) (野菜スティックと、もろみ味噌ほか)
(馬刺し) (野菜類)
(お肉) (囲炉裏の鉄板で焼いてます)
(和風サラダ) (ご飯と汁物)
(漬物) (デザート)
朝食はゆっくりめで8:00から用意されます。1階の広間で頂きます。広間に行くとテーブルにはすでに大きな四角い盆の上に山菜の小皿、生野菜、温泉卵、海苔、焼鮭とタラコ、豆乳、漬物そして湯豆腐の鍋が並べられており、席に着くとご飯と味噌汁が運ばれてきます。量的にも充分で美味しかったです。
(朝食の膳) (湯豆腐)
■接客 帳場には何人かが入れ替わっていましたが、皆さんとても親切に応対してくれています。また部屋係の方、「庄屋」で囲炉裏料理の配膳をしてくれた方も、総じて、対応は良く、不快な思いをすることはまったくありませんでした。内風呂へと続く地下一階の廊下で、運良く厨房から出てきた後藤社長とすれ違いました。直接お話はできませんでしたが、頭を下げて「ありがとうございます」と言ってました。

総じて、この宿の評価は? 黒川温泉のリーダー的存在・後藤社長の宿ということで、期待感が大きすぎたせいもありますが、実際訪れてみた感想は、「う〜ん、これがあの新明館!?」という感じでした。(この宿写真写りは良いのですが)館内の雰囲気も、部屋からの眺望もはっきり言って今ひとつ。楽しみにしていた露天風呂も立ち寄り客の出入りがひっきりなしで騒々しく落ち着かなかったです。でも接客対応は良かったですよ。(お気に入り度=★★★☆☆)