温泉わんだらあ 源泉の宿・宿泊記
白骨温泉/小梨の湯 笹屋(★★★★★)
白樺林に囲まれた静かな宿
白骨温泉は温泉に含まれている石灰分が湯船の内側に白く結晶するところから、もとは「白船」と呼ばれていたそうですが、大正2年に中里介山の長編小説「大菩薩峠」の「白骨の巻」の中で「白骨」と呼ばれたことから一躍有名になり、小説に記された「白骨温泉」がそのまま一般通称となりました。平成16(2004)年7月、白濁を得るために一部の施設で入浴剤を投入していたことが判明。週刊ポストにより記事となり、白骨温泉は全国の温泉偽装表示問題の火付け役となってしまいました(参考:経過はこちら)。入浴剤の使用を自ら申し出た旅館は結果的に2つあったのですが、笹屋はそのうちのひとつでした。((日本秘湯を守る会・会員宿)>ニュースH17.8.9:白骨温泉の「笹屋」など24件、表示認定を許可−長野県の認定委
●料金 1泊2食 平休日・休前日とも15,900〜28,500円(税・サ込み)
●所在地 長野県南安曇郡安曇村白骨温泉 ●電話 TEL.0263-93-2132 ●交通 長野自動車道松本ICより国道158号線県道白骨温泉線約40キロ約60分 ●食事 仕切りの個室、囲炉裏の間 ●風呂 男女別内湯各1、貸切専用露天風呂1 ●施設 10室(うち特別室3室、離れ3室) ●イン/アウト イン15:00 / アウト10:00 ●宿泊日 2005.7.29-30 ●URL
■温泉 |
男女別内湯がひとつずつとと貸切露天風呂が1箇所あります。入浴時間は内湯が5:00〜24:00、貸切露天風呂が7:00〜22:00までとなっています。内湯は2m強×3.5m程度の湯船。男湯も女湯もほぼ同じ造りと考えてよいと思います。浴室の2面は外に面していて、大きな木製のガラス戸になっているので、内湯に浸かりながら外の白樺林が見えます。たぶんこの内湯から見える白樺林はちょうど宿の裏側にあたる部分にあるものだと思います。戸を開放してしまえば、ほとんど半露天のような感じになってしまいそうなそんな浴室です。お湯はうっすら青みのある乳白色。1年ほど前の入浴剤混入騒動では(最初に入浴剤使用を週刊ポストに暴露されたのは村営の公共露天風呂でしたが)、宿泊施設の中で入浴剤の使用を申し出た2つの旅館のうちのひとつがこの笹屋。ですが、これだけ濁っていれば、どうして入浴剤なんて入れる必要があったのかと疑問に思うくらいでした。薄っすら硫黄の匂いもする柔らかな極上のお湯です。浴槽は、もともと木製だったんでしょうか、木の湯船に白い漆喰を塗って固めたような感じでした。浴室の壁は一面木張り、天井も木の梁が剥き出しになっている総木造りでなかなか良い雰囲気を醸し出していました。湯の温度は42〜3度くらいでしょうか、けっしてぬるめではありませんが熱すぎてじっと浸かっていられないというほどでもありませんでした。加温はしているそうですが源泉100パーセントの掛け流しです。もちろん現在は入浴剤は一切入れていません。湯量は多くないながらも(毎分20リッター)、それに見合った湯船で掛け流しを実現させており、掛け流し度はドバドバ系ではなくジャバジャバ系といったところでしょうか。静かに新鮮な乳白色のお湯に浸っているのはとってもリラックス感があって気持ち良かったです。
次に貸切露天風呂についてです。離れに貸切専用の露天風呂が1箇所あります。特に予約が必要というわけでもなく空いていれば入れます。客室数も少ないので使用中の時は湯上り処(休憩スペース)で待っていても良いと思います。30分も待てばそのうち空くでしょう。露天までのアプローチは階段と廊下が割りと長くて最初行くときは期待感を募らせてくれました。少し長めの廊下の先に突然露天風呂が姿をあらわすといった感じ。それほど大きな湯船ではありませんが、白樺林に面して、こちらも内湯と同様いい感じ。大人2人では少し余裕あるくらいの広さです。露天風呂というと普通は浅めにしつらえられたものが多いように思うのですが、ここの露天風呂は浸かってみてびっくり。かなり深めに造られていました。浸かって中で座ると顎の先端のところまでお湯が来ますから。泉質はもちろん内湯と同じ。蛾が何匹か飛んで来てヒラヒラしていたのが難点でしたが、それ以外はかなり高評価の露天風呂でした。
|
■部屋 |
笹屋では、宿泊料金によって窓からの眺望や部屋の広さ、そして食事の内容も少しずつ違っています。今回は一番安い15,900円(税込み)の部屋に泊まりました。本館2階の「明月」という部屋で窓からは従業員用の施設や駐車場なども見え、笹屋の裏側が見えているという感じ。でも白樺林もその奥に見え、心配していたほど落胆するものではありませんでした。入口の引き戸を開くと、部屋の襖との間にカーペット敷きの小スペース、そして中には和室8畳が。和室8畳の窓側には板の間が2畳ほどあります。和室には床の間もあるため割と広く感じました。板の間には大理石調のカウンター付き洗面、あと洗面と反対側にトイレがあります。部屋は全般的に小奇麗でリラックスできる感じです。ただエアコンがなく冷房機器としては扇風機が1つあるのみ。夜、窓を網戸にして開けっぱなしにしていたところ、蛾など様々な虫が隙間から?入り込んできてしまい困りました。夏の夜は網戸があるとはいえ窓は開けない方が良いようです。それでも土地柄からして涼しい場所なんでしょうか、扇風機だけでも十分涼しかったです。(ちなみに笹屋であと4,000円ほど出すと、もう少し眺望の良い(本館の正面側の景色が見える)部屋となりますが、部屋の広さは全く同じ。ただ食事の品数が数品違うようでした。) |
■料理 |
(夕食):夕食は17:30からと18:00からとどちらかを希望選択できます。場所は囲炉裏の間でした。席につくと、食前酒、黒塗りの籠に盛られた前菜4種、山菜2皿、馬刺し、牛の冷しゃぶ、野沢菜と赤かぶの漬物がテーブルに準備されていました。(遠いところから来ていただいたお客様に)女将からということで、竹筒に入った地酒(冷酒)あるいはウーロン茶のサービスがありました。そして後から少しずつ暖かいものが運ばれてきます。岩魚のお吸い物、蕎麦がき、さやえんどうの味噌和え、岩魚の笹蒸し、山菜とトウモロコシの天ぷら、山葡萄の葉で包んだお寿司、そしてデザートのスイカで締めくくられました。どれも見た目、味ともに申し分ありませんでしたが、特に牛の冷しゃぶ、馬刺しが美味しかったです。食事の内容については、全て係りの人が配膳時に説明してくれます。他の宿泊客とはツイタテで仕切られていましたが、近くの人たちへの説明なども聞こえてくるので食事の内容の違いはすぐにわかりました。中には自分たちとは全く違ったお皿が何皿も運ばれてくるテーブルもありました。でも今回の食事内容でも十分お腹がいっぱいになりましたので、逆にこのくらいで良かったと思いました。
|
■接客 |
本来のチェックイン時間の30分前の14:30頃に駐車場に到着しましたが、宿から係りの方(若旦那か?)が車のところまで迎えに来てくれ、好感が持てました。なかに通されると、まずは個別に4つに仕切られた和室でお茶と蕎麦羊羹を頂きながら宿帳を記入します。その間に荷物を部屋の方に運んでくれたのには感心しました。従業員の方々は皆さん気持ちよく接して頂いて申し分ありませんでした。風呂上りに休憩できるスペースがあり、そこで、お茶(暖かいもの・冷たいもの両方あり)が自由に飲めるようになっているサービスもなかなか良かったです。でも早朝にお風呂に行った際には湯のみが全て使用済みで未使用の湯のみがひとつも用意されておらず、飲むことができませんでした。朝早かったから準備ができておらず仕方なかったのだろうと思いますが、たぶん同じ思いをしたお客さんもいたと思います。接客の面では唯一それだけがマイナスポイントといったところでした。
|
総じて、この宿の評価は? 笹屋は宿泊料金の安い部屋と高い部屋とで、かなりの料金差がありますが、一番安い15,900円の部屋でも接客、部屋、料理、温泉と全てにおいて高い満足度が得られ、評価は5つ星です。数ある15,000円台の宿のなかでも、かなり高レベルといっていいと思います。2004年7月の白骨温泉騒動では入浴剤の使用を申し出た2つの旅館のうちのひとつだったわけですが、現状では入浴剤添加なしの源泉100パーセント掛け流しの乳白色のお湯をしっかり堪能できる宿であることが確認できました。また再訪したいと思わせてくれる良い宿。(お気に入り度=★★★★★)