源泉の宿・宿泊記

壁湯温泉/福元屋(★★★☆☆)
秘湯ムード漂う川沿いの天然洞窟温泉


壁湯温泉は享保年間(1716-1736)に地元の猟師が、傷ついた鹿が温泉で傷を癒しているのを発見したことから始まったといわれていて、川を仕切った浴槽の形状から壁湯と呼ばれるようになったそうです。また仙女が入浴し身を清めたという伝説により「仙洞温泉」という別名もあるそうです。そんな幻想的なシチュエーションを楽しめるのが、旅館「福元屋」です。

●料 金 1泊2食 11000円〜(税別)
●所在地 大分県玖珠郡九重町大字町田壁湯
●電 話 (09737)8-8754
●交 通 大分自動車道玖珠ICから国道210、387号線経由で約10q
●食 事 夕食/地元産の野菜や山菜の創作料理、朝食/和食
●風 呂 混浴1、内湯:女1、貸切2
●施 設 和室8
●イン/アウト イン15:00/アウト10:00
●宿泊日 2004.12.24-25
●URL 福元屋のオフィシャルサイトはこちらから

■温泉 福元屋には、露天(壁湯)、隠り国(こもりく)の湯、あら玉の湯 とお風呂が全部で3つあります。
@ 露天(壁湯(壁湯天然洞窟温泉)):24時間入浴可
川(町田川)沿いにある混浴の露天風呂です。川を仕切ってつくったお風呂で、文字通り洞窟のような総岩風呂。壁も岩、湯船も岩、天井も巨岩が頭上に覆いかぶさるような形で広さは20畳ほど。この混浴とは別に女性専用(かなり狭め)の湯船も併設されています。源泉が底から自噴しているため、ときおり底からプクプクと泡が浮かんできます。温度はかなりぬるめですが、じっくり浸かるには良いかも。オーバーフローしたお湯は川に流れるようになっていますが、湯船にドバドバお湯が注がれているわけではなく、底からの自噴分だけなのに、(自噴の量がかなり多いせいか)掛け流っている量がかなりあるように見受けられました。無色透明のお湯ですが、じっとしていると肌に細かな気泡がつきます。冬に入浴する際は、1時間くらい入っていないと身体が温まらないようです。また女性の場合、脱衣小屋まで少し歩かなければならず、冬場は入浴前後が少し寒いです。
A 隠り国(こもりく)の湯(切石の湯):チェックイン後〜23:00まで、翌朝は6:00〜入浴可
本館内の内湯の家族風呂です。23時までなら、空いているときはいつでも入浴可です。入るときは表の札を入浴中にしておけばOKです。昔の蔵に使われていた石を使って浴槽にしたもので、湯船の大きさは2m×1.5mくらいでしょうか。竹筒から常時新鮮なお湯が注がれ、掛け流しの湯船となっています。薄暗めの湯殿は雰囲気もいい感じで、ほっと無心にさせられるようでした。ただ湯温は露天(壁湯)よりは熱めですが、それでもぬるめの部類に入るくらいの感じなので、かなり長湯しないと(特に冬場は)湯上りが寒いです。
B あら玉の湯(切出の湯):チェックイン後〜23:00まで、翌朝は6:00〜入浴可
屋外の湯小屋にある家族風呂です。このお風呂だけは鍵が帳場にあり、電話で空き状況を確認してから入るようになっています。館主自ら切り出した石を昔ながらのさんわで固めて浴槽にしたものです。切石の湯と同じくこちらも常時掛け流し。温度も同じくらいで露天(壁湯)よりは熱いもののぬるめのお湯でした。浴槽は幅3m強くらいのほぼ楕円形をしたもの。切石の湯よりも空間は広めに感じられました。
(壁湯天然洞窟温泉) (隠り国(こもりく)の湯(切石の湯)) (あら玉の湯(切出の湯))
福元屋のお風呂は24時間入浴可能なのは川沿いの露天(壁湯天然洞窟温泉)のみで、貸切内湯2つはいずれも23:00まで(翌朝は6:00から入浴可)です。そしてこの2つの貸切内湯は、入りたいと思うときは大抵いつも他のお客さんが入浴中なので順番を待たないと入浴できません。しかも露天(壁湯天然洞窟温泉)の方は湯温が40度以下と寒く、冬場だと気軽に何度も入りに行くこともできません。というわけで特に冬場は好きなときに好きなだけ入浴できないという点に正直不満が残りました。
源泉チェック
無色透明
泉質 単純泉
源泉温度 40度
湧出量
PH
飲泉 不可
■部屋

部屋は2階の「松」の間でした。玄関入って正面の帳場わきの急な階段をのぼってすぐの角部屋です。引き戸を開けるとスリッパを脱ぐほどの小スペースの板の間、そしてすぐに4畳半の和室+板の間1畳分ほどです。第一印象は狭いと感じましたが、民芸調の落ち着いた色合いの部屋で、慣れてくるとさほど狭さを感じなくなりました。(トイレと洗面は共用ですが、やはり落ち着いた感じ)部屋に通されると、お茶と手作りのお菓子(この日は柚子のはちみつ漬け)を出してくれ、部屋で宿帳を書きます。お茶も香ばしくて美味しかったです。ただ、夕食後(布団を敷いてくれた際)に部屋に戻ると急須と湯のみは新しくなっていましたが、ポットのお湯は足されておらず、夜中になってお湯が足りなくなりました。

(2階「松」) (窓際)
■料理 夕食は1階の食事処「仙洞」の間で、開始時間は18:00〜19:00の間の30分単位で選びます。広間にテーブルが6つあり(仕切りはありません)、なかにはひとつの大テーブルを2組で相席で食べているお客さんもいました。テーブルには馬刺し、野菜の煮物、小鉢、刺身こんにゃくなどの料理が並べられ、あとで山芋の茶碗蒸し、鮎の塩焼き、山菜の天ぷら、蕎麦がきのあんかけが暖かいうちに運ばれてきました。初めからテーブルに用意されていた牛のステーキも頃合を見計らって火をつけてくれます。特に山芋の茶碗蒸しは、初めて食べましたが、もちもち感があり、美味しかったです。そして、お櫃(おひつ)に入ったご飯と味噌汁、最後に果物が出ました。この旅館は元農家で、特に米はひとめぼれと伝承の香り米(壁湯福米)を一緒に作付けしたこだわりの自家製米と宿のパンフレットにも載せているだけあって、香りがあって今までに食べたことのない美味しさで、すでに他の料理でお腹いっぱいになっていましたが、しっかりおかわりをしてお櫃のご飯はすべて食べてしまいました。
朝食は夕食時と同じく「仙洞」に7:30から用意されています。テーブルにはシシャモ、切干大根、味付け海苔、生卵、うのはな、漬物、シイタケの和え物が並べられていて、席につくと、夕食同様、美味しいご飯をお櫃にいっぱいと味噌汁が運ばれてきました。また作りたての、くみ出し豆腐があとから出されました。
(朝食の膳) (くみ出し豆腐)
■接客 チェックイン時に帳場にいた女将らしき女性が部屋まで案内してくれました。女将はもともと少しおとなしめの方だったのでしょうか、(特に悪印象というわけではないのですが)必要最小限のことしかしゃべらないといった印象を受けました。これに対し、夕食時は、宿の主人をはじめ2人の女性スタッフが配膳をされていて、このときは心のこもった接客といった感じで好感が持てました。ご主人も夕食時には各テーブルに何気に声をかけてまわり、いろいろ話をされていました。

総じて、この宿の評価は 館内の雰囲気良し、料理良し、風呂の雰囲気も良いが、難点は部屋が狭いこと、窓からの眺望も良くないこと、そして何より好きな時間に自由に温泉に浸かれないことが一番のネック(特に冬場)。(お気に入り度=★★★☆☆)