源泉の宿・宿泊記

峩々温泉/峩々温泉旅館(★★★★★)
蔵王国定公園内にある鄙びすぎない秘湯の一軒宿


蔵王連峰の中腹、不動滝近くから蔵王エコーラインを北へ道をそれ、右へ左へと坂を下っていった谷間に峩々温泉はあります。峩々とは山が高く険しい様の意。宿の下の川を挟んだ向かい側にはたしかに「峩々」たる岩肌が垣間見えています。峩々温泉は湯平温泉(大分)、四万温泉(群馬)と並ぶ日本三大胃腸病の名湯と言われています。峩々温泉ではどの客にもゆったり過ごしてもらうために、宴会や団体客は一切受け付けていません。街の喧騒から、日々の仕事の忙しさから逃れてゆっくり心と身体を休めるにはぴったりの宿です。

●料金 1泊2食 14,000円〜
●所在地 宮城県柴田郡川崎町前川字峩々1
●電話 0224−87−2021
●交通 東北自動車白石ICから県道12号・蔵王エコーライン経由で約40分
●食事 夕食/和食(客室)、朝食/和食(客室)
●風呂 混浴露天1、男女別露天各1、男女別大浴場各1、家族風呂1
●施設 和23室(全T付)/食堂、売店
●イン/アウト イン15:00/アウト10:00
●宿泊日 2003.3.28-29

■温泉 宿は玄関、フロントのある東館(旧館)と西館(新館)が左右につながっています。西館(新館)は傾斜地に平屋を三段並べて建てられており、これを階段でつないだ形。西館(新館)の一番下段に建っているのが「下の棟」といい、ここに大浴場があります。「温泉館」とも呼んでいるようです。この「温泉館」には男女別内湯が一つずつと混浴露天風呂が一つあります。他に川沿いの露天風呂がもう一つあるのですが、今回は天候のせいもあったのか、お湯を入れていないとのことで利用できませんでした。ちなみに初日の天候は風がものすごく強く、ほんの少しの雪がそのせいで吹雪のように吹き荒れていました。たぶんあれほど風が吹いていなければ、ちらちら降っている程度だったのでしょうけど。この天候のせいで、混浴露天風呂は見るだけにして入るのはパスしました。見た感じは雑誌の写真で見ていたのよりかなり小さめ。ちょっとびっくりしました(もう少し広いものと思っていたので)。次に男女別の内湯についてです。施設全般についても言えることですが、ここは脱衣所も浴室もとても清潔感があります。洗い場は蛇口とシャワーがセットになったものが3つあります。リンスインジャンプー、ボディシャンプーもちゃんと備え付けられています。ここが宿メインのお風呂と言っていいでしょう。床、浴槽とも全て木造り(板張り)。床板は張られた板がそれぞれ1cmくらい隙間を空けて張られているので、湯船から洗い場に流れ出た(オーバーフローした)お湯は、その隙間から床下へ流れるようになっています。浴槽は縁、側面のみならず底までも全て木です。なんと1年に1度、内風呂の湯船と床板を張り替えるそうです。ここは「ぬる湯」(40〜42℃)と「あつ湯」(43〜46℃)の2つの浴槽があります。「ぬる湯」の方は、湯船に浸かると前面に山の岩肌が見え、まさしく峩々たる様子が眺められます。温度もちょうどよく長湯できます。これに対し、「あつ湯」の方は浴室の奥にあり、壁に囲まれているため、薄暗くなっているのですが、感じのいい電球の行灯が静かに四隅にともされています。そのまま湯船に浸かってもいいのですが、峩々流の入り方としては、木枕を置いて、床に横になり、竹筒で湯船からお湯をすくってお腹にかけるのだそうです。胃の悪い人は胃に、腸の悪い人は腸に、ゆっくり百回くらいかけるのが峩々流の「かけ湯」とのことです。お湯は無色透明でにおいもなく、口に含むとほんのうっすら塩味を感じる程度。でも自噴泉らしく、とてもやわらかな感触でした。また、ここの温泉は飲泉もできます。1階のフロント向かい側に談話室があり、中に飲泉所が設けられています。うろうろしてたら、宿のスタッフ(たぶん会田さんと思います)の方がやってきて、「飲泉は1年くらい続けて飲まないとだめですよ〜。一日二日飲むくらいじゃ、ただの水と同じようなもんです。」なんておっしゃってました。でも、それにしては壁には飲泉についての注意書きや東北大学医学部教授のありがたい(?)お墨付きの効能書きが額縁に入って飾られたりしてましたけど。

■部屋 部屋は新館・中の棟の辛夷(こぶし)の間でした。6畳に広縁が2畳分程度、トイレ・洗面付きの部屋。ちょっと狭く感じないこともなかったのですが、時間が経つうちに慣れてしまいました。部屋もとても清潔です。窓の外には険しい山の岩肌が見えました。部屋にはテレビ、電気ポット、小型冷蔵庫(中は自由に使える)がありました。また電気炬燵が広縁部分にセットされていました。明かりの感じも、物を読み書きするには幾分暗めだけど、とってもグッドでした。ちなみに廊下には一定間隔をおいて電球の行灯が置かれていて、とてもいい雰囲気でした。

■料理 食事は夕食、朝食とも東館の食堂でいただきます。基本的にはテーブル席なのですが、脇に3つくらいテーブルのおけるお座敷スペース(10畳くらいか)もあって、3組だけはそこで食事してました。メニューは基本的に日替わりにしているようです。そのせいか、よくあるお品書きのようなものはありませんでした。でも、連泊しても同じ料理は出さないという心意気はうれしいところです。夕食は見た目の印象も良く、器も上品な趣味の良いものを使っていて、目を楽しませ食欲をそそられるって感じでした。テーブルには予め料理が並べられており、あとは頼めば、芋煮汁(おかわりもできます)とご飯、お茶が出てくるだけになっています。山菜の小鉢が数種類。冷やしそばは事前に出されており、いわゆる温泉旅館にありがちな天ぷらや一人用の鍋物みたいなものはありませんでした。ただお刺身はありました。まぐろ、ほたて、川魚(?)の3種盛りでした。魚をただの塩焼きにせず、ピカタみたいになってるのもでましたが、これはあまり好きではありませんでした。あとはざる豆腐と鴨ロースが美味しかったです。特にざる豆腐は味が濃くってクリーミーで、あんなに美味しいお豆腐は初めて食べました。デザートとしてりんごのシロップ煮もありました。朝食も予めテーブルに並べられていて、席につくと、味噌汁が運ばれてきました。(味噌汁はおかわり自由です)冷たい牛乳が少々、ひもの、温泉卵、鶏肉のホイル包み、ハム、野菜サラダ、がんも、ちりめんじゃこの大根おろし、それに梅干、漬物といった感じです。ほどよい量で味も美味しかったです。朝食後、談話室で水出しコーヒーのサービスがあります。落ち着いた談話室の中でBGMにジャズを聞きながらコーヒーを飲むことが出来ます。味は口当たりがまろやかでとっても美味しかったです。水出しコーヒーはカフェインも少なく、胃にもやさしいのだそうです。
■接客 スタッフ皆さん、若かったです。それに受け答えもしっかりしていて好感が持てました。伝えるべきことはきちんと伝え、あとは客の自由に任せてくれる。そんな感じがしました。夜9時を過ぎると、この宿は消灯時間となります。といっても、もちろん全館電気が停まってしまうわけではありません。スタッフが拍子木を鳴らしながら廊下を歩いて回るのです。このあと館内が暗くなります。売店の営業もこの時間まで。こんなことする宿ってほかにないし、ささいなことですがなんか面白い感じがしました。きっと若いスタッフたちの発案なのでは。
(宿のオフィシャルHPはこちらから)

■源泉チェック■
無色透明
泉質 ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉
源泉温度 58度
湧出量 200〜250リットル/分
PH 7.1
湧出状態 自家源泉(自然湧出)
飲泉