源泉の宿・宿泊記

青荷温泉/青荷温泉旅館(★★★★☆)
よぐきたねし!ほの暗さに心落ち着くランプの一軒宿
(道すがら一軒宿の青荷温泉旅館を望む) (青荷温泉旅館に到着) (青荷温泉旅館の玄関口)

一軒宿の青荷温泉旅館は、テレビもラジオもない昔ながらのランプの宿です。廊下も部屋も、ランプが下がって、夜ともなると幻想的な風景を演出します。1931年に青森の歌人 丹羽洋岳(にわようがく)が始め、戦後企業化されたそうです。ランプという言葉から古びた宿を想像するかもしれません(?)が、外観は萱葺き屋根と白壁を用いた洗練された建物です。深い緑をかき分けるように下って行った青荷川の渓谷畔に木造二階建ての本館と、隣接する水車館、離れ形式の幻渓楼(山下館)、ふるさと館、十方堂などが軒を連ねています。

●料 金 1泊2食 8,500円〜(12月〜3月は10,000円〜)
●所在地 青森県黒石市沖浦字青荷沢滝ノ上1−7
●電 話 0172-54-8588
●交 通 東北自動車道黒石ICから国道102号線経由18k
●食 事 夕食/和食、朝食/和食(ともに大広間にて)
●風 呂 内湯(男女各2、混浴1)、露天風呂(混浴1)
●施 設 全33室
●イン/アウト イン15:00/アウト10:00

温泉 お風呂は全部で4種類あります。
@健六の湯(男女別湯):これは平成13年1月に別棟の浴舎としてオープンした総ヒバ造りのお風呂です。まだ新しくてきれい。浴室の二面が天井まで高くのびたガラス窓となっているので、採光も良く日の光がふんだんに射し込み気持ち良くお湯に浸かることができます。日が暮れた後のランプの灯りの下での入浴もまた趣があり格別でした。なお、女湯は専用露天風呂があり青荷川の流れが見えて良いそうです。ただ日中は青荷川の対岸を散策している人から丸見えなので注意が必要です。
A露天風呂(混浴):川岸に涌き出た湯を岩でせき止めた混浴の岩風呂です。底には砂利が敷かれていて素足に心地良い感じ。一角には樽風呂もあります。青荷川に面して開け放たれているので、川のせせらぎの音がダイレクトに聞こえ気持ち良かったです。ここは脱衣場は一つのみしかなく女性タイムもありません。
B竜神の湯(入口別混浴):入り口は男女別ですが、中は常時混浴のお風呂です。三方がガラス窓となっています。窓を開け放つと正面に竜ヶ滝が見えます。それほど広くはないし、お湯も無色透明なので混浴慣れしていない女性にはちょっと入りづらいところがあるかもしれません。でも静かな雰囲気で心落ち着く感じでした。
C内風呂(男女別湯):大きさは健六の湯の半分くらい?でしょうか。男湯より女湯の方が大きいそうです。竜神の湯と露天風呂(いずれも混浴)に入りづらい女性のことを気遣って、内湯は女湯の方を広くとっているんじゃないかと思います。開放感には欠けるものの、湯船は総木造りで、黒ずんだ木の色などなんとも言えず雰囲気はなかなか良かったです。
(健六の湯(男女別湯)) (露天風呂(混浴))
(竜神の湯(入口別混浴)) (内風呂(男女別湯))
■部屋 部屋はいたってシンプルな造り。もちろんテレビも冷蔵庫も電気コンセントも何もありません。あるのはランプと暖房用の石油ストーブ、それにテーブルくらいなもの。今回泊まったのは本館2階の209号(たらぼ)という部屋。趣のある格子戸を開けるとスリッパを脱ぐスペース兼ハンガーと棚の付いた1畳分ほどの板の間があり、さらにふすまを開けると8畳の和室になっています。部屋の中で耳を澄ますと敷地内を流れる青荷川のサーっというせせらぎが聞こてきます。実にいい感じ。夕方になるにつれ部屋も館内も次第に薄暗くなってランプが灯される時間に。午後4時過ぎくらいからスタッフがランプの灯をともしに館内を回り始めるのです。最初は暗すぎるなと思っていたランプの灯りも時が経つにつれ、目も慣れ、いろいろなものが見えてくるようになりました。物を長時間読んだり書いたりするにはちょっと辛いかもしれませんが、少しくらいなら大丈夫です。(私もHP用のメモを部屋で書いたりしてました)あと部屋にはルームキーがありません。貴重品は各部屋に備え付けの金庫に。部屋で横になってランプを眺めながら青荷川のせせらぎを静かに聞いているといやがおうにも落ち着いた気分になってきます。余計なことを考えずにボーっとしているのもいいかもしれません。
(本館2階209号たらぼ) (夜寝ながら見た部屋の天井ランプ)
■料理 夕食は大広間の食堂(和室)でいただきます。夕食ももちろんランプの灯りの下で食べます。(なかなか良い雰囲気)当日は満室だったせいか、お隣さん同士近接した感じもありましたが、食事は美味しくいただけました。途中、宿のスタッフが中央に出てきて夕食のメニューを青森弁で紹介する時間もあって、笑いの渦ができお座敷で知らない人(ちょっとしたグループっぽい人たちもいましたが)同士みんな和みました。メニューは岩魚の塩焼き、山菜2品プラス小皿2品と野菜の煮物、青荷の漬物と山菜たっぷりの青荷うどん、鯉のあらい、山菜の天ぷら、ご飯、デザートにりんご(ふじ)が丸ごと1ヶでした。ここでは厨房でもランプが灯され料理が作られています。厨房をちらっと外から見ると一見お洒落なカフェバーのように見えてしまったのは私だけでしょうか?なかで働く料理人たちがなんだか格好良く見えました。次に朝食です。朝食のメニューは山菜2皿、卵焼きのふき味噌?がけ、味付け海苔、岩魚の甘露煮、ホタテと山菜の味噌煮(自分で火を点け暖める方式)、お新香、きのこの味噌汁でした。山菜あり川魚あり素朴ながら満足のいく朝食でした。
(夕食) (朝食)
■接客 ランプは午後4時過ぎくらいから配布&点灯(スタッフが各部屋をまわりランプを持ってきて点けていってくれます。)が始まり、朝は8時くらいにランプが回収されます。布団の上げ下げはセルフサービスとなっていますから、チェックイン後は、部屋にランプの灯りを点けに来てくれる以外は翌朝まで客室にスタッフが訪れることはありません。湯治場の姿勢を継承しようとしているのか必要最低限のこと以外は基本的に客任せです。良質の温泉に部屋とランプと食事が供されれば、あと静かな時をどう過ごすかは我々利用者次第といったところです。
その他 やっぱり人気の宿ですね。みんなこの宿の醸し出すなんともいえない雰囲気に惹かれて来るんでしょうか。自販機が1台、健六の湯の外に設置されていますから、電気が全くないわけでもないようです。(自家発電?)やはりランプは演出小道具のひとつ。日常生活と同等のあるいはそれ以上の快適さを宿に求めようとする人には、この宿は不向きだと思います。もしかしたら快適さと趣とは表裏一体の関係なのかも。一方を求めれば他方は失われてしまうという意味で。この宿の良さはやはり仄かなランプの灯りを頼りに夜を過ごしてこそ味わえるのではないか、そんな気がしました。
(宿のオフィシャルHPはこちらから)

■源泉チェック■
無色透明
泉質 単純泉
源泉温度 47度
湧出量 500リットル/分
PH 不明
湧出状態 自然湧出1本、ボーリング1本
飲泉