と学会、またしても・・・!!



 「と学会」の新刊が出た模様です。
 内容は非常に面白いです。実際、私が学生時代に読んだ古いオカルト書なんかも出てきたりして、妙になつかしいなーと思った次第です。
 同時に「?」な記述や、あきらかなミスも結構ありますね(苦笑)。
 でもまあ、これは仕方の無いことでしょう。
 ミスは誰だってやります。自慢じゃないですが、私だってしょっちゅうです。「オカルト百科」も、時々こっそりと修正していたりして(あわわ・・・・・・)。
 まあ、「と学会」は、こうした他人のミスを突っ込んで面白がる会だと言われますが、これには私も同意せざるを得ませんね……。

 それともう一つ。非常に残念なことに、最近のと学会の一部ライターは、トンデモに対する愛情が薄れ、ユーモアや余裕が無くなって来ている様にも思うのですよ。
 要するに、本気になって糾弾してるとしか思えない文章が見られます。
 このまま行くと、こうしたトンデモ本へのバッシング団体になってしまうんではないか? そんな危うさを感じます。
 いや、この危うさは、と学会の創立当初からありましたが、年月を重ねるにつれ、ますます濃厚になって来ているような気がします。
 
 ちなみに私は、普段は他人のミスつつきなんてやる意味を感じないし、やりたくないって人なんです。
 なぜなら、天に吐いた唾は、間違いなく自分の顔に落ちてきますから。
 そりゃ、批判は絶対に必用です。
 でも、批判というものは、良い物を見つけるための手段であるべきだと思います。
 他人への批判を娯楽にしてしまうことや、批判のための批判ってのは、私個人としては避けたいところなんですな。

 実際問題、人間である限り、あらゆる分野のエキスパートになるなんて、どだい不可能です。
 と学会の方々は、理系の分野に詳しい方々は多いですが、どうにも文系には弱い人が多いようです。さすがに歴史学に関しては博識な方が多いですが、これが文化や思想、宗教の教義におよんでくると、正直いまひとつって感がぬぐえません。
 でも、これは仕方のないことですよ。かくいう私だって、UFOや超心理学などになると、ド素人ですし、これが物理学に及ぶと無知もいいとこです。
 しかしながら、だから批判や指摘はしません。……で終わらせるのも、あまりに色気が無いんで、私が関心持ってる分野たる「西洋魔術」に関するミスだけを指摘しておきましょう。

 山本弘さんにも、オカルティズム絡みのミスや無知や「?」な主張は、過去の著書を入れると、かなりの数に登ります。
 
 しかし、ここで取り上げるのは、唐沢俊一さんです。
 魔術がらみでは、「ゲーティア」(※1)をご存知ないらしく、悪魔の名前を「世界妖怪図鑑」の著書のダジャレによる創作と決め付ける等のミスが印象に深いです。
 これは「トンデモ本の逆襲」(p137)の中の文章なんですが……

・風を起こす悪魔で、「フーカロール」。
・団体で出てくるから「ダンタリアン」。
……うーん、すごい。すごいけど、いいかげん(笑)。

 「団体で出てくる悪魔だからダンダリアン」や「風を起こす悪魔フーカロール」は、ダジャレだろうと。
 ところが、恐ろしいことに、このダンダリアン(Dantalion)やフーカロール(Focarol)は、間違いなく「ゲーティア」という魔術書に出てくるんです。しかもダンタリアンは「多くの男女の顔を持った人間の姿」で出現するとあります。団体とまでは行かないが、近いです。フーカロールに至っては、「と海を支配する」とあります。
 念のため、メイザースによる英訳本と、ピーターソンによる英訳の2種類のテキストを調べておきましたが、間違いありません(笑)。
 もっとも、この話しをSFファン達の飲みの席で話したら、みな腹を抱えて大笑い。
「そんな妙なことを知ってるお前の方が変な奴だ。」
 はい、ごもっともです(トホホ)。
 
 他に彼は大昔、「古本マニアの雑学ノート」という著書で、魔女術に関する本を嘲笑してたんです。しかし彼、この魔女宗については非常に無知でした。
 私はイタズラ心を起こして、これを友人の魔女に知らせたことがあったんです。すると彼、それを読んで非常に面白がっており、唐沢さんに対して非常に好意的な文章を、当時の私が出してた同人誌(オカルトではない)に寄稿してくれたりして、これも今となっては良い思い出です。

 で、今回の本題です。
「トンデモ本の世界T」(大田出版)のp278〜279です。

 実はハバートはカリフォルニアの初期代表的カルト団体であるOTO(東方聖堂会。バラ十字団の流れを組むヨーロッパ正統派カルトで、有名な英国の黒魔術師アレイスター・クロウリーがアメリカに布教した)に関わりを持ち、当時そのロッジ(支部)を牛耳っていたカリフォルニア工科大学の科学者でアメリカのロケット開発草創期の第一人者(そういう人物が黒魔術にはまっていたのである)だったジャック・パーソンズに、愛人との全霊を込めたセックスにより宇宙霊を宿した子供(ムーンチャイルド)を作ることを勧めながら、その愛人と駆け落ちしたという、いわくつきの怪人物であった。このOTOがアメリカにもたらした悪魔崇拝の正当な(?)後継団体がチャーチ・オブ・サタンであり、実践者がチャールズ・マンソンであるわけだ。

 はい、これだけの文章の中に、実に3箇所もあきらかな間違いがあります。
 だいたい、クロウリーを黒魔術師として紹介する時点で、魔術に関して勉強不足と分ってしまうのですが。

OTOは悪魔崇拝の結社ではありませんので、アメリカに悪魔崇拝をもたらしてなぞいません。
チャーチ・オブ・サタンはOTOの後継団体ではありません。
マンソンがチャーチ・オブ・サタンの教義の実践者だという事実はありません(ラヴェイが聞いたら激怒するでしょう(※2))。

 他にもOTOがカルト団体か? クロウリーが黒魔術師? パースンズが「黒魔術」にはまってた? OTOはバラ十字会の流れを組む?(正確には、スコットランド系フリーメーソンの系統団体で、テンプル騎士団と薔薇十字団の後継者を自称が正確でしょう)。あきらかな間違いと断言はできないものの、結構、無知が目立ちます(※3)。
 まあ、これは唐沢さんだけの無知ではなく、彼の種本の記述が不正確だったというのが、大きいとは思います。
 
 普段だったら、私はこんな意地の悪い重箱の隅つつきはしません。しかし、今回だけは例外的に遇えて書いてみました。
 理由は、と学会は、普段からこういう重箱の隅つつきをやってるわけですから、たまに逆襲されてもいいでしょう、ということ。
 もう一つは、他人様の名誉に関わる問題を書くからには、それなりの責任感を持ち、きちんとした取材をして欲しいということ。
 それゆえに、私の主義には反するものの、こうした意地悪を書いてみた次第であります。



※1
魔術師の間では凄まじく有名な本ですので、稗田おんまゆらさんなら確実にご存知だと思うんですが。
※2
ラヴェイのマンソン嫌いは有名です。友人の妻を殺害した一味のボスなわけですから、当然といえば当然ですよね。
※3
あるいは、この文章を(ここでは引用していない)段落のずっと先から読み返してみると、ロン・ハバートのサイエントロジーとOTOとチャーチ・オブ・サタンを混同しているようにも取れる。三者は似ても似つかないまるっきりの別物なんですが……。
※4
関係ないですけど村崎氏も魔術に詳しいらしいです(笑)



PS:
長らく気付きませんでしたが、唐沢さんが反論(?)をくれたみたいです。
正直、反応がいただけるとは意外でして、嬉しくも思います。

http://www.tobunken.com/olddiary/old2004_06.html

 うーーん、一番肝心の私の突っ込み部分には、少ししか答えてくれてませんね。
 おまけに論点がちょっと脱線してるように見えるのは私だけでしょうか?
 

「The Unknown God」 M.Starr   Teitan Press
「The Satanic Bible」 A.S.Lavey  Avon
「The Lesser Key of Solomon 」 Peterson WEISER
「Goetia」 WEISER
「英国魔術結社の興亡」 F・キング 国書刊行会
「アレイスター・クロウリーの魔術世界」 F・キング 国書刊行会
「性魔術の世界」 F・キング 国書刊行会
「悪魔教」 ブランチ・バートン 青弓社
「魔術の歴史」 J・B・ラッセル 筑摩書房