正常な膝関節

1.膝の構造(膝関節を構成する骨、関節、靱帯、軟骨、半月板)
2.関節液について(液量、外観、比重とpH、粘調度、結晶)
3.下肢の筋肉とその働きについて
4.膝関節疾患に筋力トレーニングが必要な理由
5.関節可動域について

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膝の構造

膝関節を構成する骨
膝の周囲には4つの骨がある。1つは大腿骨(太ももの骨)、2つ目は膝蓋骨(いわゆるお皿)、
3つ目は脛骨(膝の下の骨でこれの延長が向こうずねとか弁慶の泣き所と言う)である。もう1つが腓骨である。
下腿(膝の下)には2本の骨があり、外側の細い腓骨と内側の太い脛骨から成り立っている。
膝関節は、体の中で体の中で最も複雑な関節の一つで、全体重を平均して支えると同時に運動時の自由度が必要。
大腿骨は脛骨に位置する半月板により滑らかな屈曲と伸展が可能である。

関節
膝を構成する関節は2つあり、1つは大腿骨と膝蓋骨からなる膝蓋大腿関節と言い、
もう1つは大腿骨と脛骨からなる大腿脛骨関節という。

靭帯
膝は言ってみれば棒状の骨が上下に重なっているだけなので構造上不安定である。
そこで膝を安定化させるために重要な靭帯が4本あり、まず外側と内側にある靭帯でこれにより横の安定を保つ。
それぞれを外側(内側)側副靭帯と言う。
更に前後の揺れを防止するために膝の中に十字靭帯という靭帯がクロスしており、各々を前(後)十字靭帯という。

軟骨
関節の部分には(骨の端っこ)軟骨と言うつるつるの部分があり、これがつるつるっとスムーズに動くことで
痛みもなく関節を滑らかに曲げ伸ばし出来るようになっている。

半月板
大腿脛骨関節は、関節の形からそれなりに安定を保つために凹凸があるが、更に安定感を増すために
そして膝の屈曲(曲げること)や伸展(伸ばすこと)がスムーズに行くように半月板と言う軟骨の組織がある。
同じ軟骨でも半月板の軟骨は関節の軟骨とやや趣を異にしており、
半月板の働きは関節の安定化の他にクッション(衝撃吸収装置;ジャンプしたときなどの膝への衝撃を和らげる)の働きもある。

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関節液について
関節液は関節腔の滑膜から分泌される特異タンパクや粘液様物質と、
血液から透析されて移行した血清成分および細胞成分などからなっている。

1.一般的性状
☆液量
液量 (正常0.1〜4ml) は炎症により増加することが多いが、神経病性関節症でも100mlに達することがある。

☆外観
正常関節液は無色であるが、炎症時には黄色調を呈する。化膿性関節炎ではクリーム様となり多数の好中球を含む。
「関節血腫」と「血液が混入した関節液」とは関節液と末血のヘマトクリットの比較で鑑別できる。
また関節液内に脂肪滴がみられるときには関節内骨折を疑う。

☆比重とpH
正常関節液の比重 (20℃) は1.008〜1.015であるが,炎症が強いとタンパクの増加により1.020以上となることが多い。
関節液のpHは変形性関節症、慢性関節リウマチ、化膿性関節炎の順に低くなる。

☆粘稠度
ヒアルロン酸の濃度により左右され,炎症により低下する。
水解酵素によるヒアルロン酸の分解や関節液の増加によるヒアルロン酸の希釈と考えられている。
結晶 痛風では偏光顕微鏡で強い負の複屈折性を示す針〜棒状の尿酸ナトリウム結晶が出現する。
また、偽痛風では弱い正の複屈折性を示す棒状〜菱形のピロリン酸カルシウム結晶が出現する。

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下肢の筋肉とその働きについて

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下肢の関節と筋肉の関係
1. 股関節の運動
屈曲 …… 腸腰筋・大腿直筋・(大腿筋膜張筋・縫工筋・恥骨筋・長内転筋・短内転筋)
伸展 …… 大殿筋・大腿二頭筋・半膜様筋・半腱様筋・(大内転筋)
外転 …… 中殿筋・(小殿筋・大腿筋膜張筋・大殿筋・大腿直筋・縫工筋)
内転 …… 大内転筋・長内転筋・短内転筋・(薄筋・恥骨筋・大殿筋)
外旋 …… 梨状筋・内閉鎖筋・上双子筋・下双子筋・大腿方形筋・大殿筋・(縫工筋)
内旋 …… (中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋)

2.膝関節の運動
屈曲 …… 半膜様筋・半腱様筋・大腿二頭筋・(薄筋・縫工筋・腓腹筋)
伸展 …… 大腿四頭筋・(大腿筋膜張筋)
大腿骨の外旋 …… 膝窩筋・(半膜様筋・半腱様筋・薄筋・縫工筋)
大腿骨の内旋 …… (大腿二頭筋・大腿筋膜張筋)

3.足関節(距踵関節)の運動
背屈 …… 前脛骨筋・長指伸筋・(長母指伸筋・第三腓骨筋)
底屈 …… 腓腹筋・ヒラメ筋・(長指屈筋・長母指屈筋・長腓骨筋)

4.足根間関節の運動
内反 …… 前脛骨筋・後脛骨筋
外反 …… 長腓骨筋・短腓骨筋・(第三腓骨筋)

5.中足指節関節の運動
屈曲 …… 長指屈筋・長母指屈筋・(短指屈筋・虫様筋・骨間筋・短母指屈筋・小指屈筋)
伸展 …… 長指伸筋・長母指伸筋・(短指伸筋)

6.指節間関節の運動
屈曲 …… 長指屈筋・長母指屈筋・(短指屈筋)
伸展 …… 長指伸筋・長母指伸筋・(短指伸筋・虫様筋)

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膝関節疾患に筋力トレーニングが必要な理由
上記を見たら分かるように「膝関節の屈曲・伸展に必要な筋肉」が膝関節疾患によって筋力低下を
招いており、膝関節を強化する事が必要だから・・・という当たり前な理由である。


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関節可動域について
関節可動域表示ならびに測定法
日 本 整 形 外科 学 会・日本リハビリテーション医学会(昭和49年6月1日作成)

関節可動域のことをROMという。便宜上、膝関節以外の部分も入れてある。

1.ROM 測定の目的
  1)測定をすることによって関節の動きを阻害している因子を発見する。
  2)障害の程度を判定する。
  3)治療法への唆をあたえる。
  4)治療 訓練の評価手段となる。

2.ROMの種類
  1)自動的 active: ケースが十分の力で動かしうる関節可動域。
  2)他動 passive: 外的な力で動かされる関節可動域( )で表示。
  3)関節には他動的の他に遊ぶ reserve があるが、こらは原則としてとりあげない。

3.基本肢位
すべての関節について解剖学的強肢位を0°とする。なお前腕については手掌面が矢状面が矢状面にある状態を
0°とし、肩関節の水平屈曲伸展計測の祭は外転90°位を0°とする。

4.角度計のあてかた 基本軸 移動軸 (その1. その2)
軸は臨床的に考慮したので理論的でない部分もある。基本軸は原則として立位で設定した。

注(表示にていて)
☆過伸展 Hyperextensionという言葉は、一般に膝、肘、指に使用されているが基本肢位を0°としたので
 必ずしも必要はない しかし肘と指は正常でもいわいる過伸展をとりうるので、
 習慣上過伸展とうい言葉を使うことが多い。

☆可動域表示をマイナスで表現することもできる。
  股関節伸展について例示すれば、関節可動域が屈曲位20°〜70°まであったとするとこの表現は次の通りである。
  a)股関節の運動範囲は20°〜70°
  b)股関節の屈曲は70°まで、伸展は屈曲20°(−20°まで)

☆正常可動域はあくまで参考角度とする(膝関節の場合0〜130°)。

☆股関節にはこの他分廻し運動、あるいは屈曲位外内転(Abduction or Adduction in Flexion)
 という表現をすることがある cir-cumductionという言葉があり、ほとんど同用語という解釈もなりたつが、
 回旋要素の有無によって異なる意味もあるのでここではふれないことにする。

☆肩甲帯の運動は複合運動であるので計測法にとくに厳密な規定はもうけない。

☆肩関節の運動の中心は解剖学的には肩峰ではないが計測上の容易さから肩峰を用いることにした。

☆肩甲上関節を単独に計測するときは肩甲骨を固定する。

☆対立運動の反対の運動を復立運動rertopo-sitionとする。

☆拇指尺側内転において、示指をこえて掌面で尺側に行く運動を transpalnar abductionという。

☆拇指の最大橈骨側外転位から1-2中手骨間の最大角度を保ちながら、CM関節で第1中手骨を
 手の尺側線に近づける運動を分廻し運動circumductionともいい、その角度は掌面と第1中手骨なす角度とする。

☆中指自体の掌面上は橈側外転 radial abduction、尺側ガ外転urnar abductionとする。

☆足部は理論上長軸方向における回旋運動すなわち回外supination と回内pronationと背底屈と外内転があるが、
 実際はこれらの運動は合成されて外がえし eversion(回内、外転、背屈)内がえし inversion(回外、内転、底屈)の
 複合運動としかならず単独運動はおこらない(内外転のみわずかに単独運動がaある)。
 従って足部運動は外がえし、内がえし運動としてまとめた 。
 いわいる内反外反という言葉は変形をあらわす言葉として使用する(とくに用語委員会に付託)内反運動、
 外反運動という言葉も不適当であり、ドイツ語ではeversionはAuswrtskantung、
 inversionはEinwarskantungとして表現されている。

 (測定について)
☆測定しようとする関節は十分露出すること、とくに女性の場合更衣室が必要である。
☆ケースに精神的にもおちつかせる、よく説明し、気楽な姿勢をとらせる。
☆基本軸の固定が大切である 固定する場所は関節の近位あるいは遠位端であって関節そのものではいけない。
☆角度計の軸は関節の幅とよく一致させる軸の平行移動はさしつかえない。
☆角度計は2回あてること、動かす前と後に測定する。
☆2関節筋(多関節筋)のある関節ではその影響を十分配慮すること。
☆関節痛のあるさいはどの範囲で痛みをあるかを発見し記録すること、検査は注意深くゆっくり行う。

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参考・引用文献
 看護必携シリーズ7・整形外科
 成人看護学 骨・関節・筋肉疾患
 図説臨床看護・整形外科
 他、学生時代のプリント資料多数






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