06年度診療報酬改定/ナースにも選ばれる病院づくり
急性期の生き残りで焦点に/看護職員争奪戦の気配も
急性期病院の2006年度診療報酬改定への対応をめぐり、
入院基本料の算定要件をクリアできる看護職員を確保できるかどうかが、
今後の経営戦略を左右するとの見方が強まっている。
廃止された紹介率関連加算をはじめ、
マイナス改定の減収分を相殺するには1ランク上の一般病棟入院基本料の算定が不可欠。
また、看護職員確保対策を強化する病院も出始めるなど、
患者だけでなく看護職員からも選ばれる病院づくりが従来以上に必要になりそうだ。
今回改定では、紹介率関連加算を廃止する代わりに入院基本料の評価を厚くする方向が示された。
ただ、看護職員配置基準が実質10対1(現行2対1)で、
平均在院日数が21日以内の区分B以上でないと、
急性期病院としては認められないという見方が強い。
特に注目されるのが看護職員を確保できるかどうか。
2月25日に都内で開催された急性期病院の経営戦略セミナー(保健・医療・福祉サービス研究会主催)では、
いずれも2対1の看護配置をしている急性期病院関係者が、そろって看護職員の確保を最重要課題に位置付けた。
聖路加国際病院(520床、東京都中央区)の中村彰吾事務長は
「1.4対1(実質7対1)を取れるかどうかが、平均在院日数の短縮とともに生命線になっている」とし、
同院が算定できない場合は3億円程度の減収になると予測した。
三井記念病院(482床、同千代田区)の桜井雅彦・病歴管理、医療安全管理課長は、
今後もマイナス改定基調が継続するとの見方を提示。
入院基本料については区分Aと同Bの差が286点とほかより高く設定されていることから
「誘導している」とした上で、「どのように1.4対1に持っていくかが悩みの種」と話した。
一方、松波総合病院(436床、岐阜県笠松町)の山北宜由院長は、忙しいという理由で看護師が辞職し、
業務がますます過剰になってさらに離職者が増える悪循環が生じている現状から
「最大の問題は看護師不足」と指摘した。
新規採用で増員できても、離職者の影響で年度末には年度当初の水準まで戻ってしまう状況を紹介。
また「公務員になりたい看護師が他院に応募するという心配がある」と、
公立病院並の給与を確保しずらい民間病院の悩みを訴えた。
こうした現状を踏まえ、従来以上に看護職確保に力を入れる必要も演者の共通認識となった。
聖路加国際病院では、就職を希望する看護学生、新卒者を対象に
卒業前の夏季の一定期間病院看護を実体験できるインターンシップサマープログラムを実施している。
同院で働きたいというインセンティブが働くほか、看護職員の平均在職期間が5年程度と長いこともあり、
実質7対1(現行1.4対1)の区分を算定できる見通しだという。
三井記念病院は、急性期病院として生き残るための院内体制見直しの一環として、
看護師獲得の専門部隊を設置した。
桜井課長は、医療安全や院内感染対策を含めて看護職員の増強を図る必要を強調。
兼任だった看護師の募集部門を専任にしたほか、各種手当ての見直しや子育て支援の充実を図るなど、
職場環境の改善にも力を入れる考えを示した。
◎ 看護管理者の反応は
「現実的な問題として看護職員配置基準の実質7対1(現行1.4対1)を算定できる急性期病院が
どれくらいでてくるのかというのが、現場の看護管理者の関心事になっている」。
日本看護協会の岡谷恵子専務理事は、答申後の医療現場の反応を説明する。
看護職員争奪戦が各地で始まりそうな気配も漂う今回の入院基本料の算定要件について岡谷専務理事は、
一般病床全体で基準をクリアしなければならないため、病床規模が大きいほど不利になる面があると指摘する。
「絶対無理なので、病棟ごとに算定するようにしてもらわないと困る」という声もすでに寄せられ始めているという。
看護職員の確保をめぐる急性期病院の事情は、
地域性、競争相手の多さ、病院の開設主体や提供する機能によって異なる。
患者だけでなく看護職員からも選ばれる病院づくりが従来以上に必要になりそうだ。
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