人工膝関節について


身体にやさしい新素材・正座も出来る人工膝関節
http://www.nhk.or.jp/kenkotoday/2001/20010312/20010312.html

人工膝関節の歴史(人工膝関節の実物写真もあり)
http://www.spacelan.ne.jp/~tkct/lesion02.htm

人工膝関節手術について(松山赤十字病院)
http://www.sanpei.net/op1.html#T

世界で1番曲がる人工膝関節の開発(日本医科大学)
http://www.f5.dion.ne.jp/~riumachi/rasub2.htm

ジョンソン博士のやさしい医療講座(この中に“人工膝関節置換術の記事がある)
http://www.jnj.co.jp/jjmkk/ja/drjohnson/drjohnson.html



◆人工関節の進歩と宿題◆
名古屋市立大医学部整形外科教授・松井 宣夫

日本では年間十万人、アメリカでは約三十五万人の患者が、人工関節の手術を受けており、98%は痛みから解放され、
日常生活の動作が改善されるようになっています。
変形性関節症や慢性関節リウマチのために膝(ひざ)や股(こ)関節が壊れ、歩けなくなる場合、関節の破壊がある限度を
超えると薬やリハビリテーションだけでは良くならず、人工関節などの手術的手段を用いないと歩けるようになりません。
最悪の場合、寝たきりの状態となることすらあります。
幸いにして過去30年間の実績により人工関節の素材や手術のやり方の進歩によって、ほかの臓器と同じように人工物で
骨や関節置換が可能となっています。

1963年、英国のチャンレー博士によって開発された人工股関節は「骨盤に埋め込むカップ状の部分」と「大腿骨(だいたいこつ)に
埋める棒状の金属部分」そして「その先にある直径22ミリの小さな球形の金属骨頭」が一体となっています。
カップは高分子ポリエチレン、棒は金属からできています。最近では骨頭の部分だけ金属やセラミックス、ジルコニアなどで置換する
ことも可能です。股関節に少し遅れて人工膝(しつ)関節も、金属やセラミックスと超高分子ポリエチレンの組み合わせのものが
開発され良好な成績を収めています。

しかし、人工関節にも幾つかの問題があります。
問題の第1は人工関節の寿命です。膝や股関節は関節の運動時や、特に歩いたりする時は常時体重以上の力が関節に加わり、
ずっと使っていると人工関節のかみ合わせ部分が多かれ少なかれすり減ります。
従って現在、優れた人工関節でも耐用年数は10年から20年程度です。
人生80年のわが国では40〜50歳で手術した場合、再手術が必要となるかもしれず、
若年層では特別の場合を除いて人工関節は安易に選択すべきではありません。

第2の問題は、関節を支える骨ががっちりしていないと関節は安定せず、人工関節と骨の間に緩みが生じて
再手術となる場合があります。


第3の問題は、第1の問題と関連しますが、ポリエチレンの摩耗で生じた10ミクロン未満の小さな粉が原因で骨を溶かし、
人工関節の緩みの原因となることがあります。 これらの欠陥をなくすために、すり減りにくいプラスチックの開発や、かみ合わせの
部分を金属と金属、セラミックとセラミックにしたりして、ポリエチレンの摩耗粉による骨吸収を防ぐ方法も考えられています。

人工関節を長く持たせるには筋力をつけたり、無理な力を加えず杖を使うなど患者の努力も必要となります。
人工関節はわが国には1970年ごろに導入され30年近くになります。
しかし30年耐用の人工関節はまだ開発されておらず、今後さらなる研究が期待されています。
人工関節置換術は最終的な手術なので、動けなくなるまで頑張るという考え方は間違いです。
特にリウマチなどでは関節の破壊が進行すると、手術も難しくなり、手術後の回復も遅れ、術後の結果も芳しくありません。
いずれにしても手術のタイミングが大切であり、整形外科や関節外科の専門医に早く相談することが必要です。
(99年4月13日・読売新聞中部本社)







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