前十字靱帯損傷(断裂)について


1.前十字靱帯の働き
2.前十字靱帯損傷(断裂)の原因
3.症状と兆候
4.診断
5.治療(主に手術とその後のリハビリテーション)



前十字靱帯の働き
前十字靱帯(Anterior Cruciate Ligament、以下ACL)は、大腿骨(Femur)外顆内面後方から
脛骨(Tibia)中央全面に付着し、大腿骨に対する脛骨の前方への移動、前内方への回旋を防止する。
ACLは運動の際(特に膝を伸ばしたとき)に脛骨が前に飛び出したり、ぐらついたりしないよう「ストッパー」としての
役割を果たしているという事になる。

          ≪左側の画像をクリックすると拡大します≫
  

前十字靱帯損傷(断裂)の原因
膝前十字靱帯損傷はほとんど外傷によって起こると言われており、
膝関節の正常可動域を越えた動きを強制されたときに生じるが『急激な方向転換』『ジャンプの着地に失敗したとき』
などに受傷しやすくなっている。
多くは、ジャンプ、着地、ひねり、ストップの際に膝にストレスがかかって受傷する非接触性損傷(noncontact injury)である。
その他、膝に直接物体や人があたって損傷を起こす接触性損傷(contact injury)や、
スキーでの受傷のように膝に回旋力や内・外反力が介達的に働いて受傷する介達損傷がある。
受傷時の膝は軽度屈曲、外反位で、大腿骨は脛骨に対して外旋している場合がほとんどである。

●脛骨が前方にずれながら内旋するような力が加わると損傷する。
●接触性損傷と非接触性損傷がある。
●受傷スポーツ種目。
 男子:サッカー、バスケットボール、バレーボール、スキー、野球などが多い。
 女子:バスケットボール、スキー、器械体操などが多い。

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症状と兆候
『急性期(受傷後3週間くらいまで)』
受傷時、「ベキッ」とか「ボキッ」とかの断裂音(pop)を感じる。
受傷時は膝を抱えてうずくまるが、しばらくして立てるようになると膝が何かグラグラと不安定な頼りない感じとなる。
直後に激痛、30〜50ml以上の大量の関節内出血を生じる。この症状は1週間〜10日で消失することもあるが、
ACLを損傷したままスポーツ活動を再開すると、膝くずれ(Giving Way)、関節内出血、半月板症状(疼痛)などが
頻繁に起こるようになる。
これらの症状も1,2ヶ月で徐々に消退していくことが多い。

『慢性期(受傷後3ヶ月以後)』
◎膝くずれ(giving way):歩いていたり急に振り向いたりするときなどに、膝がガクッとして崩れてしまう現象
◎大腿四頭筋の萎縮:太股の筋肉が細くなる 。
 giving wayに伴い、二次的に半月板や軟骨損傷を引き起こし腫脹、疼痛を起こすようになる。
 膝がはずれるような気がして(aprehension)スポーツができなくなる。

●新鮮損傷:受傷時の断裂音(POP)、激しい膝痛、関節血腫(関節に血が溜まる)。
●急性期症状(膝の痛みと腫れ)は1週間か10日で消失するが、スポーツ復帰すると、
 また膝くずれ(giving way)と関節血腫(関節に血が溜まる)を起こす。
●陳旧損傷:急停止や方向転換で膝くずれ(giving way)、半月板症状(疼痛、locking)、関節水腫(水症)。
 これらの症状のためにスポーツを諦めざるを得なくなることもある。

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診断
経験のある整形外科医が診察すれば診断は比較的容易。
レントゲン検査は骨には異常があることは少ないので、あまり有用ではありませんない。
かつては、膝関節内に空気と造影剤を入れてレントゲンを撮る関節造影検査が行われた事もあるが
現在はMRI検査が主流となっている。


「脛骨が大腿骨に対して前方へずれる」というのが特徴的な症状なので、前方引き出し徴候(Anterior Drawer)が
見られたり、ラックマン(Lachman)テストが陽性であることが診断における大きな手がかりとなる。
もちろん確定診断は内視鏡検査だが、症状が軽い場合にこの検査が行われることはほとんどなく、
手術しなければならない場合に同時に行われるのが普通になっている。

●Lachman sign
●前方引き出し徴候
●単純X線でSegond骨折を見ることがある。
●Nテスト(回旋不安定性)
●MRI
●関節鏡:最も正確に診断可能である

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治療(主に手術とその後のリハビリテーション)
膝前十字靱帯は、自然経過で通常、断裂が癒合することはない。
従って現在のところ前十字靱帯断裂に対しては手術療法が必要である。

前十字靱帯再建術(新しい前十字靱帯をつくる手術)
 1.自家組織(自分の靱帯、健)を用いる方法
   ◎半腱様筋、薄筋を用いる方法
   ◎骨付き膝蓋腱を用いる方法(私ことナースのおばちゃんの場合はこれで再建した)
   ◎大腿筋膜を用いる方法
 2.人工靱帯(Leeds-Keio人工靱帯)を用いる方法
 3.Allograft(亡くなった人の組織)を用いる方法(現在の日本ではあまり行われてない)。

いずれの方法においてもかなり満足のいく成績が得られているが、手術をすればそれですべてが治ったというわけではなく、
手術後のリハビリテーションが手術以上に重要であることを、ここでは強調しておきたいと思う。

積極的なスポーツ活動を望まない中高年者には、装具装着や筋力増強を中心とした保存的治療で経過を観察することもあるが、
一方、積極的なスポーツ活動を行う場合には、腫れなどの急性症状が治まるのを待ってから、上記のようなACL再建手術を行う。

靱帯再建には、骨付き膝蓋腱がよく用いられるが、これは膝蓋骨(膝のお皿)周囲にある靱帯を用いたもので、
これにより術後6ヶ月〜1年でのスポーツ復帰が可能となっている。
人工靱帯を用いれば更に早期のスポーツ復帰が可能となることもあるが、
再断裂や異物反応(アレルギー)による関節水腫の合併などの問題点も指摘されている。

術後1〜2週間(創部の閉鎖まで)はギブスまたは装具による固定を行うが、術直後より創部の痛みが我慢出来る範囲で、
大腿四頭筋、ハムストリングス(大腿部後面の筋肉の総称)のリハビリを行う。
術後1〜2週より可動域訓練(CPMを用いることもある)、その後より部分体重負荷(松葉杖を用いる)を行う。
その後、Don Joy brace(ドン・ジョイ・ブレスと読む。私ことナースのおばちゃんも使用した)・・・、
などのFunctional braceを用いながら可動域訓練、筋力増強訓練などを行い。
最終的にはスピード、耐久力、俊敏性などをスポーツ種目に合わせて訓練し、術後8ヵ月から1年でスポーツに復帰する。

リハビリは基本的に痛みや不安感のない範囲で進められ、けっして無理のないように行われる。
リハビリ室では膝の関節可動域訓練、筋力訓練、歩行訓練を中心に行う。
手術後の膝や靱帯の回復状態は個人差があるため、スポーツ整形外科医と理学療法士が
それぞれの患者にあったメニューを作成し実施していく。
リハビリ室ではリハビリ開始当初から痛みや不安定感のない範囲で体重をかけていく。
4週前後で自転車エルゴメーター、8〜10週でジョギングが可能になり、競技の種類にもよるが、
5ヶ月頃より軽い(スポーツ)練習を開始し、9ヶ月頃より競技復帰という形になることが多い(スポーツ選手の場合)。

[スポーツ復帰の目安]
●筋力:健側の80%以上。
●ROM:ほぼ正常。
●走行:全力疾走可。

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参考・引用文献
 看護必携シリーズ7・整形外科
 成人看護学 骨・関節・筋肉疾患
 図説臨床看護・整形外科
 他、学生時代のプリント資料多数







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