19話 悲劇のヒロイン

ジャスティスレッドは、何がなんだか分からなかった。

ショック状態で、キョロキョロ。

「わ、私はいったい...」

必死に記憶を辿るが、

「た、たしか...強化人間と戦って...その後....」

思い出せない様子。

しかし、状況が全てを物語っていた。

なにせ、ここは牢屋の中。

「ま、負けた???このワタシが???」

レッドは今まで、戦いで負けたことは一度も無かった。

常勝無敗。それがレッドの日常。

ゆえに、この状況が信じられない様子なのだ。

「たしか...」

レッドは額に手をあて、

「私はスターパルサーを放って....強化人間を消したはず....」

そこまではハッキリ覚えているらしい。

「それから...」

記憶を巻き戻すレッド。

が、

「ん?」

ある違和感が、レッドを一時停止させた。

...?

なにか、下半身が重い。

濡れたような、ぐっしょりした感覚...

どこかで体験したことのあるようなこの感触...

「...?」

レッドは視線を落とす。

自分の下半身に。

?

「??」

明らかに、戦闘服の色が変わっている...

しかも、股間の部分だけが。

「汗...?」

レッドはいつものクールな顔のまま、

「いや....出血?」

しかし、どこか違う。

このどことなく懐かしい感触...

レッドは天井を見上げ、大きく息を吸い込む。

そして、

「ふぅ......」

と、ゆっくり空気を吐き出した。

ふぅ。

それから一拍おいて、股間に視線を戻す。

ゆっくり。おそるおそる。

......

「....」

やはり濡れていた。

そして、嗅ぎ慣れたこの匂い...

「ま、ま、まさか...?」

レッドは股間に手を伸ばす。

指先を震わせながら。

そして、触れる。

ズボンはぐっしょり濡れて、股間に張り付いていた。

レッドはそれを、指先で摘み上げる。

ぐしゅ

しめった音。

そして、パンツから伝わるヒヤリとした感覚。

え゛?

レッドの顔から、一気に血の気が引いていく。

そして、体をブルリ。

「う、うそ....」

レッドのクールな顔が一転。

「わ、わたし....」

目を白黒。

「し、しちゃった???」

えうっ?

正義がカワイイ顔に変わっちゃう。

「ワ、ワタシ...お、おもらししちゃった????や、やっちゃった???」

お、お、おも...

レッドは、キョロつく。

辺りに人はいないか。

誰も見ていないか。

キョロキョロ確認。

誰もいない。

「い、いつ...?いつ漏らしちゃった???」

レッドの顔はもはや正義の顔ではなかった。

どこからどう見ても、子供の顔。

オネショした言い訳を必死に考える子供の顔。

「だ、誰にも、知られてない???」

わからない。

「知られてるわけ無い...知られてたら、ぜったいこんな風にしてられない...」

レッドの頭に、次々とよぎる悲惨な映像。

ジャスティスレッドが、敵の前でお漏らし!!

学園テレビで放送される、お漏らしシーン。

もし、そんなことになったら。

生きていけない。

「せ、正義のジャスティスレッドが、お漏らしなんて!!ぜったいダメ!!ダメに決まってる!!」

泣きそうな顔で、あたりをキョロキョロ見回すレッド。

ふ、拭くモノ...乾かすもの...

 「そ、そうだ...こ、ここはいったい...どこ???」

レッドのベルトには、通信機器などが内蔵されている。

が、今は外されていた。

敵によって外されたに違いない。

しかし今のレッドは、ベルトが無くなってることにさえ、気がついていない様子。

おもらしのことで、頭の中がイッパイらしいのだ。

 「な、なにか...なにか...オシッコを拭くモノは...タオルとか...」

しかし、牢屋の中には何も無い。

あるのは、オシッコくさい空気だけ。

「か、乾かすことが出来れば...」

しかし、ウチワも扇風機も無い。

何も無い。

このままオシッコの匂いを、ぷんぷん撒き散らすしか方法が無いのだろうか。

レッドはあまりに情けない状況に、今にも泣きそう。

そして、オモラシを隠そうと必死にアタフタしているのだった。

もちろんそんな状況は、監視ルームに筒抜け。

笑ってる。

チエちゃんのカワイイ声。

「うふふ。レッドちゃんって、こんななんだね...」

「ボ、ボクも信じられないっす!!チ、チエちゃんっ。」

男子はどうやら正気を取り戻した様子。

チエちゃんの顔とモニタを見比べながら、ニコニコしてる。

そのチエちゃんも、一緒にニコニコ。

「泣きそうな顔でキョロキョロしてるね...」

「は、はいっ。キョロキョロしてるっすっ!」

「カメラで見られてるなんて、思ってもいないみたい...」

「は、はいっ!超小型カメラなんでっす!」

「ビデオにも撮ってるんだもんね?」

「も、もちろんっす!」

「レッドちゃん可哀想...」

チエちゃんは天使の笑顔で、

「チエ、レッドちゃんのこんな姿見てると、ますますイジワルしたくなっちゃうよ。」

「くひっ。チエちゃん...」

「男子くん...」

「は、はひっ??」

「チエのことばかり見てないで、ちゃんとモニターを見ててね」

「ひっ!!」

男子は慌てて背骨をピン。

「ジャスティスレッド、ヒクついてるっす!!」

モニタに集中。

チエちゃんに嫌われるのがよほど悲しい様子。

「ひっ!チェちゃん。電気でも流してみるっすか??」

「え?」

「いつでも、電気流せるっす!!」

男子はまるで言い訳するかのように、

「電気流して、ジャスティスレッドの様子を観察するっ??チエちゃん???」

けどチエは、

「ダメだよ。そんなことしたら、監視してるのがバレちゃうでしょ??」

「そ、そっか!!」

男子はオーバーアクションで、

「そ、そうっす!!電気はダメっす!!ひっ!ひっ!」

「チエは、バレないように観察して、レッドちゃんの自然な様子を観察していたいの...」

「は、はふっ。チ、チエちゃんの言う通りっすぅぅぅ」

男子はペコペコ。

けど、なにか褒められたいらしく、

「そ、それじゃ、着替とか???」

「え?」

「ジャ、ジャスティスレッドの着替え用意してるっす!!着替え観察するっ?チエちゃんっ??」

「着替えかぁ...」

「はふっ。イ、イヤならいいっす!!いいっす!!」

「うーん....」

チエちゃんは少し悩んでる様子。

けど悩む顔も恐ろしくカワイイ。

「着替えって何を用意してるんだっけ??」

「えっ??」

「どんな服なの??」

「え、えっと....女子っぽい私服??あ、あとB級ジャージとか??」

「うーん....それだと....」

チエちゃんは唇に指を当てて真剣に考えてる。

チエちゃんの唇はふっくら桃色で柔らかそう。

男子はメロメロ。

「ふひぃぃぃぃ...チ、チエちゃん...」

「そうだ。チョット待ってて。」

「ほひ???」

「勝手したらダメだよ。」

いい残してテレポした。

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