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第9回埼玉頭蓋底外科研究会に参加して  
                         北茨城市立総合病院  放射線技師  臼庭  等
 私は放射線技師をしていますが、第7回に続いて今回も参加させて頂きました.日頃、画像を提供することを仕事としている私にとっては、脳神経外科の先生方が診断に際して、あるいは術前検査としてどのような画像を望まれるのかを知りたく、日頃の画像検査に役立つ情報を得たいと考え、参加させて頂いております.
 さて、今回参加させて頂いて感じた事を2,3述べさせて頂きたいと思います.
 全体を通して今回は稀な症例の発表が多かった割には私の期待した稀な画像が少なかった様に思います.画像研究会ではないので仕方のないことかとは思いますし、あるいは、もっといろいろな画像を撮られていても提示されなかっただけなのかも知れないとも思います.しかし、ちょっとだけ危惧されるのは、脳神経外科の分野に於いては画像診断上は、CTにしてもMRIにしても腹部や胸部の検査のと比べて対象の動きが少ないと言う事から、撮像方法の確立されるのが比較的早かったわけですが、そのためか、かえって、最近になって行われるようになった検査、例えばMRIでのいろいろなsequenceでの撮像とか、三次元の画像作成などへの応用が十分に活用されていない様に思われる事です.
 第2席の「第一頚椎腹側硬膜内髄外腫瘍の一例」の演題の中で、MRIのSagittal像とAxial像を見せていただきましたが、dumbell type のtumorと言う事でしたので、これに対してはtumorの広がりを観察するのには、Coronal像が有効かと思われました.また、laminectomyの範囲を決定するのに悩まれた様ですが、経静脈の造影CT、あるいはmyelo CTのほうが頚髄も見えやすくてよいかもしれませんし、それらの撮影を行い、3D画像を構築して、実際に椎弓をはずした画像を作ってみれば術前のシミュレーションとして役に立ったのではないかと思われました.
 第3席の「IC ophthalmic giant aneurysmにtrap & long vein graftとした1例」の演題で感じた事は、術中にcalcificationがあり、neck clippingをdome clippingに変更されたと言う事でしたが、現在の血管撮影で提供できている情報は、DSAにしろMRAにしろ3DCTAにしても血流情報のみで、血管壁の情報は提供できていないのが現状かと思います.確かに最近では高分解能CTなどの登場により、calcificationに関してはややdetectされてきている傾向も見られますが、まだまだと言わざるを得ません.そこで、IC ophthalmic aneurysmのような、動脈瘤そのものが大きく、かつある程度の太さの親血管を持った動脈瘤なら血管内エコー(IVUS)の使用が可能なのではないかと思います.IVUSを使用すれば、血管壁の情報もある程度得られ、術前情報として術式の検討やアプローチの方向の決定などに役に立つのではないでしょうか.
 第4席の「再発を繰り返したatypical schwannomaの1例」では非常に珍しい症例を見せて頂いたと思います.γ-Knife治療後、MRIの造影画像で一時的に中抜けする時期があると言う事ですが、Gd製剤の薬効としてはBBBの破綻部位が造影されると言うのが基本ですが、聴神経腫瘍はBBBを持たないために、造影効果としてはpooling,vascuralityを見ているはずです.それから考えると、中抜けしたのはnecrosisを起こした結果と思われますが、その後malignant変化をきたすに至るまで画像上ではどのような変化が見られたのでしょうか?もっといろいろな撮像法、例えばDiffusion,自由水を抑制したFLAIR、脂肪を抑制したSTIRなど、出血に鋭敏なGradient Echo系のMulti Shot EPI、また、造影効果がvascuralityを反映するのであればDynamic撮影などを駆使してみれば何らかの足がかりになった可能性はないでしょうか.
 Cystenographyに関してですが、最近のMRIは簡単に高画質、高分解能のT2強調画像が得られるようになって、T2 Reverse像などを用いて良く行われる様ですが、この撮像方法ですと神経も血管も腫瘍も同じIntensityであらわされてしまいます.そこで、MR AngioのSequenceを用いた撮像が有効かと思います.普段行われているMRAのSequenceのFlip Angleを少し大きめにするか、TEを短めに設定しT1強調を強めにし、撮像時間を延ばして画質を向上させます.それにGd製剤を静注して撮影すれば、もともとMRAのSequenceですから血管はHigh intensityになり、T1強調像ですから神経はIso intensityに描出され、vascuralityのある腫瘍は造影されHigh intensityに描出されます.これを神経の走行に沿ってReconstractionすれば、神経と血管、腫瘍の関係がよりわかりやすくなるはずです.
 以上、画像を生業とする立場からの感想を述べさせて頂きましたが、何かの参考程度になればと思います.
 最後になりましたが、今回研究会に出席し貴重な症例をたくさん見せて頂き大変勉強になりました.これからの貴会の益々の発展を御祈念申し上げます.
 
                                  


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