外側後頭下法による聴神経腫瘍の摘出−大きな腫瘍を安全に摘出するために−


千葉大学医学研究院神経統御学(脳神経外科)
     山上 岩男

現在でも3cmを超える大きな聴神経腫瘍(AT)は少なくない(50/89例: 56%)。側臥位による外側後頭下法retrosigmoid lateral suboccipital transmeatal approachを用いて、合併症を最小限に抑え、大きなATを安全に摘出するための要点を報告する。
1) ポジションニング・開頭により、浅く広い顕微鏡下の術野を確保する。
2)クモ膜を温存しながら小脳橋角部腫瘍を剥離し、その内減圧では絶対に被膜を破らない。
3) 腫瘍と小脳・脳幹の剥離を尾側から進め、聴神経REZのすぐ深部にある顔面神経REZを早期に同定する。
4) 顔面神経付近での凝固止血は禁忌である。
5) 顔面神経のモニタリング(顔面神経刺激監視装置)は必須である。
6)腫瘍は顔面神経と内耳孔付近で最も強く癒着している。内耳孔付近の腫瘍は最後に、しかも最も丁寧に切除する。
7) 髄液漏予防などのため内耳道を再建する。


以上演者抄録


堀先生より講演に先立ち一般口演の総括コメントに追加し

1:4cm以下のATにてγナイフとOpe.で聴力・顔面神経温存などの成績は変わらない。
2:γナイフにてProliferation levelが上がる症例がある。
3:γナイフにてGBMが誘発された症例報告
などの文献を紹介され、
これらのエビデンスを理解してインフォームド・コンセントをすべきこと。
Ope./γナイフいずれの立場に立つにせよお互いの利害得失を十分理解しておくこと。
外科医である以上安易にγナイフに逃げないで積極的にOpe.すべきこと。
これらの事から、岩上先生の講演に期待しているとの主旨の発言がありました。



講演後質疑応答:
Q:内耳道のドリリングのコツは?
A: 大きな腫瘍では聴力温存は断念していることが多く大きめに開けている。
  削除範囲は術前骨条件CTを参考に決めいている。
Q:内耳道内の腫瘍摘出はOpeの早めにやるのが良いのか最後にするのがよいのか?早めにやったほうが良いという報告もある。
A: 大きな腫瘍では最初に内耳道にApproachするのは困難。
  顔面神経への張力を考えると脳幹側からのApproachでMassを減らすのがBetter
Q:開頭にいたるまでの筋層の処理はいかにしているか?(筋肉を切断しているか層毎に剥離するのか?)
A:筋肉は切開しているため、筋層の厚さが視野の確保に重要な影響を与えている。
C:筋層毎の剥離にてある程度厚い人でも対応可能と思われる。
Q:顔面神経がFanningしている時の対処法は?
A:Fanningしている時こそ鋏などによるSharp dissectionが重要。少しづつ切り取るのが良い。
Q:1側しか聴力が残っていなくてそちら側に大きな腫瘍が出来た時の処置は?
A:自分自身は消極的かもしれないが、そのような場合聴力が残っている間は手をつけない。(聴力温存は望めないから)


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