第一頚椎腹側硬膜内髄外腫瘍の一手術例

自治医大大宮医療センター、
     神田 大、大森 義男、篠田 宗次

[症例]61歳男性[主訴]両上下肢しびれ、体重減少
[既往歴]特記事項無し。
[現病歴]平成14年8月頃より左手指、前腕の異常感覚出現。放置していたところ、15年1月頃より両手指、両下肢のしびれ出現。とくに、温度刺激(冷感、熱感)を痛みとして感じるようになった。2月になり、症状の改善を認めないため近医受診。頚部MRIにて異常影を認めた。また、14年10月から半年で約5kgの体重減少を自覚。精査加療目的にて当院紹介入院となった。
[現症]意識清明、脳神経系には明らかな異常所見を認めない。運動系:両上肢とも三角筋、上腕二頭筋、三頭筋がMMT4/5、両下肢は大臀筋、大腿四頭筋がMMT4/5と筋力低下を認めた。感覚系は触覚は頚部より下方で亢進。温度覚は前胸部、左上腕で若干亢進、他では軽度低下。振動覚は両上下肢で低下。反射は左右差無し。
[生理学的検査]感覚誘発電位では明らかな異常所見を認めず。
[神経放射線学的所見]単純X線撮影にて椎弓の破壊像を認め、頚椎MRI画像にてC1からC2腹側にT1にて等、T2にて高信号を呈し、髄外にdumbell状に連続する腫瘤影を認めた。脳血管撮影にて、椎骨動脈radiculomedullary arteryよりfeedingを認めた。
[臨床経過]以上の所見から術前診断はC1/2、C2神経根由来の神経鞘腫とし、脊髄への圧迫解除を目的として手術施行。硬膜内腫瘍は全摘出、硬膜外成分は椎骨動脈周囲静脈叢からの出血のため被膜を残して摘出。病理学的所見はschwannomaであった。術後経過は良好で、左手指に若干の違和感を残す以外症状消失し、独歩退院。
[考察]術前の検討ではforamen magnum開放、condyle fossaのdrill outなどの操作が必要と判断したが、腫瘍の硬膜外成分が十分を露出した時点で予想以上にforamen magnum周囲と距離があり、C1 laminectomy、C2のhemilaminectomyにて十分髄内腫瘍摘出操作が可能であった。ビデオを供覧していただき、術前検討の問題点について御意見を頂きたい。

以上演者抄録


質疑応答
Q:ビデオにて硬膜を横切開していたが閉鎖に苦労は無かったか?
A: 指摘のとおり苦労することも多いが今回は問題なかった。
  弧状の切開などを使うことも多い。

堀 智勝 教授 コメント:
C1のHemilaminectomyのみでOpe.可能であったのでは?C2は極力温存すべき。
Dura修復に関しては出来ればarachnoidを温存できれば不要になるのでArachnoid温存もしくは補修に心すべき。




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