再発を繰り返したatypical schwannomaの一例


東京女子医科大学 脳神経センター
     丸山隆志、田中雅彦、村垣善浩、久保長生、堀智勝

シュワン細胞腫は良性腫瘍に分類され、悪性型は極めて稀とされている。今回、我々は急速に増大し組織学的に悪性化した症例を経験したので若干の考察を含めて報告する。
【症例】54歳、男性
【臨床経過】平成3年ごろより右聴力障害出現する。平成10年には右聴力廃絶、めまいも加わりCT施行したところ腫瘍を指摘される。同年6月、腫瘍摘出術を行ったところ腫瘍は約3cm大でMIB-1=5.9%であった。経過観察を行なったが腫瘍の再増大を認め同年11月、顔面神経も含めて再摘出術施行。この時、MIB-1=26.9%、内耳道内に一部腫瘍の残存を認めたため、平成12年2月γ-Knife照射を行なう。同年8月以降急激な腫瘍の増大を来たしたため平成13年1月、三度目の腫瘍摘出を行なう。この時MIB-1=55.9%まで増悪している。
【病理所見】一度目、二度目の組織では典型的なpalisade patternがみられたが、三度目の組織では観察されなかった。また、二度目まではmitosisなど悪性所見はみられなかったが、三度目の組織では細胞密度は極めて高く、紡錘形細胞が主体で、壊死もみられた。EMA陽性細胞や筋原性細胞は見られなかった。
【考察】神経鞘腫において組織学的悪性所見を示すものは0.7%と稀であり、これだけ短期間に明らかな悪性転化を示した症例の報告は少ない。放射線照射による悪性転化の報告もあるが、今回は組織学的にschwannomaの悪性化と考える。病理標本を示すと共に文献的考察を加えこれを報告する。


以上演者抄録


質疑応答
Q:化学療法には何を用いたのか?
A:PE療法
Q:ICE療法は考慮しましたか?
A:当施設ではICEの経験が少なく今回は選択しなかった。
Q:今後同様な症例が来たらどの様に治療すべきか?
A:再手術を繰り返す度に難しくなるので初回手術で出来るだけ残存腫瘍を減らしておく。
  安易にγナイフに頼らない。Mib-1高ければFollow up MRIを頻回に行う。

堀 智勝 教授 コメント:
自身手術の症例であるが初回は出血もあり全的断念した。
γナイフはかえって悪化要因になったと思われる。


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