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Cinema 2008年


アメリカン・ギャングスター American Gangster
  長尺のギャング物にして展開が退屈や難解と無縁なのはR.スコットの手腕。妻の贈り物を火に焼く悪党と、息子を手放す刑事。対極に身を置く二人の男に共に流れる憐憫を見事に演じ切った両役者に拍手。

ゲット・スマート Get Smart
  AA機上にて見。マヌケスパイ映画といえばおバカ映画の王道、と思いきや、シリアスとアクションが絶妙の塩梅。爆弾要素はないが、主役のスジが通っているために小ネタのジャブが効いてくる。

ザ・マジックアワー The Magic Hour
  面白かった。ただ、役者陣は流石の巧さを見せるもののホンの粗さが見える。きっとテンポ不足なのだろう。西田のオチで幕を引かず、最悪の事態を免れているが、これはかなりの重症とみた。

ジェシー・ジェイムズの暗殺 The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford
  アメリカ人なら誰でも知るアウトローの暗殺劇。時間をかけて懸命に心理描写しているのだが全く届かない。肝心の本人が死んでからの残り30分で、やっと「ああなるほど」では何のことやら。

ジャンパー Jumper
  面白い発想、キャッチーな映像、素晴らしい導入。しかし全てを水泡に帰す役者の拙演。対決の因縁や幼少の記憶と言った小道具に説得力を持たせないのも故意なのか?でなければ相当くだらない。

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street
  血みどろの復讐劇。せっかくのミュージカル仕立てなのだからもっとキッチュ&ライトなアプローチもあったろうに。つまる所、登場人物の誰一人に感情移入することもできず、何だかじれったい映画に。

ダーク・ナイト The Dark Knight
  AA機上にて見。バットマンと言えばジョーカー、それを思い起こさせてくれる一作。狂気に触れて揺れ動く精神がテーマだが、そこは「メメント」のC.ノーランの十八番。他のアメコミ物とは次元が違う。

ペルセポリス Persepolis
  思想色の濃いフランス映画。イラン−イラク戦争やイスラム教義、移民の苦悩などの背景とポップなマンガ画に隠されたテーマは、若きパンク魂と郷愁心のせめぎ合い。実にシンプルなのだ。

ミスト The Mist
  ホラー要素はオマケ。極限下の人間の心の変容を中心に据えたいのは分かるが下ごしらえが不足。群像劇にもならず、主人公にすら心を重ねられぬようでは、あの結末の不条理さに凄みはない。

魍魎の匣 Mouryou no Hako
  全体を包み込む昭和の映像と音楽が心地良い。原作を上手く再構築しているが、やはり尺不足、詰め込み過ぎの感は残る。前作よりかなり好みだが、もっとミステリーか幻想物に寄せたら、と思う。

ラースと、その彼女 Lars and the Real Girl
  ポスターを一見、ただのコメディと早合点して御無礼。非日常を受け入れる各者を演じる役者陣が、しつこさを微塵も感じさせない演出にぴったりハマっている。「彼女」はもちろん主役だが、あくまでスパイスに過ぎない。



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