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Cinema 2007年


007/カジノ・ロワイヤル Casino Royale
  ガサツに仕事をこなすボンドに軽く戸惑い。敵役もボンドガールもシャープさと脆さを併せ持ち、酷く人間臭い。あのケレン味はどこに?しかし、それを差し引いても十分な緊張感と爽快感。「階級」を下げても007は面白い。

13/ザメッティ 13 Tzameti
  モノクローム画面ということもあり、退屈な前半は古典映画のよう。例のゲームが始まってからはそこそこ面白いが、ささくれた青春映画調を目指しているのかギクシャク感が最後まで残る。

アイ・アム・レジェンド I am Legend
  アクション映画ではなく一人芝居。W.スミスは心情物を経て良い役者になったものだと実感。演出も併せ、孤独感が良く出ている。終盤の展開は致し方なしか。荒廃したN.Y.の映像は必見。

アポカリプト Apucalypto
  素人の起用という英断に拍手。しかし、マヤ人の「死への執着のなさ」を描写しつつ「何事も恐れるな」というテーマを掲げるのは、コンセプトの時点で無理がある。「痛さ」に麻痺しなければ、そんな矛盾が見えてくる。

硫黄島からの手紙 Letters from Iwo Jima
  「〜星条旗」は未見。ハリウッドが撮った「日本映画」。冒頭サバサバした主人公に違和感を受けたのも束の間、こぼれる科白や所作が徐々に心をえぐっていく。少しも意外性のない映画なのに白けることはない。

オーシャンズ13 Ocean's Thirteen
  12を飛ばして13。カジノで一攫千金してみたいという万人の夢を叶えてくれる映画。チーム戦は見せ方が命題だが、さすがはソダーバーグ。メキシコやお涙頂戴TV番組など地に足をつける事も忘れない。上手ぇよな。

消えた天使 The Flock
  スタイリッシュなカメラワーク、自らを問うことになるラスト。良くも悪くも「セブン」調。R.ギア扮する偏屈な監察官が、この事件の中で葛藤の姿を変えていく過程が見たかった。A.ラウ監督得意のあの「切なさ」はどこに。

グアンタナモ、僕たちが見た真実 The Road To Guantanamo
  アフガニスタンで誤認拘束されたイギリス人のドキュメンタリー。延々と続く収容所暮らしと不条理な拷問の描写の連続で胃は痛くなる。これは既に感想とかそういう感覚を覚える作品ではない。

クラッシュ Crash
  DVDにて見。単なる人種差別物にあらず、複数のストーリィの絡みがなかなか心地良いテンポで収斂していく巧さ。特に錠前屋のエピソードには涙。手堅い役者陣も相俟って心に深く刻まれる一作。

サンシャイン2057 Sunshine
  美しい太陽のCG表現の合間に哲学的意味を込めた前半に少し身構えするものの、後半は全くのパニック物。見せ方に工夫はあるがただのホラーである。「2001年〜」と「イベントホライズン」を足して3で割った感じか。

シッコ Sicko
  アメリカの抱える病巣を暴く本作は、原点「〜コロンバイン」に戻ったかのよう。切ないインタビューと他国礼賛そして郷愁感漂う再生への決意、M.ムーア調炸裂だが、あの茶目っ気溢れる鉄砲玉感がもう一声欲しい。

ステップ・アップ Step Up
  ベタなストーリー安定のダンス&ラブストーリィ。主役達の挫折も邂逅も描写がライト過ぎて、あまり入り込むことができなかった。淡々と美しいダンスシーンを面白めばそれで良いのだが。

スパイダーマン3 Spider-Man3
  苦悩するヒーロー物ということで結構気にはかけているのだが、今回は作りが粗過ぎて、どこが面白いのかさっぱり分からず。せっかく4年もかけているんだから、もっとホンをキチッとしなさいよ。

ソウ4 Saw IV
  まるで贖罪するかのように前作の断片を繋いでいくのだが、如何せん一つの作品としての形を成していない。過剰なミスリードと血みどろはもういい。最後のカットで一つの大きな謎を悟るような佳作にはもう戻れないのか。

ゾディアック Zodiac
  複雑な事件、複雑にさせた捜査陣の混乱を、整理しながら上手く描写。しかし、未解決事件を題材にしているとはいえ、映画としてはカタルシス不足。残り30分の急転は、それまで2時間寝なかった人へのご褒美か。

大統領暗殺 Death of a President
  無味乾燥に淡々と、米国大統領が暗殺されたという仮説に基づいた、その前後の世界を描写する。関係者のインタビューを交えてはいるが、これまでに面白くないのは、焦点の人が既に旬を過ぎているからなのか。

ディパーテッド The Departed
  佳作「無間道」のリメイク。翻案と見れば比較不問だが、すぐに科白を喚かせて描写しようとするのは、ハリウッド風なのか、演出が拙いのか。「間」をもっと効かせられたら、苦悩や憐憫を散りばめられたはずなのだが。

デジャヴ DeJaVu
  SF物とは知らず鑑賞。カメラワークや演出はさすがのT.スコットと唸るが、脚本にはかなりのアラが。ペンライトで干渉するシーンや4日前しか観られないというシバリはなかなか面白いのに消化不良を感じる。

テラビシアにかける橋 Bridge to Terabithia
  AA機内で見。ディスニー物にしてはかなり地味な作品だが、主役の二人には好感が持てるし、あの展開には割りと面食らった。「空想の国はこう作るのですよ」と押し付けるのは、かなりの大人目線か。

ドッグヴィル Dogville
  まずは表現方法に驚く。白線引きのみのセット、アフレコの効果音と章立てのナレーション。俳優の技量が試されながら、トリアー節で人間性の底辺を描く。えげつなく素晴らしいが、あの幕引きだけはいただけない。

ナンバー23 Number23
  冒頭クレジットから「コジツケにも程がある」と首を捻らせる。興醒めせずガマンしながら喰らいついていくと、ご褒美のようなどんでん返し。カラーを抑えつつもJ.キャリーの上手さがにじみ出ている。

パーフェクト・ストレンジャー Perfect Stranger
  パソコンの小ネタで観客を振り回しつつ、「そんなことはどうでもいいんだよ」とすっトボける件のラスト。驚きを通り過ぎてあきれてくる。登場人物を全て浅く描きすぎたのがそもそもの失敗か。もっと伏線を!

パイレーツ・オブ・カリビアン:ワールド・エンド Pirates of the Caribbean: At World's End
  裏切ったり仲間になったりはいつものこと。各人物の背負うものが深刻な割りに解決手段が適当だから、もう筋を追うのはやめて楽しもう・・・にしても、迫力もSFXももう一つ食いが足りぬ。小ネタだらけでは飽きるのだ。

バタフライ・エフェクト The Butterfly Effect
  DVDにて見。日々の醜い部分とご都合主義がいいバランス。「DeJaVu」で喰いが足りぬ分を埋め合わせるまではいかぬが、ラストはなかなか好み。だが、やり直せないから人生は美しい。

バベル Babel
  幼い焦燥が引き起す悲劇、国を境に引き裂かれる愛情、都会に奥深く口を空ける心の溝。収束するのではなく、故意に時軸をずらして見る者の感情の満ち干を増幅する巧みさ。さすがは「21グラム」のイニャリトゥ。

パフューム ある人殺しの物語 Perfume
  フェティッシュの狂気を香りで包んだ異色作。荒稽無唐な筋でも集中が切れないのは、手堅い役者陣と切れ味の良いカメラの手柄。件のシーンは馬鹿馬鹿しくも一見の価値あり。ドイツ作品だが、オチはかなりフランス的。

ハリーポッターと不死鳥の騎士団 Harry Potter and the Order of the Phoenix
  安定して見られる同シリーズだが、今回は伏線がかなり少なくて不満。独裁者面した新教師、新しい仲間、森の巨人などファクターは多いのに消化不足。しかし、ラストの対決のシーンはなかなか手に汗握る。

墨攻 Mukgong
  中文DVDにて見。合戦シーンは迫力があり、計略や夜襲の描写など見所は多い。しかし肝心の主人公の心の動きがボヤけている。初めから悟っていたのか、戦いの内に悔悛したのか。敵方の存在感も今一つ。

ボラット 〜栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習〜 Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan
  ヤグシェマッシュ!導入でさっさとジョークと分かり、右脳のノリで見始めるが、途中から左脳の動員を余儀なくされる。最後まで映画の底辺は下品なまま、確信犯的な筋はちゃんと機能している。チンクイエ。

マリー・アントワネット Marie Antoinette
  一見「時代物大作」だが、序盤から妙なテンポで進む。やけに女性視点が多いなと気付けば、なるほどのS.コッポラ作品。描写の疎さや盛り上げるプロットの物足りなさに不満は多いが、退屈とは無縁の愉快な映画。

マンダレイ Manderlay
  前作の良いところを残しつつ手法はグレードアップ。ヒロインが前作より愚かなのは「?」だが、こちらの方が映画として面白い。平等と自由に曝されることに、真の意味で耐えられる人間が一体どこにいるのか。

ミス・ポター Miss Potter
  AA機内で見。19世紀のロンドン・階級社会と男女差別・美しい湖水地方など素晴らしい背景の中で、クセのある女性を演じるR.ゼルヴィガーが最高のパフォーマンスを見せる。実話なので扁平な筋立ては致し方なし。

無間道2 無間序曲 Infernal Affairs 2
  DVDにて見。あのスパイ同士の暗闘から3年、物語は過去に遡る。両者のボスの対峙と邂逅のいい塩梅。新出の先代マフィアと同僚刑事も存在感を出して話に厚みを添える。結末を知っているのにこんなに面白いとは!

無間道3 終極無間 Infernal Affairs 3: End Inferno
  DVDにて見。3部作の色々な謎の回答編。「初心者お断り」とばかりに、話の時間軸は木っ端微塵。生き残ったA.ラウの幻覚シーンも重なり混乱するばかり。「〜2」はあんなに骨太なのにね。

もしも昨日が選べたら Click
  本国でウケたのは、近所付き合いとか日本人との仕事とか現代アメリカ社会のそのままを上手く切り取ったからなのだろうか?日本人の私が見たら、いわく「下品なドラえもん話」。結末も想定内。

山の郵便配達 Postmen in the Mountains
  1999年作品。DVDにて見。変容する中国を上手く切り取る作品は多いが、本作も例に漏れず。巧みな役者が細かい心の動きを発露すれば、奇抜な展開を見せる必要もないことを能弁に語る珠玉の一作。

リトル・ミス・サンシャイン Little Miss Sunshine
  各々悩みのある家族が絆を取り戻すという普遍的テーマ。筋に驚きはないが、深刻さと笑いのバランスが本作の肝。しかし個性的な役者と丁寧な描写が積み上げた、あのラストに食いが足りぬと思うのは贅沢か。



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