直線上に配置

Cinema 2004年


21グラム 21grams
  前半混乱するが確信犯的な構成の難しさに突き放し、まずは3人の役者の演技に酔いしれてみる。特にヒステリックに叫ぶN.ワッツに「いい女優だなぁ」と心服。そして収束していく見事なストーリィ。もう一度見たくなる。

アイ、ロボット i, ROBOT
  ロボットが隣人のように歩き回る社会描写が十分説得性をもつのは、観る側の土壌が固まっただけではない。控えめな小道具、シンプルな筋立て、共感の湧くW.スミスの演技。ただのアクションでは留まらぬ秀作。

ヴァン・ヘルシング Van Helsing
  ドラキュラや狼男など有名古典の怪物を引いているわりには、主役にそれに匹敵する雰囲気も蹴り飛ばす魅力も足りない。テーマもなく単なるモンスターハントになった子供だましを冒険活劇とは呼べないだろう。

アイコン ヴィレッジ The Village
  M.N.シャマランは、今や「秘密」で売ろうとする監督ではない。愛とか絆とか普遍的なものをスリラーの切り口で見せたいだけなのだ。役者は揃っているのだから、もっと描写にこだわって良い。妙な「オチ」はもう要らない。

オーシャン・オブ・ファイヤー Hidalgo
  Native AmericanとMuslimを繋ぐのはかなり強引だが、長丁場のレースという単調な筋を何とか退屈なく仕上げている点は評価。一方、砂漠の映像は文句なく素晴らしく、SFXも最小限で好感。「行儀の良い」映画。

華氏911 Fahrenheit 9/11
  大統領のマヌケな会見のカットバックなど笑わせるシーンはあるが、前作のような突き抜けたトーンはなし。しかし9/11の事件直後のブッシュの行動やラディン一族の出国許可など奇妙な事実の連打には目を離せない。

感染 Kansen
  あの不可解な「モノ」の描写の陳腐さは、「パラサイト・イブ」の二の舞か。個性的な登場人物、「キツネ面」、「色」、最後のオチ・・・パーツは面白いだけに悔やまれる。夜間の病院は、何もなくても普通に恐いよ。

キューティー・ハニー Cutie Honey
  馬鹿馬鹿しくもキャラを前面に押し出してテンポで勝負。アイドル映画に陥る所をカット割りでかわしたり努力の跡。インドやタイのおバカ映画が頑張る中、「ちゃんとした技術ならここまでやるぞ」的な日本オタクの意地か。

キル・ビルvol.2 Kill Bill vol.2
  vol.1に続き、結局好きになれなかったこのシリーズ。「バカ映画」として観るには今回はあまりにパワー不足。あれだけ言葉でしか筋を説明できないのは、もはや技量不足では?結末も最悪に興冷め。どこが面白いんだ?

キング・アーサー King Arthur
  ファンタジーを期待してはいけない。騎士達の格好良さを映像でなく感情移入で見せたのは大正解。一方、アーサーの「古き良きローマ」の喪失感、3つの陣営の間で何故戦うのか、もっと描写が欲しかった。惜しい。

コールド・マウンテン Cold Mountain
  西部訛りでグイグイ引っ張るR.ゼルヴェガーはさすがだが、何故こんなに退屈なのか?N.キッドマン、J.ロウ共に「キレイ」役の時ほどの輝きがなく、ロマンスの説得力も希薄。序盤の戦場の悲惨さは特筆に価するが。

ゴシカ Gothica
  精神分析サスペンス的に開幕するも、中盤から不都合な部分を全て超常現象に押し付ける脆弱な脚本。「呪怨」のような不可解な恐怖でも、「アザーズ」のような謎解きでもない。感情移入も爽快感も重みもない。

殺人の追憶 Memories of Murder
  韓国映画は、いつも邦画以上に「真面目さ」が心に刺さる。しかし本作は、実在の未解決事件が題材のせいかカタルシス不足。中盤まで続くコメディ的な誤捜査の繰り返しは冗長な印象。役者は良いが、ちょっと惜しい。

サバイブ・スタイル5+ Survive Style 5+
  脈絡のないキッチュな筋立てで観客をパニックにさせるのはさすがに30分が限界。個々の話は面白いのだから、5本の短編オムニバスにしても良かったのでは?CM出身の作り手の限界か・・・。でもキョン2はかわいいね。

スイミング・プール Swimming Pool
  歳を食ってもC.ランプリングの美貌は健在。一方、それまでの流れからは全く予想できない角度から飛んでくる結末。フレンチ独特の唐突さとミステリーの組み合わせなのか?伏線が解けるわけでもなし・・・無責任だ。

スパイダーマン2 Spider-Man2
  列車上でスリルを増すアクションは既に古典だが本作は必見。空中ブランコもパワーアップ。ただ、主人公の苦悩のに比して、直近(恋人・友人・敵)の気持ちにのめり込めず。結末も疑問符。叔母さんが唯一の救いかな。

スクール・オブ・ロック The School of Rock
  「天使にラブソングを」などこの手の話はやりつくされているが、前半の空回り加減は度を過ぎてちょっと痛いほど。その分後半の爆発は爽快。強いて挙げれば、ちょっと子供達が従順過ぎるのが惜しい点か。

ソウ Saw
  開幕から締め付けるような緊迫感。ツボに入る設定に加え、巧みなミスリードにうまくやられたという感じ。しかし、肝心のラストなど新人監督らしいちょっと荒削りな感もあり。尺が少し長いか?

タイムリミット Out of Time
  開放的なフロリダという舞台がダメなのか、D.ワシントンの追い詰められていくプロセスが小ネタの稚拙な積み重ねだらけで実にウソ臭い。ラストの真剣さまで白けてしまう。ミステリーとしても刑事物としても中途半端。

アイコン 箪笥 A Tale of Two Sisters
  絵は美しく、映画としての出来は○。しかし、ミスリードを誘うホラーシーンを挿し込みながら、どこかで見たような筋書き。終盤手間をかけてミステリーの謎解きをしており少し救われるが、「怪奇現象」頼りは残る。残念。

ディープ・ブルー Deep Blue
  「さすがはBBC!」と言わんばかりの動物映像の数々は、極めて美しい。貴重さも感じられ、色々と得した気分になれる。シャチの襲撃など自然の厳しさの描写もあるが、映画としてはどうも平板になるのは仕方ないか。

テイキング・ライブズ Taking Lives
  セブンあたりを意識しているのか?いい役者が集まっているものの、犯人の異常さ・A.ジョリー扮する捜査員の推理・双方の駆け引き・・・何を描きたいのか中途半端。結末で目指していたどんでん返しも盛り上がらない。

ドーン・オブ・ザ・デッド Dawn of the Dead
  開幕2分でいきなり殺戮開始。お・・・やる気か?と思いきや、さっさと篭城に入り人情話を混ぜ込んで、テンポは消滅。しかしそこに重みはなく、どっちつかずのまま悪趣味な幕引きへ。敢えてリメイクにした理由は不明。

トロイ Troy
  華麗に相手を捌くB.ピットは格好いいが、群像劇にしては明らかに各人の掘り下げ不足。取ってつけたようなロマンスは嘘臭く見てられない。有名な史実に基づくため脚本が制約されるのはわかるが、演出まで・・・。

パッション The Passion of the Christ
  キリスト受難劇。グロテスクな描写が多いのも已むなしか。鞭打たれ十字架を背負う間に入る挿話は、聖書をかじった程度の自分にとっても十分心を揺さぶるものだった。「おかえりなさい、M.ギブソン」と言いたくなった。

アイコン ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 Harry Potter and the Prisoner of Azkaban
  ダークな舞台設定が良い。「主人公の命を狙う脱獄囚」という美味しい素材を使いながら、致命的な説明不足がドラマを軽くしており残念。2作目で魅せた伏線の収束は今回も見られるが、ちょっと食いが足りない。

ビッグ・フィッシュ Big Fish
  遠くから「I Love You」と叫ぶE.マクレガーの姿は、MoulinRougeにも似て何と似合うことか。前半の散発的なおとぎ話を一気に収束させるラストへのくだりは定番中の定番なのだが、不覚にも泣いてしまった。

ファインディング・ニモ Finding NEMO
  今日のCGは手描きアニメの代替でなく、魚という滑らかな物体を描写するのに最適な手法であることを実感。ストーリィはお約束だらけだが、子供ではなく、その親が冒険している所がヒネッてある。十分楽しめた。

マッハ!!!!!!!! Ong Bak
  ムエタイの達人によるワイヤー・CGを使わない骨太なアクションに、全編通して驚かされる。一撃一撃が疾く、そして痛い。シンプルな筋書きもマッチして良い!「古き良き」カンフー映画の後継者はこんなところに居た。

ミスティック・リバー Mystic River
  「もう一つのスタンド・バイ・ミー云々」というふれこみは全く不要。本作が引きずるドラマはもっと深く暗い。旧知を疑わねばならない口苦さの描写は重く心を打つ。人物が多く、その把握に集中が途切れるのが難点か。

予言 Yogen
  始まるまで「恐怖新聞」ネタとは知らずに見。謎を追跡する拙いプロット、離婚した二人の邂逅の嘘臭さなど、眠くなってしまう(二本立てはキツい)。何にせよ三上博史の叫び声だけで元は取れる。半額だしな。

ラヴァーズ House of Flying Daggers
  相変わらず自然と美術の調和が美しい。序盤のZ.ツィイーの舞踏にはため息が出る。しかしアクションが前面に出過ぎて、微妙な心情の動きを読み取らせる間が足りなかったのでは?肝心のラストも疑問が残る。

レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード Once Upon a Time in Mexico
  A.バンデラスの十八番。とにかく銃を撃ちまくり格好いい。J.デップは小ネタの連発で笑わせてくれるが、後半はちょっとベタ過ぎか。2重スパイや裏切りだらけで筋は追いにくいが、それを求める必要はない。

ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 The Lord of the Rings: The Return of the King
  長編原作の長尺作品にも関わらず退屈さは皆無。あの冒頭は旨くやっているし、長い戦いのシーンには心地よいメリハリが。そして、滅びの山にたどり着く二人のホビットに目頭は熱くなる。今年何がこれを超られるのか?

ロスト・イン・トランスレーション Lost In Translation
  サブカルの描き方やカラオケでの音痴のバツの悪さなど、微妙な現代日本の姿を捉えて秀逸!と思いきや、唐突に京都の風景に頼る安易さも。結局外人による外人向け映画なのか?と少し残念。ラストは気に入った。



直線上に配置