- 200305 -

- 05月01日 -
「さあ、新たな月の始まりです。心を入れ換えて、素晴らしい月にしましょう。」と、鏡に向かったところで、その先にいるのは、何とも冴えない顔をした男が1人、つまりは僕なわけですけれども。そのような一言で、素晴らしい月になるのならば、僕は毎月笑って過ごしていられるのでしょうけれども、現実はそう上手くはいかず、また憂鬱な日々に流されていくのでしょう。何が起因して今の心情になっているのかはわかりませんが、一つだけ確かなのは、今の僕には苦笑いすらもできないということであります。もう、何もかもがくすんで見える。さようなら。


- 05月02日 -
今日から旅に出てきます。4日には戻る予定です。自分を見つめ直すとか、そういう表現を用いたらきっと、格好いいんだろうなあと思いますけれども、単に今この現状に嫌気が差しているだけなのであります。新しい土地で、僕は何かを見付けることができるのでしょうか。見付けられなかったのならば、また、憂鬱な日々の繰り返しになってしまうことは、間違いありません。さようなら。


- 05月05日 -
ゆっくりと、地元の地を踏みしめた。とうとう帰ってきたわけであります。思えば、長い道のりでありました。しかし、僕は帰ってきたのです。

『昨日未明、中央自動車道において、追突事故がありました。死亡したのは都内在住の大学生ということです。』

あれ、体を忘れてきたみたいだ。取りに戻るのも面倒だから、このままでいいかなあ。さようなら。


- 05月06日 -
非現実から強制的に現実に戻された感が拭えませんが、僕は東京に戻って来ました。やはり、関西で流れる時間と言うものは、東京のそれとは異なり、ゆっくりと流れているように思えます。土地柄とでも言うのでしょうか。同じ時間であるにも関わらず、忙しなく過ぎていく東京の時間は、どうにも空しく思えて仕方ありません。そんな時間の中に僕は、今日もただ、立ち尽くすばかりであります。さようなら。


- 05月07日 -
寒い冬を終え、ようやく暖かい春を迎えることのできたという矢先に、このような灼熱が待っていようとは、誰も予想だにしなかったことでしょう。大体、日本は海に囲まれているクセに何でこうも暑いのか。簡単に例えるのであれば、レモンスカッシュに浮かぶレモンよろしく、周りに冷やされ涼しくなるのではないのでしょうか。おかしい、何かがおかしい。と、言っている自分がおかしいことにようやく気が付きました。ランニング姿で北極に向かおうと思います。さようなら。


- 05月08日 -
じんわりと夕暮れが迫ってきて、その、暮れるか暮れないかの瀬戸際の雰囲気が好きなのです。陽は役目を終えるかのごとく、西の空彼方へ向かっています。僕は何を求めるでもなく、その方向を眺め、ただ押し黙っているだけであります。涼しい風が僕の横を吹き抜け、その風が「今日もお疲れ様」とでも言ってくれているかのように、優しく感じます。今日もまた、日が暮れます。さようなら。


- 05月09日 -
雨戸を風が叩いております。まるで、僕を誘っているかのように、雨戸を叩いております。戸外に出たところで、僕を待っている者の姿はなく、ただ、闇が広がっているだけであります。僕を待つ者など、結局はどこにもいるわけなど、ないのです。さようなら。


- 05月10日 -
今日こそは、そう、今日こそは予てからの野望を果たすべく僕は駅のホームに立ちました。野望とは、つまり、端的に言うなれば「走る電車に飛び乗る」というものなのですけれども、如何せん、電車の速いことと言ったら無いわけで。タイミングが掴めず、数本を逃した後、僕はいざ飛んだわけであります。やった!成功!と、思うも、単に各駅電車が止まっただけでありました。

僕の淡い達成感は、無残にもかき消され、呆然としたままの僕は、駅員に連れられ、駅長室で撲殺されてしまいました。なんだかなあ。さようなら。


- 05月11日 -
「ただひたすらに走り、行き着いたその先に見えた光景は、地獄の有様でした。」

『なんだそれ?』

「いや、今度小説を書こうと思ってさ。最初の書き出しなんだよ。」

『その先は考えているのかい?』

「いや、それが全く思い浮かばなくてね。」

『なんだい、それじゃあ全く駄目じゃないか。』

「自分で言うのもなんだけれど、地獄の有様ってのが想像できなくてね。」

『なんだ、そんなの簡単なことじゃないか。』

「どういうことだい?」

『こういうことさ。』

その瞬間、彼は近くにあった灰皿で僕の頭を殴りつけました。僕は意識を失い、念願の地獄の有様を見ることができました。彼には感謝をすべきなのでしょうけれども、如何せん、現実の世界に帰る手段がわかりません。さようなら。


- 05月12日 -
人は結局のところ、孤独なわけでありまして。それを埋めようという発想自体が誤っているのであります。底に穴の開いたコップにいくら水を注いだところで、溜まるわけがありません。見せかけの友情ごっこなど反吐が出ます。馴れ合いなど、反吐が出ます。人は皆、孤独なのです。僕も。あなたも。さようなら。


- 05月13日 -
僕の家の近くの魚屋は、田舎のくせして、「一見さんお断り」を掲げている強気なお店です。不況とか、そういうのとは無関係な世界が、そこにはあります。さようなら。


- 05月14日 -
最終面接で落ちました。もう、こんな世界いらないと心の底から思います。さようなら。


- 05月15日 -
日々の喧騒から逸脱しようと、遂に街を飛び出した僕の目指したのは心のオアシスでした。こんな沈んだ世の中だからこそ、気持ちを盛り上げていかなくてはなりません。そういったわけで、ここ「スナックオアシス」に来てみたものの、ビール2杯で10万円とは如何な了見か。これ、そこの君、責任者を呼びなさい。

現れたのは、身の丈2メートルの怪物でした。僕はその日、裸で家路に着きました。この世の中の全てが憎い。さようなら。


- 05月16日 -
人の、生まれながらにして携えている能力は限られておりまして。中には万人に一人の才能であったり、逆に万人が持っている能力であったりと、様々であります。そして、この僕の能力とは、スプーンを手を触れることなく曲げられるという能力であったりするわけであります。皆さんにお見せできないのが残念でなりません。さようなら。


- 05月17日 -
「武士は食わねど、高楊枝。」、この言葉は、いくらお金を持っていなく、食事にありつけなかったとしても、楊枝だけは高いものを使い、見栄を張っていこうではないかという教えですけれども。この言葉に深く感銘を受けた僕は、楊枝を口に咥えながら街を闊歩していました。するとどうでしょう?街をすれ違う人々は僕に釘付けなわけですよ。いい気になった僕は、道中足を滑らせ、転んだ際に楊枝が脳を貫いてしまいました。皆さん、見栄を張ると痛い目に遭いますから、何卒ご注意の程を。さようなら。


- 05月18日 -
鬱であった期間も過ぎ去り、今や清々しい気分のまま毎日を送っている僕ですけれども。しかし、清々しいことには変わりないのですけれども、如何せん、生活にメリハリがないのもまた、事実でありまして。昼過ぎに目を覚まし、夜中まで起きてインターネットに興じているといった、愚の骨頂とも言うべき己の行動に些か腹を立てた僕は、遂に重い腰を上げ、我が家を後にしたわけであります。向かった先は、近所のコンビニでありまして、雑誌と煙草を買って帰りました。僕は引き篭もりではありません。それだけは言っておきます。さようなら。


- 05月19日 -
僕の存在意義など、ミジンコ程度のものでしかなく、誰からも必要とされていないことは明白であります。仮に誰かが『必要としている』と、言ったところで、それは形式的に言ってくれているだけでありまして、心の底には、やはり僕の名などあるわけもないのです。一体僕の存在の意義とはなんなのでしょうか。今日も、その答えを見付けることができずに、日は暮れます。さようなら。


- 05月20日 -
人の心と言うものは、何とも卑しく、そして浅ましいものでありまして。明日は我が身なれども、そのことに全く気付かずに、他人の不幸を売り物にして下世話な話に花を咲かせております。嗚呼、なんとも滑稽な図であることか。君達は彼の人の声が聞こえないのであろうか。すすり泣くかのような、か細いあの声を。雑踏の中で、囁いているかの如き、か細い声を。しかし、僕とて、自分もそのような下らない人間の類であることに気付かざるを得ず、ただただ、落胆の色を隠せないのでありました。さようなら。


- 05月21日 -
急に、ZIPPOの名前の由来が気になったので、調べたところ、友人の開発したZIPPER(チャック)という名前の響きが気にいったから、多少変えてみたんだそうです。最近していることと言えば、こんなことくらいです。地球なんか、滅んでしまえばいい。さようなら。


- 05月22日 -
そういえば、皆様の頭の片隅に残っていないような気がしますけれども、僕の体内には寄生虫の類が無数に居住しておりまして。そのどれもが根はいいヤツらなのですけれども、如何せん、所詮は寄生虫の類でありますから、僕に不利益なことばかりをしでかすわけであります。今まで甘やかしていた僕がいけないのですけれども、ここできちんと灸をすえてやらねば、ヤツらもここぞとばかりに頭に乗ってしまうので、僕はそれはもう、凄い勢いで殺虫剤を吸引したわけであります。寄生虫は見事に他界し、それに便乗した僕も他界したわけであります。さようなら。


- 05月23日 -
最近、日々の生活に全く輝きを垣間見ることのできない僕なのですけれども、皆様どうお過ごしでしょうか。日々の生活を輝かせるための手段としては何かに打ち込むといったことが挙げられますけれども、如何せん、僕の趣味と言えばインターネットと漫画を読むことに尽きるわけでありまして、輝くというよりもむしろ、くすんでいく一方であります。しかし、この現状を変えたいという気持ちに嘘偽りは無く、脱日常を図ることを決意した僕は、外気に触れるべく、外に飛び出したわけであります。その刹那、急発進した隣の家の車に轢かれ、挙句の果てには加害者である隣の家の人は、隣の家の癖に逃げてしまう始末。ええ、割と近所付き合いはうまくいってません。さようなら。


- 05月24日 -
帰宅時にコンビニに寄ったところ、一人のお客様がレジで煙草を買おうとしてりまして。店員さんは、何やら洗い物をしていたのか、流しの前にいたわけであります。お客様は非常に酔っていらっしゃいました。

「おい」(お客様)

『少々お待ちください(手を拭いている)』(店員)

「おい、この店は客を待たせるのか」

『しょ、少々お待ちください』

「責任者を出せ」

と、急展開が目の前に繰り広げられました。結局、店長を呼び出すことになったらしく、そのお客様は店長の到着を待つことになりました。どう考えても、店長を待つ方が時間的には長いと思うわけでありますが、お客様の思考の中ではそちらの方が短く感じた様子でありました。これ程心が狭い人を初めて見たような気がします。さようなら。


- 05月26日 -
延々と続く張りの無い生活の中で、僕は何も見つけることができず、何も得るものなどなく、それでも尚、何かに期待しながら生き延びているわけでありまして。世間一般の引き篭もりとは若干なれど、一線を画している僕ですが、大意として捉えるならば、僕もやはり引き篭もりの一種に相違ないわけでありまして。日がな一日、何もせず、家にいるばかりであります。自分の価値とは果たして何なのでありましょうか。家にいるばかりの僕にどの手度の価値があるのでしょうか。こうした心の叫びも、内に秘めたまま、やはり今日とて家に引き篭もる僕でありました。さようなら。


- 05月27日 -
「わあ、綺麗。」

『ここからの眺めは素敵でしょう。』

「全くですね。あの赤い光が海に映えてますね。」

『ほう、良いところに目を付けましたね。』

「色々な大きさがあるんですね。」

『ええ、まあ、個性があると言いますか。』

「どういうことです?」

『あれはですね、つまり、ここで残念ながら亡くなってしまった方々の霊魂のようなものでして。』

「はあ、入水ですか?」

『いえ、それが他殺なんですよ。』

「え?なんでこんなに?」

『ここの美しい景色を利用する手口の殺人鬼がいるんですって。』

「へえ、そういえば、今日は何で私を誘ったんですか?」

その日、海の上の赤い光が一つ、増えたと言います。さようなら。


- 05月28日 -
雨が降っていると、どうしても憂鬱な気持ちになってしまいがちになりますけれども、この雨が、硫酸だったらとか、そういうことを考えていると少し気が楽になります。面白いことばかりが起きる世の中ではありませんので、毎日を楽しみにしているわけではありませんけれども、世の中にはやはり、毎日を楽しみにしている人がいて、ある種希望を抱いている人もまた、いるわけでありますから、あまり声を大にしては言うことはそういった人達に対して失礼に値します。しかし、依然として僕の目に映るこの世の中はどうにもこうにも、くすんで見えているのも事実であります。輝かしく見える日はいつ訪れるのでしょうか。それは誰にもわかりません。さようなら。


- 05月29日 -
天気も良く、絶好のお出かけ日和にも関わらず、家に篭ってしまう自分を何とかして殺害しようと思い、用意したものは荒縄(絞首)とナイフ(手首)なわけでありまして。しかし、よくよく見ると、荒縄ではなく、蛇だったり、ナイフかと思ったら安全カミソリであったりという事情から、殺害には至りませんでしたが、蛇に噛み付かれたために敢え無く死には至ったわけであります。何れにしろ、結果は一緒になりました。さようなら。


- 05月30日 -
ふと気が付くと、5月もまもなく終焉を迎えてしまうわけでありまして。1年の半分がそろそろ過ぎてしまうわけであります。そう考えると、余りにも時間というものは限られていることが露骨にわかってしまいます。残る余生をどう過ごすか、そればかりを考え、夜な夜な眠れない日々が続くわけであります。

そうか、生きているから考えてしまうのか。さようなら。(屋上から身を乗り出しながら)


- 05月31日 -
今日、遂に僕の脳内の寄生虫が仲違いをしてしまいました。事の発端は単純なことでありまして、家を出る際の初めの一歩を右足で行うのか、それとも左足で行うかであったわけなのですが、原因はともかく、右足派と左足派で全面戦争に発展したわけであります。

勝負の方法は協議の末、野球に落ち着いたのですけれども、これがまた五月蠅いのであります。やれ「ピッチャー、ビビってる!」だの、「ツーアウト、ツーアウト!」などと、高校球児さながらの熱戦が僕の脳内で行われたわけでありまして。最終的には右足派の5回コールドで勝利だったわけですけれども、納得のいかない左足派は次回はサッカーで挑戦するそうです。今、僕の脳の中では球技がアツいみたいです。さようなら。

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