- 200303 -

- 03月01日 -
何も見えない、何も聞こえない。そんな状況の中で僕が唯一できることと言えば、何かを思慮することだけでありまして。この「何か」というのも、実に多岐に渡るので、一言では言い尽くすことはできませんが、どの思慮も最終的には「死」という一文字に終結を見る辺りがなんとも僕らしくて素敵だなあと、最近よく思います。さようなら。


- 03月03日 -
睡眠薬の多量摂取により、意識不明となった僕は救急車を呼ばれました。サイレンの音が近付いてきたので、死ぬとわかっていながら炎に飛び込んでいく蛾のように、僕はサイレンの音に近付いて行きました。僕のために駆けつけた救急車によって跳ね飛ばされる僕は、あたかも、フライパンの中のオムレツのごとく、その身を宙に浮かせました。地に叩きつけられるその間際、僕の目が捕らえたものは、救急隊員の『やっちゃった!』の顔でした。いや、『やっちゃった!』じゃないから。さようなら。


- 03月04日 -
僕が夜道を歩いておりますと、僕の頭上に流れ星が瞬きまして。何を思ったのか、僕は「歴史に名を残したい」と、今考えると奇妙な願いをしたわけでありまして。すると、僕の体がみるみる内に輝きまして、書物にその姿を変えました。その名も「日本の歴史」。おいおい、まるで見当違いのことをしてくれるじゃないか、と思っていましたところ、通りを歩く誰かの足音が聞こえてきまして。「おうい、ここだここだ。助けてくれないか。」と、助けを求めようとしたのですが、いかんせん、僕は書物の身。声どころか、音すらも出せない状況。道端にある「日本の歴史」など、誰の関心も買うわけもなく、僕は、可燃ごみの日に、焼却された。


- 03月05日 -
昨日は渋谷〜原宿間を行ったり来たりしてました。軽くお洒落さんのような挨拶です、こんばんは。しかし、相変わらず人の多いことこの上ないわけでありまして、僕はと言えば、あまりの人の多さに頭痛、吐き気、死臭を催していたわけなんですけれども。この際、仕事以外の目的で渋谷〜原宿に来る人を減らすために入場料とか取ってもいいんじゃないかなあって、そう思います。1人頭10万円くらい。そうすれば、都の財政も潤うし、僕も人の多さに苛立つこともないし、一石二鳥じゃないかなあ。え、僕?入場料取られるくらいなら行きませんよ、さようなら。


- 03月06日 -
僕の目に映るこの世の中の出来事はあたかも劇中の出来事のように、時折残虐であります。きっと、世の中が平穏無事に済んでいるように思えるのは、この残虐性のおかげであるのではないかと思うわけでありまして。僕の不幸の代替品として、誰かの幸福が。誰かの不幸の代替品として、僕の幸福がある、つまりは持ちつ持たれつの関係があると僕は思うわけであります。そういうわけで、僕以外の人類、皆不幸になってしまえばいいと思います。さようなら。


- 03月07日 -
続々と会社説明会や、面接の日程が決まってまいりまして。僕の自由な時間が徐々にですが、少なくなってきています。しかし、隙間無く埋まっていく僕のスケジュールとは裏腹に、一向に僕のヤル気は低迷したままでありまして。「どうせどっか内定くれるよ。」的なことを考えていたりします。大体何がいけないって、この不況がいけないわけでありまして。この不況が無ければ、今も昔と変わらず『大卒者いらっしゃーい!』のはずであります。不況が憎い!この国が憎い!

と、先日行われたセミナーで公言していましたら、強制退去を命じられました。どうやら無職に一歩近付いたようです。さようなら。


- 03月08日 -
こんな世界なんか、滅びてしまえばいい。さようなら。


- 03月09日 -
昨日は天気が良かったので、渋谷に行ってまいりまして。目的は「友人のベーグル屋にお邪魔して、尚且つ、居座ってやろう」という、迷惑この上ないものでありました。渋谷の地に着いた途端に僕の腐った魚のような目は輝きを取り戻したわけなのですが、相も変わらず彼の地に群がる人々を、後方より蔑むかのように眺めておりますと、何やら彼らが人間ではない、別の生物のように思えてきました。上京したかのような立ち振る舞いの少女達、あからさまに場違いな雰囲気を醸し出している少年達など、実に多様な種類の生物がいます。いっそのこと、定期的にセンター街の地面を割り、彼らを落としてみてはどうかと思うわけであります。原宿のGAPの前でもいいです。さようなら。


- 03月10日 -
日増しに弱っていく僕の精神もそろそろ、限界と言いますか、数年間履き続けた靴の底のように磨り減ってしまいまして。話の最中の笑顔も、どことなく作り笑いの感が否めません。その場の、その雰囲気を取り繕うとするかのような、作り物の笑顔では、決して相手を満足させることなどできるわけもなく、それを察知した僕はまたしても自己嫌悪と言う罠に陥っていくのでありました。いっそのこと、笑顔のまま瞬間接着剤で固めてしまってはどうだろうと考える自分に、乾いた笑いが込み上げてくるのです。さようなら。


- 03月11日 -
家に篭って一日中ベッドの上で生活していますと、なにやら世間での出来事は夢の中の出来事のような錯覚を覚えます。だからと言って、この生活が苦というわけでもなく、ただただ僕のみを取り残して流れていく時間が憎らしいのであります。明日というものに何の希望も見出せない僕は、舌を噛んで自らの命を絶とうと思います。さようなら。


- 03月12日 -
『我が業界は依然として先行き不透明なままである。このままでは、強い経済基盤を持つ外資系の参入により自国ブランドは退廃してしまうのは明らかである。そこでだ、何かいい案はないだろうか。こう、我が社だけのオリジナルな要素を盛り込んだ企画を提案して欲しいのだ。効果を得られたならば、それなりの地位を用意するつもりなのだが。』

「社長!」

『おお、早速か。』

「館内放送に犬笛を用いてみてはどうですか?従来の考えを全く覆す画期的なアイディアだと思いますが。」

『おお!全くだ!考えてもみなかったぞ。よし、早速やってみようじゃないか!』

そして、店内は静けさに包まれ、野良犬が店の外を囲んだ。

『お前はクビだ。』

店の外に放り出された僕は、野良犬の格好の餌になった。さようなら。


- 03月13日 -
早朝の空気が好きなんです。何もかもが透き通っているかのような、あの空気が。「綺麗にありたい」と願う僕の心の投影なのかどうかは分かりかねますが、感情に訴えるものがあるのです。そして今日も、早朝を心待ちにしている僕がいるわけなのです。

僕は、完全な朝型です。(一回転してます)


- 03月14日 -
目を覚まし、虚ろな目で起き上がると、またいつもの日常がそこにありまして。だからと言って、非日常を求めているわけではないのですけれども、何やらもどかしさは隠し切れません。「普通」が一番難しいのにも関わらず、それを知っているくせに、「普通」を嫌悪している自分に驚きます。嗚呼、今日も変わらず僕はここにいるのだと、そのことに何の感慨もなく、「当たり前」に感じている僕はきっと、小さな幸せすらも「当たり前」のこととして気付かずにいるのだろうなあとか、そう思います。

小さな幸せには気付かずに、小さな、ほんの僅かな不幸せには敏感な自分がやたらちっぽけに感じたりします。さようなら。


- 03月16日 -
花粉症のせいで鼻水が止まりません。僕の部屋に聳え立つティッシュの山を見上げると、どうしても感慨深くなってしまいます。1人の人間からどうしてこのような大量の液体が出てくるのか。人間に8割が水分で構成されているという話もまんざら嘘ではないような気がしてきました。

聳え立つティッシュの山を飽くことなく眺めておりますと、僕の登山家魂がメラメラと燃え上がりまして、登ってみようではないかと思った次第であります。彼の有名な言葉にもありますが、「そこに山があるから登るのだ」というのは、正にその時に僕の心境を表しているものであったわけであります。

登り始めて2時間後、僕は遂にティッシュの山の頂に到着しました。感極まった僕は、その場でティッシュに火をつけ、ティッシュの山との心中を無事果たすことに成功しました。さようなら。


- 03月17日 -
ぼんやりと瞼を開けると、そこには薄日が差しておりまして。幻想的な気分に浸ること数分、現実に帰ってみますと、やはりこの世の中は醜いことばかりでありまして。テレビを付けようものならば、己のことは二の次で他人の粗探しを売り物にした番組が溢れ、街に出てみると、他人を馬鹿にするような会話が溢れております。自分がその輪に入ろうものならば、それはそれで違和感は無いのかも知れませんが、そのような気持ちは露ほども無く、甚だ呆れている僕がいます。きっと、人は誰かを自らの下位に置くことでしか自身を保てないのではないかと思います。しかし、それはきっと僕自身も気付かず内に、そう、無意識の内に行っているのであろうものですから、そのような行為に対して、ただただ微笑んでいることしかできないのであります。何も考えないでいられるようにできる術を、僕はまだ知りません。さようなら。


- 03月18日 -
3時間近くもかけて父親の疎開先まで出かけてまいりまして。そもそも、電車で3時間という、利便性の欠片も見当たらないこの所業に、ブッシュも舌を巻く始末であります。そして、その疎開先で僕がしたことと言えば、父親が酒を飲めないのをいいことに、日本酒やらビールやらを勝手に飲んでいただけでありまして。『何をしに行ったのか』と問われれば真っ先に「父親の顔を見るためだけに!」と、不純物無しの嘘をばら撒こうと思っている次第であります。フセインも舌を巻きました。今日は時事問題をテーマにした日記です。さようなら。


- 03月19日 -
とにかくもう、いてもたってもいられない衝動に駆られた僕は、家を飛び出したわけであります。道行く者は振り返り、車からはクラクションを鳴らされ、けれど、僕の衝動は誰にも止めることはできません。走る、走る、走る。どこまでも走っていく僕に次第に変化が生まれてきました。それは、新しい快感の発生です。所謂脳内麻薬の類なわけなんですが、走る度に快感が全身を貫くわけなんですね。こう、足の先から頭のてっぺんまで。もうそれを体験していると、この腐った世の中なんかどうでもよくなってきまして、最終的には、人類皆死んでしまえ、みたいな。みたいな。


- 03月20日 -
今日は初めての面接が行われます。もうね、志望動機とか、全然わかんない。強いて理由を挙げるなら「なんとなくです!」みたいな。というよりも、初めての面接なんで、どういった雰囲気なのかとか、全くわからないわけなんですよ。しかも、僕の兄に聞こうと思って帰宅したら既に就寝中なわけでありまして。完全に僕の希望は絶たれたわけであります。

潔く、明日は欠席とか、そういうことを考えていた僕ですけれども、きっとそれは後味が悪いと思うので、行くだけ行こうと思います。面接官を失笑させてやります。僕はやればできる子なんです!


- 03月21日 -
何がいけないって、この不景気がいけないと思うわけでありますよ。物価の低下に伴う、売り上げの低下、及び、それに伴う給金の低下、そして、個人消費の低下、つまりはデフレスパイラルに陥っている我が国がいけないわけであります。この現状を打開するには、国民一人一人の消費を増加させなくてはなりません。そうすることにより、国の経済は潤い、ひいては、景気回復、最終的には僕の就職決定と相成るわけであります。

そういうわけで、皆さん、僕のためにもっと物を買うといいと思います。今日の面接?色々な意味で一人舞台だったとだけ言っておきましょう。さようなら。


- 03月22日 -
暖かな春の日差しの中で僕は、ただ立ち尽くしておりました。何が原因でそうなのかは、当の本人である僕でさえわかりません。しかし、何をすべきかもわからず、それは例えるならば真っ暗闇のトンネルの前であるかのような、漠然とした不安感が聳え立っていることだけはわかります。進まねば道は拓けないことは重々承知でありますが、そこは人の性と申しますか、何かすがるものを、心の拠り所となるものを探しているわけであります。背中を叩いてもらえば、きっと、前へ前へと進めるのでしょうけれども、その一歩が踏み出せないままどれだけの時間が経ったことでしょう。結局は己しか頼るものはないのだけれども、自分を信じれないままここまでやってきました。しかし、それも今日までであります。僕は今、新しい自分に生まれ変わるためにこの一歩を踏み出します!

こうして僕はビルの上から飛び降り、地上は、僕の鮮血でまみれた。暖かな春の日差しが変わらずそこにありました。さようなら。


- 03月24日 -
真っ白でありたいと願う僕の心は、ついに漂白剤を飲むと言う行動に表れました!こんな世界無くなってしまえばいい。さようなら。


- 03月25日 -
徐々にですが、心なしか暖かくなってきたような気がします。すぐそこまで春はやってきているのですね。僕はといえば、相も変わらず部屋の隅で蹲り、来るとも知れない明日に向かってただただ祈るばかりでありまして。何を祈っているかと思えば、全世界の人々が不幸になればいいとか、地球なんかなくなっても構わないとか、そういった類のことばかりであります。そもそも、地球が存在しなければ、否、人類が存在しなければ下らない揉め事なんか起こらなくても済むのではないでしょうか。何も見えない、何も聞こえない、僕は部屋の隅で蹲ったままであります。さようなら。


- 03月26日 -
雨が降り続いております。微量ながらも、降り続く雨に何故か心が惹かれまして、飽くことなく眺めておりました。眺めていたところで状況は決して変わるわけも無く、むしろ、そのような時間があるのならば自らが行動し、状況を改変するべきであったのかも知れませんが、流れ落ちる雨を見つめていると、心に平静が戻ってくるかのような錯覚を覚えた次第であります。しかし、所詮は錯覚でありまして、ふと我に返るといつもの日常がそこにあり、「この雨が硫酸ならば」と願う僕がいつものようにいました。さようなら。


- 03月27日 -
天気が非常に良く、暖かな日差しが伺えたので、若者の街渋谷に出かけてまいりました。しかし、なんだあの人混みは。春休みという口実を得た上京者が溢れんばかりに歩道を埋め尽くしておりまして。もうね、いい加減にしろと。国へ帰れと。そもそも渋谷=トレンドとか勘違いしている時点で終わってます。さようなら、君達の居場所はここにはありません。

と、彼らの背後からまるで呪詛でも唱えるかの如く呟いておりますと、彼らが一斉に振り返り、あたかも僕を気が違っているかのような目で見られました。日本の教育システムにいささか疑問を感じました。さようなら。


- 03月28日 -
どうにもこうにも頭が痒いと思いました。お風呂には毎日入っている僕なのに、何故こんなに痒いのか。新しい病気にかかったのかと思いましたが、原因は頭皮というよりも、脳にあるのではないかと思いました。痒さにかまけてボリボリ頭を掻いていましたら、終には頭皮を破り、脳漿が外に、飛び出た。さようなら。


- 03月29日 -
じっとしていると、止め処なく僕の脳の中に様々な思考が入り込んできまして。何かをしていないと落ち着かないとは、正に末期症状的な状況なのですけれど、自分が何かをしていることに対していささか充足感を覚えているのも事実でありまして。こういった心の葛藤が尚更僕を苦しめているという事実に驚愕するばかりであります。

極寒の地における分厚い氷の層のように、僕の心は頑ななばかりでありまして。それを一向に快方に向かわせようとしていない僕がいて。そんな自分に嫌気しか感じません。誰かに救いを乞うことはできるのでしょうけれども、人の手を借りた一時の安息など、誰が求めましょう。僕は、僕だけの力でこの状況を打破しなくてなりませんが、一向にそのヤル気が起きないというこの矛盾。こうして僕は今日も眠れない夜を過ごすのでありました。さようなら。


- 03月30日 -
「首を吊るか吊るまいか、それが問題である。」と、僕はそこまで書いて筆を置いた。あたりは夕暮れで、どこからともなく夕飯の支度の匂いが漂っていた。そう、僕は今日、いや、明日にはこの世にはいないであろう。原因は何かと問われれば、様々なことが思い起こされるけれども、いちいち挙げるのも切りがないので、ありきたりの内容をこの遺書に押し込めた。もう、何もかもに疲れたのだ。

闇が街を包み、ほのかに部屋から零れる明かりを頼りに外に出てみた。もうすぐそこまで春が来ているのだろう、いつもの格好では少し暑く感じた。近くの川に架かる橋まで向かい、足を止めた。このまま飛び下りてしまおうと、そう思ったその矢先のことだった。足元に小さな子犬がいた。親犬とはぐれたのであろうか、その子犬は腹をすかせ、僕の足に擦り寄っている。鳴き声もどことなく心許ない。

こんな僕でも、頼ってくれるのかと思うと、少しだけ目頭が熱くなった。こいつにミルクでも用意しようと思い、子犬を抱きかかえ、家路に着こうとした瞬間、僕の体はふらつき、橋から落ちた。幸い、子犬は無事だったのが落ちる瞬間にわかった。何故か安心した僕がいた。僕が最後に思ったことは、僕自身の安否よりも、子犬に明日の糧があるのかということだった。


- 03月31日 -
「僕の主食が睡眠薬で何か迷惑をかけましたか?(逆ギレ)」

『存在が。』

さようなら。

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