おもしろいコラム バッグにナイフを忍ばせて


第6回  バッグにナイフを忍ばせて

ある日、昼食後の皿洗い業をこなしていたら、
テレビから面白そうな番組の声が流れてきた。

内容は近ごろ巷で話題の、出会い系サイトの被害者ドキュメントである。
新聞等でもこの手の被害内容は折に触れて伝えられているが、
テレビの情報は生身の人間が出演して伝えるだけに、説得力と迫力がある。

出会い系サイトの被害者と言えば、深刻な社会現象にもなっている。
京都の女子大生殺人、北海道の10代の少年の人妻殺害、
教師が生徒を高速道路に投げ捨て殺人等、眉をひそめる残酷な内容が多い。

テレビが取材を試みた被害者はまだそこまで深刻な状況ではなく、
むしろ吹き出してしまうような面もあったが、
一歩間違えば残酷な場面展開になるのは目に見えている。

出会い系サイトで結婚相手を探しているという34歳の女性は、
数年間で10人くらいの男性と実際に会い、
最初の男性からしてすでに被害に遭ったという。

その被害内容が、オモシロイというかユニークというべきか。

男性に豪華なディナーに誘われて食事を共にしたが、
彼は自分の分を平らげると女性の分まで手をのばして食べ始めたので、
女性が食べることができたのはサラダとデザートだけ。

そして会計の際に男性の姿は見事に消えていたというが、
ディナーのお代は1万7千円、完璧な食い逃げ被害である。
それにしてもこの男性は何を考えていたのやら、なんともケチ臭い。

その後も女性は他の男性たちと会い続け、かなり怖い目にも遭ったようだ。
その対策として殺されないようにバッグにナイフを忍ばせて会うようになった。

殺されることまでも想定して、結婚相手を探す。
なぜそこまで・・・と空恐ろしくなる。

その後、彼女は外に出て人と触れ合うようになり、
現在は直接相手と出会う機会を得ているとテレビはしめくくっていたので、
それがせめてもの救いだった。

出会い系サイトの被害者は、圧倒的に女性が多いようです。

金髪に染めた若い別の女性は、
出会い系サイトの魅力について次のように述べている。

「自分がなりたいと思っているような人物になれるから」

えっつー!

いつだったか、テレビで女優業の魅力を語っていた、
某女優さんのコメントとまったく同じ!

その女性も、サイトで知り合った男性と実際に会いだまされた。
会社をいくつも経営しているという相手の男性の言葉に
「玉の輿に乗れるかな、うれしい」と、思ったそうだ。

男は「エステも経営しているので高価なメニューをタダできれいにしてあげる」
と女性を喜ばせた。

実際に会ったら、冴えない30男から
40万円ほどのエステマシーンを購入するよう勧められ、契約させられた。

女性は悔しそうに言った。
「あれはきっとエステの営業マンだったのよ」

番組の司会者はコメントした。
「自分もなりたい人物になりきっていたのだから、
 結局は女性自身もウソをついていたことになりますね」

つまり、キツネとタヌキの騙し合い・・・ということになりますでしょうか。

ひらたく言えば、どっちもどっち!

軽い騙し合いくらいで事がすめばよいけれど、
殺人事件に発展しているのだから無視できない状況である。

つい最近、わたしのパソコンに1通のメールが届いた。

「セックス・フレンドの申し込みありがとうございます」
「うっそぉー!」

身に覚えのない一方的なメールだから、
怒りのために髪がピナツボ火山の噴火のように逆立った。
夫に相談すると言下に「無視!」
差出人も明記されてない文面の末尾に、
申し訳程度に「覚えのない方はそのまま削除してください」とあった。

結局は無差別に発信されたメールらしいと推察したけれど、
それにしても個人情報はどこから漏れたのか。
いかがわしいサイトは一切訪問した覚えもないし心当たりはまったくない。

このようなメールがきっかけで興味を持ち、最初は興味半分で、
そのうちに泥沼にはまり込む人がいるのかもしれない。

君子、危うきに近寄らず・・・



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