第122回  ストレス解消法の不思議

現代人はストレスを受けやすい、或いは侵されている・・・と、
ストレス解消方法についてメディアで特集を組むことが多い。

たとえばアロマテラピーやら、さまざまな癒しグッズの羅列。
芸術鑑賞やらの精神安定系から、水泳やらヨガやらの肉体使用系と、
世間には様々なストレス解消方法が満ち溢れている。

ところで、あなたはストレスをどのように処理なさっていますか?

ちなみにわたしはデジタルカメラを片手に、
好奇心丸出しのお散歩がストレスをうまくやっつけてくれますが、
家庭生活にはストレスはないと思い込んでいるので、
ほとんどが政治や事件がらみです。

しかし、世の中は広い。
いや、広すぎます。
ストレス解消方法に、思ってもみなかった方法が飛び出してくるようである。

たとえば新聞から拾った見出しだけでもざっとこんな調子。

信州大教授、出張先で痴漢。女性触って「ストレス解消!」
小6らホームレス襲撃。中高生8人逮捕「ストレス解消」
親子3人焼死は放火。容疑で38歳逮捕「借金うっぷん晴らし」
その他にも、万引きでのストレス解消はひきも切らないようである。

主婦万引きに多いのは「欲しいものは何もない、でもやめられない」と、
育児や家庭不和のストレス解消法であり「胸がスッとする」そうだ。
食品を盗んだ大学教授は
「単身赴任で寂しかった。万引きすると気持ちがスッとした」ですって!
(こんな教授に教わる学生こそストレスだわ)

スーパーの保安員によると、会社社長や司法関係者の万引きもいるというが、
もちろん商品欲しさではない。

「社会的に地位が高い人ほど、ストレスから羽目をはずしたくなる」

これが原因だそうである。

そういえば、警察官のストレス万引きもときおり報道される。

そこで考えさせられた。

彼らのような行為や行動は普通の人にしてみれば、
ストレスの種になりそうなことばかりではないの?

たとえば痴漢や万引きにしても、罪を犯した瞬間から
「いつバレるか?」「いつ捕まるのか?」と夜も眠れなくなり、
ストレス指数は逆に高くなる一方のはずではないの?
それが「胸がスッとする」と言うのだから理解できない。

放火殺人ともなれば罪の重さも石臼級で、
当然のことながらストレス指数の針は吹っ飛ぶほどになるはず・・・

これが普通の人の感覚ですよね?

わたしは精神分析医ではありませんので、
罪を犯して「ストレス解消」という精神構造は未だに理解できないし、
理解したいとも思わないが、それには理由があります。

ちょっと女性に触ってみたいという欲望の果ての痴漢や、
スリルを味わいたいという欲望の果ての万引きなど、
すべてのケースとは言わないが、
その多くが自己の欲望を抑えきれないことが原因になっているはず。

つまりは<単純に道徳心の低下で犯した罪>のはずが、
いつしか「ストレス解消」と、尤もらしい言葉に取って代わったものであると、
どこかで疑っている。

当初、専門家や有識者が犯罪の原因に下した「ストレス解消」は、
ネット姫の独断と偏見で分析したら、
いかにも意味ありげでなんとなく耳に聞こえが良い言葉として、
今や<罪の意識を軽減させる元凶>の役割を果たし、
それは犯罪者の言い訳の役割を果たしていると言えなくもない。

「ストレス解消」と言った方が「欲望のままに行動した」より
はるかに世間的にはウケが良いはずですもの。

それより被害をこうむった人の「ストレス解消」の方は、どうしてくれるのよ。

世間には、専門家や有識者による流行語的なこの種の分析が、
本来の深刻な姿をお手軽なものに変貌させる役割を受け持ち、
それにより、より多くの弊害をもたらすことがあるような気がしてならない。

いずれにしても自分のストレス解消法が、
他人や周囲のストレスの種になることのないよう、
くれぐれも気をつけたいものです。

まさか、アタシのコラムが・・・


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