土地利用関係


1.旧法定外公共物

「自分の家の敷地に道が通っている?」

 あなたは、自分の土地の公図を見たことがありますか?
中には、公図を見ていてとんでもないことに気づいた方もおられるかもしれません。今回は、そ
んなとんでもないことを発見した相談者が私の事務所を訪れたところからはじまります。

(1)プロローグ

 磯野さんは、自宅を増改築するために自宅の公図を法務局でとった。公図とは、国土調査に
よって作られた図面で、法務局や市役所でとることができる。公図を眺めながら、増築プランを
練っていたところ、妙なことに気づいた。先祖から受け継いだこの土地は、もともと2筆からなっ
ていることは、死んだ親父から聞いてはいたが、その2筆の土地の間に道らしきものが通って
いるのだ。ちょうど、今の家屋と庭の間に道があるのだ。
 「そんな、ばかな。」彼はつぶやいた。
 現に縁側から庭に目を向けても道らしきものは見えない。
 周辺は住宅地で、裏は水路をはさんで、住宅が2軒。
 前は市道である。(図1参照)
 しかし、公図上は家と庭の間を道が走っている。
 わけが分からない彼は、私の事務所を訪ねた。

(2)旧里道

 私「磯野さん、事情はわかりました。後日現地調査はしますが、おそらくこういうことでしょう。」
 磯野「こういうこととはよくわかりませんが。」
 私「それをこれから説明するんですよ。このあたりは、昔は田んぼが沢山あったところで、昔
の土地割のまま宅地化したところでしょう。この公図をみますと、もともと磯野さんと(・)この(・・)
土地は2筆あり、その間に道、多分里道が通っていたんです。家の登記事項証明書を見ると、
それを磯野さんのお父さんが一つに造成し家を建てられたんです。」
 磯野「そうしたら、私は不法に道の上に住んでることになるんでしょうか?」
 私「まあ、そうですねえ、厳密に言えば・・・。」
 磯野「どねえすりゃあ、えんでしょうか?うしろに手が回るんでしょうか?」
 私「心配することはありません。旧里道であることが確認できれば、国から磯野さんが買い取
ることも可能です。もう少し調べさせてください。」

  こういった今は原形をとどめない里道や水路を旧法定外公共物という。法定外公共物と  
 は、里道、農道、用悪水路、池沼、溝渠、堤など地盤が国有地または公有地で、特別法(道
 路法、河川法等)の適用がないもののことである。
  少し、歴史的な話をすると、江戸時代以前から公の道などで存在し、それらをそのまま市町
 村や地元で管理してきたものがあり、明治になり、国有財産となったが、正確な台帳なんてな
 かったりする。切り絵図なんかを見ると、道路は赤線、水路は青線でかかれており、これがい
 わゆる赤線道といったり、青線といわれるものである。その土地の登記は、国であったり、地
 番のないものもあったが、平成17年3月末までに国から市町村へ譲与されたのである。しか
 し、中には、本件のような道として公図にありながら、その機能が失われているために、市町
 村としては、「要らないよ」といって、そのままになっているものも多くあり、こういったものたち
 は、依然として国有のままなのである。


  私は、その地区の古老である磯野さんちの裏のおじいさんに話を聞いた。
 おじいさん「そうじゃ、そうじゃ。わしの家の側の小道があるじゃろ。あれがな、昔は、水路を
渡って、表の道に出とった出とった。磯野さんの親父さんが、今の自宅のところで田んぼをしょ
うってな、そのころまでは確かに道はあった。磯野の親父さんしか使ようらんかったけどな。家
を建てるとき、確か、道をつぶして、2枚の田んぼを1枚にしたんじゃ。わしもこの町内の者もそ
の道を通る必要もなかったんで、誰も文句は言わんかったんじゃ。」

 私はおじいさんの話と現地の図面、写真とともに市役所担当部署に出かけた。機能が失わ
れた旧法定外公共物は、国の管理のままだが、もしかしたら、機能がなくても市はその必要性
を感じ、市へ譲与されているかもしれないからだ。まずは、市への確認が先決だ。
市が調査した結果、この旧里道は市へは譲与されておらず、国の管理のままであった。

(3)旧里道を購入しよう

 私「磯野さん、調査した結果、やはり、旧里道で、市の管理にもなっていないので、国、正確
には岡山の財務事務所ですが、購入の手続きをすれば購入できますよ。どうしますか?」
 磯野「そりゃ、買えるもんなら買いたい。娘婿と同居してるんですが、孫も大きくなり、狭くなっ
たんで、増改築して2世帯住宅にしたいんです。そのためには是非ともお願いします。」

  ここで、購入の手続きを簡単に説明しよう。以下の手順で行う。
 @境界確定・・・まずは、この旧里道と他の土地との境界を確定しなければならない。測量業
  者に依頼し、公図に基づき測量させ、関係者(隣接土地所有者と国(財務局))と立会協議
  し、境界を決定する。
 A売払申請・・・最寄の財務局、ここでは、岡山財務事務所に売払申請をおこなう。申請に基
  づき、財務局は、当該土地の周辺の取引事例価格や地価公示価格などを考慮し売払価格
  を決定する。
 B売買契約・・・売払価格が決定すると財務局から売買契約書が送られてくるので、それによ
  り、契約を締結する。このとき、売買代金を払う。
 C登記申請・・・土地の所有権移転登記を行い、晴れて、この旧里道は磯野さんのものとな 
  る。

(4)市の管理だった場合

 本件は、たまたま、国有財産であったため、わりとすんなりと磯野さんのものになったが、も
し、これが、市に譲与されたものであった場合はどうだろうか。ちょっと、ややこしくなる。
 磯野さんのものにしようとすると、購入手続きの前に「用途廃止(公用廃止)」をしなければな
らない。用途廃止とは、行政が公共の用に供する必要がなくなった場合に使用をやめることを
いう。利害関係人(隣接権者、土木水利委員、農業委員会など)の同意を得た上で、現在はも
ちろん将来も公共の用に供する必要がないと判断した場合に用途廃止ができるのである。用
途廃止後に市から払い下げてもらうことができる。

  一度、自分の土地の公図を眺めてみましょう。もしかしたら、隠れた道や水路があるかもし
れません。


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