奈良町 元興寺 回廊脇に植え込まれた萩花
     我がやどの 萩花咲けり 見に来ませ いま二日(ふつか)だみ あらば散りなむ
                                 巫部麻蘇娘子(かむなぎべのまそをとめ)

私の家の庭に萩の花が美しく咲きました。早く見にいらして下さい。明日、明後日頃には

もう散ってしまいましょう。早く早く来てくださいな!!

耳元でふーとこの様な言葉をささやかれると、また、そ〜と文でも渡されると男心が騒ぎ

ます。萩が咲き始めて2日位で散りませんが、早く逢いたい切ない気持ち、わかります。

萩に寄せて相手の来訪を促した歌でお相手はプレイボーイの家持さんに贈った歌でしょ

うか?

  高円(たかまと)の 野辺の秋萩 いたずらに 咲くきか散るらむ 見る人なしに 笠 金村

  伊香山(いかごやま) 野辺に咲きたる 萩見れば 君が家なる 尾花し思ほゆ 笠 金村


猪股静彌著「万葉集 恋のうた 花の歌」より


「万葉植物のうち、もっとも多く歌に詠まれた植物は何」万葉集を愛する人は誰も知って

いるそれは万葉ファンの常識です。「萩、ハギです」萩は万葉集中、141首の歌に詠まれ

ています。最多歌数です。2位の梅の119首を大きく越えています。萩は秋を代表する植物

です。山上億良が秋の花を詠んだ施頭歌の最初に詠んだもの萩です。「萩の花、尾花、くず

花、なでしこの花……」と続きます。萩は、しらはぎ、みやはぎ、まるばはぎ、等種類が多いが、

万葉人の歌った萩は、やまはぎであろう。2メートルほどに茂った茎が大きくなびき、紅むらさき

の花を飾った姿は見事です。
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