朱雀門 側道に咲く月草

月草に 衣ぞ染むる 君がため 深色衣(ふかいろごろも)(す)らむと思ひて

                                巻7‐1255 作者不詳

私はいま、月草で着物を染めていますわ。あなたのため、濃い色の摺り染

めをしょうとおもって。


愛する人に着せるために、きものを染める喜びにあふれている女性の歌。 

月草とは露草の古名。夏から秋にかけて、すこし湿った道端や、小川の縁な

どに群がって生え、青紫色の小さな花をつける。

たたんだ編み笠のかたちをした苞葉の間から突き出た花がかわいらしい。

摺り染めにすると、色がすぐ着き、よく染まるので、着き草と呼ばれるという

説がある。この花で染めたものは色があせて変わりやすいのが欠点。この

ことから万葉歌では、相手が移り気な性質だと知りながらも心がひかれる思

いを、月草にたとえて詠んでいる。露草と呼ばれるのは、露をおびた草という

意味。この花に朝露がきらきら輝く様子ほど美しいものはない。露を浴びて、

鮮やかな青紫のはなびらが立ち上がるさまは、まさに生きているという実感

を、それを見る人間にも与え、勇気づけてくれる。 

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