はねず 庭梅

  思はじと 言ひてしものを はねず色の 移ろひやすき 我が心かも

                                   大伴坂上郎女


「あんな男のことなどもう決して思うまい」と口に出して言ってはみましたが、

ハネズの色のように私の心はなんと変わりやすいのかしら、またあなたの

ことを思いだしてしまいます。


万葉集には、「はねず」を詠んだ歌が4首あり、はねずに該当する植物に

ついては 庭梅、庭桜、木蓮、芙蓉、石榴などの諸説がありますが、現在

は「庭梅」が通説になっていますが実際ははっきりしていないようです。

万葉集では、「はねず色」は花の色が褪めやすいとこから「うつろひやすき」

の枕詞として使われ、ほかにも、もう1首同じ用例があれます。「はねず色の

移ろひやすき心あれば 年をぞ来経る 言は絶えずて」  巻20‐3074

そして「うつろひやすき」とは、「移り気な」とか「恋心がさめる」といった「心が

定まらずふわふわした状態」を意味します。ところがこの歌では少し意味が

違い、「いったん褪めたはずの恋心がまたメラメラと燃え上がる」移り気な心

を指しています。                       (朱華色)はねずいろ

庭梅の原産地は中国。日本への渡来は古い。庭園に植えられ、花が梅のよ

うなものでこの名がついた。果実は球形で、直径約1センチと小さい。光沢の

ある赤色に熟すと、そのまま生で食べられる。核は漢方薬(咳止め)に。                            

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