佐保川の 小石踏(こいしふ)み渡り ぬばたまの 黒馬(くろま)の来夜(くよ)は 年にもあらぬか

                                        坂上郎女  巻4‐525

あなたは黒馬に乗って、佐保川の小石を踏みながら渡ってくる。そんな夜が一年中続いて

くれるとよいのになぁ!


坂上郎女が恋人の藤原麻呂に贈った情熱の歌である.「ぬばたま」は万葉集中、80首の

歌に用いられている枕詞。黒、夜、闇、夕、髪、今夜、夢、月などの黒いものにかかる枕詞

で、「ぬばたま」は桧扇(ヒオウギ)の実である。花が咲いた後にできる漆黒ともいうべき深い

黒色で、つややかな光沢がある。桧扇(ヒオウギ)の花のひろがるさまは、文字通り桧扇の

形をしている。桧のへぎ板で作った昔の扇で、その扇面は今の扇子とは違い、細長い円形と

いうような形、その桧扇が平城宮跡から出土して同資料館に展示されている。

巻1〜5  トップページ
ぬばたま(ヒオウギ)