吉野なる 夏実なつみの河かはの 川淀に 鴨そ鳴くなる 山陰やまかげにして

歌の意味は説明が必要ありませんね.というより、変に解説をつけると、折

角の素晴らしい歌のイメージが駄目になってしまいますから.

湯原王は「明日香風」の秀歌(1-051)を詠んだ志貴皇子の二男で、770年、

称徳天皇のあとに即位した光仁天皇の弟にあたります.湯原王は、父の豊

かな歌の資質をうけたのか、「万葉集」に清明な歌風の19首を残していま

す.歌の「夏実の河」は、今の吉野町菜摘の里を流れる吉野川のことです.

宮滝の小学校の前をすぎ、柴橋を吉野川左岸へ渡り、道を左に登れば菜摘

です.菜摘の里に入ると、もはや車の騒音はなく、鶯やコジュウケイの声が

聞かれ、空には鳶が舞い、今に古代の静寂をたたえた空気の色です.

                   巻1〜5   トップペー

菜摘の里(吉野町菜摘の橋より川淀を望む 後方三船山)