桃の花が咲き匂う春の山の辺 後方 三輪山

 春の苑(その) 紅(くれない)にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つをとめ 
  
                                大伴家持  巻19‐4139

                          
「わたしの万葉」 NHK奈良編 犬養孝監修より

この歌はたいていの方がご存じですね。春らんまん、まるで絵を見ているような

歌です。「春です。庭には桃の花が、満開になっています。そのピンクの美しい桃

の花に夕日が映えて、とてもきれいです。そした桃の花にみとれる万葉美人……

説明などは何もいらない歌です。歌を読んで、一人で想像する。そこに家持が作

ってくれた素晴らしい風景を、自分なりに描いてみるんですね。夢のような世界も

自由自在で、文字通りの桃源郷に浸ることも出来ます。ところで、この歌から大和

の風景、ことに桃の花が咲き匂う春の山辺の道を、連想される方が、意外と多い

ですね。わたしもその一人でしたが、実はこの歌、大和ではなく、家持が越中の

国守として今の富山県高岡市にいた時に作った歌です。山辺の道には、今も

桃畑があちこちにあります。その桃の花を求めて、若い女性が毎年沢山やって来

ます。山辺の道は、やはり桃の花の頃が一番ですね。春霞の中の大和三山…‥

うっとりするような景色が広がっています。そして、桃の花に若くて美しい女性…

そんな春景色の中で口ずさむにふさわしいのが、この家持の歌です

この歌が詠まれた高岡市の勝興寺のあたりで詠んだかたかご(かたくり)の花の

歌もよく知られています。

 もののふの 八十をとめらが 汲みまがふ 寺井の上の かたかごの花



 
修二会(お水取り) 天平から1250年以上もつづく法要 
            
    
                   
大和の春 

東大寺二月堂のお水取りは奈良に春を告げる行事です。これが終わると春の兆し

が現れると大和の人たちは言います。「お水取り」を修二会ともいい修二会とは修二

月会で、他にに修正会というものがあります。どちらも迎春の法会です。修正会は一

月の初めに、修二会は二月初めに行う。大仏開眼供養が行われた天平勝宝4年

(752)に始められて以来一度も休むことなく今年で1252年目になります。なぜ、くり

返えすように二月にも新春行事を行うのかについては、一説にはインドの旧暦では二

月が「正月」(一年の始まり)だったということらしいです。


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