石上いそのかみ 布留ふるの神杉かむすぎかむさびし 恋をもわれは 更にするかも

                          柿本人麻呂歌集  巻11‐2417

                                       犬養 孝著「わたしの万葉」より   

恋の歌です.それも若い人の恋ではなく、老いらくの恋です.そのせいか、自嘲

的な感じがしますね.「若い頃には何度か恋をし、そのたびにずいぶん苦しい思

いもしました.もう恋はすまい、することもないだろうと思っていたのに、年をとって

今またわたしは恋のとりこになってしまいました.布留の社の老杉でもあるまいに、

この年になって………」    恋をしているにしては、いやに自己嫌悪におちいっ

ていますが、内心はやはり、浮き浮きでしょうね.老いらくの恋ですから照れます.

恥ずかしいです.世間にとやかく言われるのもいやですから、心とは反対に、表面

は自嘲的になってしまいます.恋は、若い人だけの特権ではありません.50歳に

なっても60歳になっても恋いの花は咲き、結婚も出来ます.相手次第では可愛い

子供の顔だって見られます.老人ホームでも恋が芽生え、ときどき結婚式がありま

す.そんな時の二人は、若い人以上にうれしそうです.そして恥ずかしがります.

恋心のある人は、いつまでも若々しくて素敵です.男だって女だって同じだと思い

ますよ.いくつになっても異性に関心が持てるのは、若さの何よりの証明です.「老

いらくの恋」、言葉はどうも好きになれませんが、恋ある人生は、きっと楽しく素晴ら

しいでしょうね.

      石上 布留の神杉 神びにし われさらさら恋にあひにける

                            柿本人麻呂  巻10‐1927

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