金剛山の裾野に広がる宇智の大野
たまきはる 宇智うちの大野に 馬並めて 朝踏ますらむ その草深野くさふかの

                                  
中皇命なかつすめらみこと  巻1‐4

今頃、宇智の広々とした野原を馬で駆けめぐっていらっしゃるでしょうが、お怪我

がなければいいけれど…………、お帰りになるまで心配だわ


中皇命はいろいろな説はありますが、舒明天皇の皇后、つまり奥様ではないかと

思われます.御主人の舒明天皇が、朝早く狩にお出かけになりました.家の中で

ご主人の帰りを待っている現在の奥様と同じ心境ですね.舒明天皇は、天智天皇

や天武天皇のお父さんです.万葉集では「大和には 群山あれど………………

の国見の歌で知られる人ですが、この歌の舞台の宇智で、よく狩りをされていた

ようです.「宇智の大野」は、その名の通り大きく広々とした田園地帯です.五条市

の北。国鉄の北宇智駅から西にゆるやかに段々畑が続いています.ところどころ

に雑木の繁った小高い丘があり、今でも狩が出来そうな雰囲気です.村の奥手に

は、金剛山がそびえています.春は萌えるような緑におおわれ、秋には燃えるよう

な紅葉で彩られます.そして冬には、白くお化粧する日が多い所です.畑のおばさ

んが話してくれました.「金剛おろしがきつく、宇智は五条の北海道ですわ」

万葉の昔、金剛山裾野に広がる宇智の大野には、きっと獲物の多い狩り場だった

のてしょう.早朝から狩りに出かけられた舒明天皇もたくさんの獲物を抱え、喜々

として奥さんの中皇命が待っている高市岡本宮へお帰りになったことでしょう.宇智

の里の南のはずれには、万葉フアンにはよく知られた「浮田の社」
があります.
巻1‐5  トップページ