川流れ時々日記

流れ流され書いていきます

一月三十一日 
 蓄雨

 雨が降っている
 今作っているお面は、雨
 昨日から雲を塗り始めた、起きたら雨が降っていた
 きっと今、この子は雨を蓄えている

一月三十日 
 起立

 お面の色塗りを始める
 うずまきうずまきうずまき、と書き連ねていく
 モノトーンの世界に彩が加わる
 まるで二次元が三次元になっていくようで、面白い

一月二十九日 
 偶必

 着物カフェのちどりにいく
 そのつもりはなかったのだが、なんだか急にいく気になって、用もないのにいってみた
  いって喋っていると、偶然、自分の作品についての問い合わせがあった
 偶然か、必然か
 面白い

一月二十八日 
 音帯

 ライブを見る
 目を閉じてライブを聞くと、音の流れが閉じた目の上を形になって走る
 演者によって、その形は違う
 そんな楽しみ方が、意外と好きだ

一月二十六日 
 謝意

 初対面の人にありがとうを言われる
 お愛想などではないそれはとても心地がよい
 世の人が一日一回、笑顔でありがとうを言える世の中だったら、きっともっとたくさんのありがとうが生まれるだろうな、と思った
 謝意の連鎖だ、そういうのも、あってもいい

一月二十五日 
 現化

 スーパーで買い物をする
 千円くらい買おうと思っていたら、ちょうど千円だった
 頭の中のものが、ころりと現世に落ちた

一月二十四日 
 異道

 散歩の途中にふと見かけた横道が気になった
 なんとなく、その道に入り込む
 知らない道は魔法のように、どこか他の場所に連れて行ってくれる気がする
 その道から見上げた空は、いつもと少し違う色に見えた

一月二十三日 
 遠離

 バイクを運転すると、しんしんしん、と指が冷える
 人の温度から空気の温度に体が近づく
 体温が空気に近くなるほど、そこに自分の体の一部があることを意識できる
 近すぎると見えないことというのはあるのだろうな、と思った

一月二十二日 
 硬化

 お面がだいぶ乾いてきた
 型からはずし、ひっくり返して裏側を乾かしだす
 明日には裏張りができるだろう、やっとお面のさなぎができあがる
 さなぎが硬くなったら、翼を描き、燐粉を散らしていこう

一月二十一日 
 辛寒

 ぺペロンチーノをつくってみる
 鷹の爪を五本ほど入れてみたらとても辛かった
 唐辛子は体を冷やす効果があるそうだ、唐辛子五本分の寒さ
 今日は寒い日だ、二本ぐらいの寒さにしておけばよかったかもしれない

一月二十日 
 緑夜

 昨日の夜の話
 バイクで走っていると夜がいつもと違うことに気づいた
 なんだか妙にやさしい何かが夜の中にあって、色さえも違って見えた
 その夜は、緑色だった

一月十九日 
 生物

 細い道を車で走る
 前のほうから学生らしい自転車三台原付一台が横一列道幅いっぱいに走ってくる
 こちらを認めると、さぁ、っと二台づつ両脇により、すれ違うとすぐに元の体勢のように戻った
 まるで生き物のよう、まるで細胞のような、再生

一月十八日 
 寒暖

 お面がゆっくり乾いていく
 今うちは閉め切らないでヒーターを焚いている
 そうすると、ずっと暖かい空気をヒーターが吐いてくれる
 人は寒いがお面は乾く、作成第一な人生だなぁ

一月十七日 
 月踊

 うちの隣の中学校には防風林の松がある
 夜それを見上げると、きれいに並んで手を上げて、月に向かって踊っているようだった
 まるで、宮沢賢治の世界

一月十六日 
 寒待

 暖かい日だった、そして明日からは寒くなるそうだ
 ふ、と空を見上げると、小さな丘のような雲がいくつも、いくつも、連なっていた
 まるでそれは雪原の景色のよう
 明日からは寒くなるそうだ、その寒さが空に待機して、そんな形になっているのかもしれない

一月十五日 
 呑屋

 なじみの店に飲みにいこうと思い立つ
 雪駄がざりざりと砂利をかむ音や、店のほわっと暖かい空気、お客さんの喧騒に、帰り道の夜の空気
 想像するだけで楽しい、それだけで、酔ってくる

一月十四日 
 信道

 それぞれの人の心に、それそれの思いが降る
 その思いを信じて生きる

一月十三日 
 思考

 人と話しているとまず口にするようにしている
 口にしながら考えるから、言ってることもころころ変わる
 それに対して、じっと聞いて考えをまとめてから口を開く人もいる
 どちらもその人の、その時の、こたえ
 それぞれの頭の中で、それぞれの思考が、くるくるくるくる螺旋を描く

一月十二日 
 音旅

 一日家にいることが多い
 外の風景は見えないが、いろんな音が伝わってくる
 その音で想像する世界は現実とは違うかもしれないが、しかしそこにあるような気がする
 この部屋は、この頭の中を、旅している

一月十一日 
 変態

 お面をつくる度に書いているかもしれないが、お面を作るのは本当に面白い
 イモムシから蛹になり蝶になるように、そのかたちを変えていく様が、すてきだ
 今は紙を張っている、その一工程一工程が、美しい
 どんな羽を広げるか、楽しみだ

一月十日 
 高揚

 お面の型を作る
 粘土をこねて、形にしていく
 それがどうしうようもなく興奮して、おそろしく楽しい
 ああ、つくるってすばらしい

一月九日 
 決行

 一月に出展するイベントがすべて終了
 後半がっつり開いた一月と、前半ちょいと開いた二月
 そんなわけでお面の作成を決行
 グループ展に向けて、作成開始

一月八日 
 妙癖

 販売に立ってみても慣れない事がたくさんある
 そのうちのひとつが自分の作品が売れること
 もちろん自分の作品は大好きだし、自信もある
 それでも作品が売れると驚く、このくせ、何とかならんものか

一月七日 
 夕景

 空は薄い、薄い水色
 その下の這うように伸びた雲は、上からしたに近付くにつれ、白に近い紺色に桃色が加わっていく
 その雲と地面に挟まれた空間は、輝きに満たされた桃色
 その中心で煌々と輝く、だいだい色の、光の玉
 そんな光景が広がっていた、暮の時

一月六日 
 降雪

 沼津に出店するため走っていると、ぽさぽさと雪が降ってきた
 ぱさりと雪が舞い落ちるたびに、世界が冷える
 ゆっくりとゆっくりと、世界の動きが、遅くなる
 そんな、イメージ

一月五日 
 入眼

 模様替えをしていたら、達磨を発掘
 目に、る、の文字を入れてから、口端を上げて笑い顔にする、さらに後頭部に大きく、る
 微妙に罰当たり、それでも幸せそうな顔で、よい一年になりそうだ

一月四日 
 空海

 空は一面の曇り空
 雲というのはどうやら水のようだ
 まるで合わせ鏡のように
 空にも冷え冷えとした海がある

一月三日 
 街気

 東京から帰る
 同じ日本でも街が変わると空気が変わる
 旅をする時には、その空気が一番気になる
 ながくいると多くの空気を吸い、その街に少しづつとけていく
 今は静岡にいる、空気を、吸っている

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