八月三十一日
　雫垂

　夜中に車を走らせる
　ふと空を見ると、細い、細い月が、一番重いところを下にして浮かんでいた
　まるで今から雫になって、ぽとり、と落ちるかのように
　もしかしたら、夜明けに太陽の光で、本当に溶けるのかも
　ぽとり、と

八月三十日
　準備

　赤レンガの準備に追われている
　おうおうおう、という感じに
　いいものを持っていきたい、あとすこし、あとすこし

八月二十九日
　夕温

　昼間の熱い空気が夕方にゆっくりと冷えていく
　ゆらゆらと揺らぐ温度が、ふと、自分の体温と同じになるように感じる瞬間がある
　ふわり、と自分が、とける
　もう、今年も、そんな季節だ

八月二十八日
　道端

　赤レンガが近づく
　作品だけ作っていれば言い訳ではなく、雑務におわれる
　そういうのが楽しい時もあれば、めんどくさく感じるときもある
　今は、意外と楽しい、ありがたいことだ

八月二十七日
　変化

　今こうしてものを作ることを決めた自分は、それ以前の自分とは違うものになっている
　良しにつけ悪しきにつけ、ものを作るものになっている
　感覚が、開けている
　それは何だか今の自分にとって、とても心地よい
　生きるということは、変ることらしい

八月二十六日
　秋液

　今、虫の声が聞こえる
　窓からは柔らかな風が廻る
　昼はあんなに暑かったのに、夜になるとスポイトで、秋が一滴
　ぽたり、と落ちる

八月二十五日
　わんこ日

　最近髪の毛が長い
　目の前のがうっとうしくて、ぶるぶるっとする、長毛種の犬のように
　台風の中海辺を走る
　風にバイクがあおられて危険だった後、どうしようもなくハイになる、楽しくてしょうがない椀子のように
　そんなわけで、今日は犬の日

八月二十四日
　波腕

　波の音が、響く
　台風がもう近いのだ
　海がうねる音が聞こえる、ゆっくりと、台風が手を伸ばす
　ここは、自然の中、手を伸ばせば届く距離

八月二十三日
　雨龍

　どざっと雨が降る
　さっきまで蒸し暑かった空気が、ふ、と冷えてくる
　そよ、と風が流れ出す
　まるで雨とともに龍が空から降りてきたような、夜の雨

八月二十二日
　孤空

　家での作業中
　ふと、部屋の空気が一人の空気に満たされているのを感じる
　それがなんとも心地よく、ふ、と、心を空気に溶かす
　部屋に心が満ちる
　ココチヨイ、空間

八月二十一日
　秋へ

　エエラボ集中二日間終了
　なかなかに楽しい日々、でした
　そして次はクラフトの稼ぎ時、秋が来る
　いいものつくろう、がっつりと

八月二十日
　安感

　ユーコあくびとスギユウと呑む
　その帰りに通りかかった垣根から
　かぼちゃの花と、かぼちゃの葉と、かぼちゃの蔓が
　にゅっと生えていた
　とても、楽しい気持ちになった

八月十九日
　あおく

　夜の空に月が浮かんでいて、夜があおかった
　青くもなく、蒼くもなく、ただ、あおい
　そんな月夜の夜だった

八月十八日
　初歩

　いろいろと疲れたりしていたが、とん、と気持ちが戻ってきた
　できる、やれる、いける、そんな風に気持ちが動き、にやりとする
　すごく単純に、なんでもないきっかけで、気持ちが戻ってくる
　きっと、そういうものだ

八月十七日
　粘時

　今週末、静岡グランシップで行われる、おとみち、というイベントにエエラボで参加する
　何だかダンスとか民族舞踊とか、そういうイベント
　なんかもう、密度の濃い毎日となっている
　手をすっとかき出すと、時間が絡みついてくるような、そんな時

八月十六日
　感謝

　お面の色塗り開始
　面白い、ああ、面白い
　人渦を描くことが、一文字を書くことが、すっごく楽しい
　ああ、この世界にお面があって、よかった

八月十五日
　柔らか

　盆休みの月曜日
　いつもよりも車の少ない道、あくびをしながら走る自転車、軽トラの中で笑いあう男の子と女の子
　柔らかい雰囲気の流れる世界
　もし毎日こんな風に過ごせたら、もっと世界は平和になりますか？

八月十四日
　伊豆へ

　エエラボイベント終了
　片付けも終わり、一人車の運転をする
　小さい頃の遠足や、学生の頃の合宿を思い出した
　終わってしまうと、なんとも物悲しい
　また、いろいろやりたいな、と思った

八月十日
　伊豆へ

　伊豆へ向かう
　いろんな作家さんの参加するエエラボイベント、お暇な人は、見に来てくださいな
　では、いってきます

八月九日
　砥

　お面のふちを落とす
　す、っと雰囲気が変る、ほんの少しの作業で、研ぎ澄まされる
　お面は作業を進めるたびに、その表情もどんどん変っていく
　刃物を打つように、面ができていく

八月八日
　先見

　ぼちぼち来年の年賀状とか、カレンダーとか、本格的に考えなければ
　グループ展のお面を作ったり、納品にいったりも
　いろいろ、作りたい
　もっと作りたい

八月七日
　場所

　エエラボでラフォーレに設置に行く
　正直、このところエエラボとのかかわりをどうしようか、悩んでいた
　自分の居場所とか、自分の立場とか
　設置が終わる頃、そんなことを考えていたのが、馬鹿らしく思えた
　楽しかった

八月六日　
　 面楽

　お面の下張り完成
　いい、いいですぞ
　夏、太陽が早く乾かして次の段階に進めるのが楽しみ
　お面作り、楽しい

八月五日　
　 光夜

　信号待ちしていると、サイドミラーに車が写る
　こう、と強く、ヘッドライトの光が目に映る
　す、っと頭を傾ける
　サイドミラーの中でヘッドライトが消える
　ふ、と夜が明るくなる
　サイドミラーの中の夜は、ほんの少し、光を持っていた

八月四日　
　寄空

　空に、とろりとした雲が、満ちていた
　空いっぱいを覆う雲がそこにあると、なんだか、とん、と空が一つ下がったような気がする
　空が、少しだけ、近くなるような
　そんな天気の、朝

八月三日　
　大きめ

　新しいお面の型をつくる
　おかしい、思ったよりも、大きくなっている
　今見ても、大きいと感じる
　まぁ、きっと、いいものができるでしょう、大きく、つくろう

八月二日　
　八月

　今日はうさぎを描こう
　注文がたまっているので、ぼちりぼちりと
　八月は、お面も作りたいし、いろいろ、作ろう

八月一日　
　薄光

　夕立があった
　その後に雲が薄くなる
　太陽がそこから光を投げかける
　世界がわずかに、黄色く染まる、雨上がりの柔らかな、時