川流れ時々日記

流れ流され書いていきます

一月三十日 暖か向き
 花暦

 今日、椿を見た
 濃い緑の葉に、赤桃色の花、濃い黄色のしべ、奇麗だ
 そうか、今が一月なんだ、と思った
 四季があるから花が咲く、花が咲くから季節が見える
 一年通して奇麗な花が見られる、ほっとする、日本にいて、よかった

一月二十九日 ぽ、かり
 つくるとこころ

 作品作りに集中する日々が続くと神経が研ぎ澄まされていく
 まるで鉛筆を削っていくようだ、削られて現れた芯で心の中にあるものを形作っていく
 削れば削るほど芯は尖り、細かく細かく心の中のものを表すことができるようになっていく、そしてむき出しになった心の中心が多くのものを敏感に捉える
 些細なことに感動し、些細なことにも傷つく
 尖った先は人をも傷つける
 でも、やめない、つらいことがたくさんある、でも、喜びもたくさんある
 せめて、いいものを作ろう  

一月二十八日 水舞う空気
 

 今日は空気中の水分が多いようだ、景色がとても青く見えていた
 海も空も、向こうに見える半島も、ついでに手前のクレーンも青だった
 夕方になって同じ海岸沿いに出ると、虹が出ていた
 夕日が沈んだ後に、赤い夕日の色が地平線にすーっと広がり、空は紺色の夜が広がってきていた
 その間が奇麗な色のグラデーションになっていた
 地面をくるりと取り囲むような虹、地球が虹色の冠を、す、とかぶったようだ
 水が空を染め、大地を飾る、奇麗な、色

一月二十七日 笑い夜
 持久力

 新作がだいぶできてきた、もうすぐ下地が完成する
 初めての大物だが、はっきり言ってとても疲れる
 大きいもの作るのってとても大変だなぁ、と思う反面、途中の出来具合を見て自分で褒めたりしている
 このところ走り続けているが、何とかこのペースで持続したい
 持久力を持って、このままのクオリティを持続していかなければ
 自分を褒めつつ、気力を保っていこう、ま、何とかなるさ、くらいの気持ちで

一月二十六日 すーっと
 一筆

 空を見上げると、白い線が一すじ
 何のことはない、飛行機雲だ
 ただそれだけのことなのに、なんだかとても奇麗に見えた
 暮れかけた空のまだ高い位置の青い部分にひとすじの白、奇麗な色だ
 物を作ることに集中しだすと神経が研ぎ澄まされていってどんどん過敏になる
 何気ないものが美しく見えてくる
 ちょっと、うれしい

一月二十二日 ごうんごうん
 白雪

 今日ある女性を見た
 白い肌、青い目、純白の髪の、自分の親くらいの年の白色系の女性だ
 一瞬見て思い浮かんだのは、白雪姫が年をとったらこんな感じだろうな、ということ
 すごく、あわ〜い印象を受けた
 今日はホントにホントに寒い日だった、その人は、雪の精だったのかもしれない
 寒さを連れてきてくれたのかも

一月二十一日 ひやり
 偽りなし

 今日は大寒、一年でもっとも寒い日だそうだ
 西の方ではけっこうな雪になっているらしい、ニュースで見てもすごかった
 昔の人はえらいもんだ、寒いんだよ!今日は!という日は確かに寒い
 人間全体の経験である、説得力もある
 できることなら、このままだんだん暖かくなって欲しいものである
 うちは暖房器具が布団しかない、暖かくなって欲しいなぁ

一月二十日 春味
 かけら

 歩いていると空に何かが舞っていた
 よく見ると、どうやら鳥の羽毛のようだ
 す、ふ〜っと流れるように飛んでいく
 ゆっくりと降りてきていたので手を伸ばすと、ほわ、と手のひらに舞い降りた
 そっと握るとなんだかほあんと暖かい気がした
 まるで空から春のかけらが降ってきたみたいだ、今日はぽかぽかしていた、春がだんだんやって来るんだよ、と教えてもらったみたいだ

一月十九日 くるりでからり
 北風太陽

 今朝は雨が降っていた、雨の中バイクで仕事に向かう
 そして昼にまたバイクで走ったときには太陽が出ていた
 ぽかぽかと太陽が背中に当たるとじんわりとぬくぬくである
 ふと、北風と太陽の話を思い出した、北風がぴいぷう吹いても脱がなかった旅人のマントを、太陽がぽかぽか照ることで暑くてマントを脱ぐ、というお話
 このお話、なんだか旅人がかわいそうな気がしてしまう、寒い、暑い、と忙しい
 どうせなら、太陽がぽかぽかと輝いているから、そのぽかぽかをできるだけ素肌の近くで感じたくてコートを脱いだというのはどうだろう?
 なんか、幸せっぽくないですか?
 そんな風に自分的な話をいくつか作ってみてもいいかも

一月十八日 まっすぐな空気
 仲良くしよう

 近くに良く吠える犬がいる
 今日時間があったのでその犬の前に座って、仲良くしようよ〜、と目でうったえかけた
 しばらく落ちつかなげにした後に、ちょこん、と座ってふんふんとにおいをかいでいた
 いたって落ち着いた様子、吠える気配もない
 なんだか仲良くなれそうな気がした、ふふふふ
 しかし、その後通りかかったときまた吠えられた、う〜ん、負けないぞ、仲良くなってやる!

一月十七日 布団の心地よさ
 

 世間ではとても雪が降っているようだ
 うちの周りは降っていない
 雪のたくさん降る地方の人からは何言ってるんだといわれるかも知れないが、雪が積もって欲しいなぁ、とも思う
 雪の白、雪の舞い方、雪の感触、雪の音
 静の世界だ
 雪が積もっている中にうずもれるように寝転ぶのが好きだ、後が大変だけど
 ああ、いいなぁ、雪

一月十五日 寒さ綿の服
 影

 朝バイクに乗るとき影が気になった
 くっきりと、はっきりと、バイクにまたがる自分の影が、いた
 ふむん、と思ってバイクで走りいつもの海辺の道を走っていく
 そこにも影があった、ガードレールの影がひとつの線のように道の上を続いていく
 その線の上をバイクに乗った影がすー、っと滑っていく
 車の列の脇を通り過ぎると影がぱたぱたぱたぱたとけたたましい
 静かに、さりげなくついてきて、たまに楽しませてくれる
 もしかして影って意外とジェントルマンか?と発見した朝だった

一月十四日 逆さに赤上がる
 確認

 寒い、とても寒い、バイクで走っていると指先や顔がひどく寒くなる
 そんなときに、あぁ、自分には顔があって手があるんだなぁ、と思った
 寒い、ということで普段は考えない自分の体のことを考えた
 自分の体を確認する手段として、寒い、という環境が役に立ったのだ
 ふと悲しくなった、自分の体があるということを確認するために自分の体を傷つける人がいる
 確かにそれは自分という存在が強く感じられるかもしれない
 でも、他にも方法があると思う、食べる、空気を吸う、歌を歌う、モノを作る、そして人と笑いあう
 自分というものは何でできているか考えてみると、何をすれば自分というモノの存在を感じられるのかが見えるんじゃないだろうか
 自分は何でできているんだろう、きっと、いつか作りたいと思っているモノでできているんだろう、そう、アレで
 皆さんは何でできているんでしょうね?

一月十三日 凍え時
 おはよう

 朝、雨上がりなので雲がすごかった
 走りながら眺めていると、ぐるりと続く陸地の向こうのほうに白いもやが見えた
 波しぶきか、雲か、煙突の煙か
 くるりと大地にとぐろを巻いたように広がっていた
 しばらく走りいよいよ角を曲がろうかというところで見ると、もやがうんっ、と上に伸びていた
 時間は朝
 今さっきまで寝ていたもやが今起きたようだ
 つい、おはよう、とつぶやいた

一月十二日 柔らかな日
 境界線

 人と自分の間には線がある
 それは皮膚かもしれない、空気かもしれない、目に見えない壁かもしれない
 人と仲良くなるということはそこに通り道ができるということだろう
 大きく、小さく、ドアがあったり、時には崩れてしまったり
 使わなければ知らない間に古くなっていくその穴、使って何ぼのものだろう
 使っていない穴はありませんか?久しぶりに使ってみては、いかがでしょう?

一月十日 きんきんと
 冬の奇麗さ

 今日が始まってすぐ、バイクに乗ることになった
 ふと見ると座席がキラキラしていた
 どうやら露が凍ったらしい、きれいきれい
 静岡市は南国だ、風花が舞ったくらいでニュースになってしまうのだ、すごい
 そんな国でこんな風に氷の美しさを見られるなんて
 一日の初めにご褒美をもらったみたいだ、うれしいなぁ

一月九日 海のような
 違った時

 今朝寝坊した
 遅い時間にいつもの通りを走ってみるといろんな発見があった
 工事がいろんなところでしていたし、新しい重機を見た
 保育園の生徒たちが楽しそうにシャボン玉を追いかけていた
 いつも見ているはずの家の形がいつもと違って見えた
 同じものでも違って見える、時間の魔法だ
 こんな事で新鮮なものが見えてくるなんて、新しいものって意外と簡単に見られるものだ

一月八日 回れ右
 マラソン

 仕事が終わって見る空に白みが増していた
 少し前まで光が地面の近くをたゆたっていたのに、白く厚い層ができるようになっていた
 日が長くなってきた、こうやって季節が春に向かっていくのだろう
 などと思っていたのに、夜バイクで走るとお正月の頃より寒い
 日の長さと気温とが時間差で折り返してくる
 まるでマラソンみたいだ、一位太陽、二位気温、ただ今折り返し地点を通過しました

一月七日 空への道
 光の雨

 一番星を見た
 昔、星や月はその裏側にある世界への通路だ、と信じられていたとかいないとか
 そこから水が漏れて雨が降ってくるのだそうだ
 実際には星も、月も、光を纏った大きな玉だ
 そこから降り注ぐのは雨ではなく、闇夜をほのかに染める光
 星から雨は降らない、降るのは光、光の雨

一月六日 月鏡
 季節の音

 それぞれの季節にはそれぞれあった音があると思う
 冬は密度の高い石の棒を打ち鳴らしたような音、きんきん
 夏は張りの緩めの大きな太鼓を叩いたときのような音、ぼわあああぁぁぁん
 今夜は月が鏡のように奇麗だった
 そこから音が聞こえてくるようだ、きんきん、きぃぃん、きん

一月五日 冬がえる
 ふるい落とし

 納品にPanariさんに行ってきたときの話
 オーナーと同級生という話になったときに、モノづくりをはじめたら自分くらいの年代の人に良く会うようになったことに気付いた
 そのことを言うと、同じくらいの年のある人が、今が一番ちゅうぶらりな年で続けるかどうかでこれからが決まっていくのだ、と言っていたと教えられた
 神様にふるいにかけられているんだよ、と
 やり続けることで何か形になっていくことはこの一年でいやと言うほど思い知った
 たとえふるいにかけられても立っているぞ、進んでいくぞ、と思えた

一月三日 日本晴れ
 新年便

 品川から帰ってきた
 忙しかったのでまったく書いていなかった年賀状がやっとかけた
 遅くなってしまったが、結局手書きとなる
 全部で五十枚、けっこうな時間はかかったが、日本の正月には外せないイベントだ
 これが意外と楽しかったりする
 完成して投函、みなさま、あけましておめでとうございます

 

トップへ