"Hello,World"

Nitroplus 製作


「萌えと燃えの融合」を目指したNitroplus第4作、"Hello,World"

前3作とは打って変わったかわいらしい絵柄、そして学園ラブコメという今までのハードな雰囲気からは想像もつかなかった舞台設定。



果たして「萌えと燃えの融合」は成功したのでしょうか。

そんなわけで"Hello,World"レビューです。

<ストーリー>

僕・・・、友永 和樹はロボットだ。
ロボットである「僕」に創造主である"HIKARI"が与えた命令は

「人間社会の中で、ロボットであると気付かれる事なく人間の感情についての情報を収集せよ」

幸いにして精巧な擬態機能のおかげでよほどのことがなければロボットだと気付かれる事はない。
「僕」は人間の感情を収集するにもっとも効率的だと思われる場所、皇路学園に身分を偽り転入する事となる。



その後にどんな出来事が待ち受けるかも知らないままに・・・




てな感じでこのゲーム、主人公がロボットです。

エロゲーのパターンとしてロボットのヒロインというのは結構あると思いますが、主人公がロボットというのは結構珍しいのではないでしょうか。

ちなみにこの男、ロボットとして起動したのがゲーム開始の瞬間なので最初は本気で何もわかりません。
(一般常識等は知識として知ってはいますが)
もはや天然とかそういうレベルを超越したボケをかましまくるこいつは普通に笑えます。
そして主人公のアレな振る舞いをいい方にいい方にとるヒロインたちも凄い(笑




そんな奴が主人公なのでゲーム序盤の日常会話テキストが凄いです。

「状況認識クラスタ処理‥‥薫さんの行為は『親愛のポーズ』と出た。僕の言葉が気に入った可能性がある。」

「僕には、少し不可解な状況になっているといえる。行動選択クラスタは、薫さんに質問をすることを推奨した。」

「背後に深佳さんの発生パターンを検出‥‥呼びかけられているようだ。反転して、深佳さんを視野の中央に収める。」

『気まずい』‥‥極めて自然言語的な心理状態だ。それがクラスタ群の中から直接発生した今回の事態は、劇的な変化と言える。」



何かするたびにこういった内部処理がくだくだと。
おかげで中盤以降主人公が自らの意思を得て自分で考えて行動するようになり、自然に会話するようになった姿がすごく新鮮です。


ちなみに、日常の出来事の積み重ねが主人公を感情に目覚めさせる→主人公とヒロインたちを巻き込む大事件→世界を揺るがす大事件という感じでシナリオが三部に分かれているのですが、超長いです。
俺はいろいろ忙しかったこともありますがコンプするまで4ヶ月かかりました。恐らく総プレイ時間60時間くらいでしょうか。
本当、長かったです。



しかし、

崩れ去る何気ない日常。危機に瀕する世界。
忘れえぬ彼女との思い出。深く結ばれた絆。

「・・・僕は、みんなを守る」


って感じで非常に熱いラスト近くの燃え燃えな展開はやっぱりいつものNitroplusでした。
俺はこれを見れただけでも良しとします。


欠点としては、序盤の萌えを狙ったと思われる学園ラブコメ部分がはっきり言ってかなり寒い ことですかね。
もう痛々しくて見ていられないといった感じ。

まあこれがあるからこそ終盤が引き立つのではという気もしますが。


また、舞台となる2030年の東京の描写もなかなかよかったですね。
前300枚近いCG中半分以上は町並みや様々なメカで占められている(しかもどのCGもかなり高品質)のはびっくり。
戦闘機同士(F-22J vs Su-43)の空中戦を描写するためだけに十枚以上のCGを使ったりとか。

<キャラクター>

友永 和樹

主人公。ロボットです。以上。

とまあこれだけで終わっては身もふたもないのでもう少し。

上でも書いていますがこの男ゲーム開始と同時に起動した為言動がかなりアレです。
やってて突っ込みたくなってくる事もしばしば。
そんなこいつが「嬉しい」、「悲しい」といった気持ちを長々とした内部処理なしに素直に感じることができるようになっていく様は
結構凄いと思います。

また、終盤のアクションシーンでは人間を遥かに上回る身体能力を持ちさらにネットワーク自在に操るというロボットならではの能力を
生かし素晴らしい活躍を見せてくれます。
エロゲー主人公中最強クラスかも。

以下ヒロインズ。

愛原 奈都美

メインヒロイン。
物語冒頭、登校途中に主人公とぶつかってしまったせいで主人公内における「人間の少女の情報価値」を高くしてしまった人。

という事はこの時ぶつかったのが美少年だったら"Hello,World"はホモゲーになっていたのでしょうか(笑
「むく〜」「うきゅぅ〜」等の萌え語尾連発ですが萌えません。ドジっ娘。

奈都美ノーマルエンドは恐らくこのゲーム一番のハッピーエンドでしょう。最初に見たらそうは思えなさそうですが、他のシナリオの
ノーマルエンドと比べればそういわれているのも判るはずです。

笹ヶ瀬 薫

主人公達の通う学園の水泳部のホープ。ネットニュースに取り上げられたせいでほぼアイドル状態。
愛原 奈都美とは親友同士。てことは修羅場ですよ奥さん(ニヤリ

終盤の危機的状況においてはただ泣き喚くだけのヘタレと化してあんまりいいイメージがありません。
サブキャラたち(後述)は熱かったですが。
が、締めは爽やかにこれからの未来を想像させる出来でよかったですね。

北城 千絵梨

ヘリで学園に通学する事もあるほどのお嬢様。
学園を抜け出して絵ばかり書いている彼女の特異性に主人公は情報価値を感じることに。
この人は他のヒロインたちとあまり接触が無いせいかシナリオも裏に隠れた事実が明かされるといった感じです。

あと、序盤は物静かな人なんですが、中盤以降のやきもちっぷりは最高です。
萌えました。

そして千絵梨ノーマルエンド。
これを見ずして"Hello,World"を語るなかれ!!

本気でいいです。ありきたりのハッピーエンドではなく、状況だけ見ればかなり悪い状態でありながらも見終えたあとに残るのは
気持ちのいい余韻。
俺はこれが全エンド中一番好きですね。

また、彼女の執事である帯刀氏も素晴らしい燃えを見せてくれます。彼の最期は必見。

久我山 深佳

飛び級して主人公達の学園に入学してくるほどの能力を持ちながらも対人関係は不器用なロリ娘。
ちなみにロボットヲタクで一人でロボット作ってます。そして主人公は彼女のロボット製作を手伝うことに。

人間を遠ざけてまでロボット製作に打ち込むのはまぁいろいろと家庭の事情があるわけでして。

シナリオとしては一番好きかも。深佳ノーマルエンドでの少しだけ成長した姿は希望が持てました。

久我山 若佳菜

主人公の担任の教師。ヒロインの一人久我山 深佳の姉。
電気自動車全盛のゲーム中の世界でガソリン車(ポルシェGT2)を乗り回すお姉さん。

この人も深佳同様いろいろと家庭の事情を抱えてます。
シナリオはいまいちでしたね。
ノーマルエンドは恐らくこのゲーム中最高の鬱エンド。あれはないでしょう。

まぁ最期にクリアしたシナリオなのでもうこのゲームをプレイするのに疲れていたというのもありますが。

友永 遥香

とある事情により破壊されたロボットを主人公が修理し、自らと同じ「無機頭脳」を与え自立稼動ができるようにしたのが彼女。
ロボットのくせに病弱系の妹キャラです。(主人公への呼びかけは「兄さん」

主人公の学習成果を取り入れているおかげで起動時から感情に目覚めているため"Hello,World"最強の萌えキャラに。


また、終盤の活躍(というか豹変ぶり)にも恐ろしいものが。
日本刀持って主人公を攻撃してきますからね・・・
遥香トゥルーエンドはなんていうか虚しさが残ります。こんな結末しかなかったのだろうかと。
本人達は幸せそうなのですが。

サブキャラたち

とまあヒロインズはこんなところでしょうか。

が、忘れてはいけないのがサブキャラクターのお姉さん達、麻生 純子入間 佐知美です。
警視庁サイバーテロ対策班、通称サイバーフォースのエージェントたる純子。
ヒロインの一人、笹ヶ瀬 薫に付きまとうネットニュースのレポーター佐知美。

純子の大人なその姿はむしろヒロインを食ってあまり有るものがあります。戦闘能力もピカイチ。
これまでのニトロなら彼女がメインヒロインになったかも。
終盤の活躍ぶりは素晴らしいです。
特に久我山姉妹エンドでの彼女の最期はある意味泣けます。
俺は言いたい。どうして純子さんシナリオはないんだー!!


そして佐知美。まさに芸能レポーターというそのマシンガントークは声優さんの熱演が光ります。
笹ヶ瀬 薫シナリオでの主人公を諭すシーンでちょっと惚れそうに。CGまであるし。



他にも男女問わず魅力的なサブキャラが多くてよかったです。
個人的に悪役である「パーカー男」の容赦ないまでのキレっぷりが好きでした。

<グラフィック・音楽>

グラフィックはぷにぷにした感じの絵です。(なんだそりゃ)
下手ではないのですが、前半のラブコメはともかく後半の殺伐としたシーンには合っていない気もします。
また原画家が複数いるようでイベントCGにかなりばらつきがあるように感じられました。

やたらと立ち絵のパターンが豊富なのはプレイ時間が長いので飽きさせないでよかったですね。


特筆すべきは前にも言いましたがメカへのこだわり
かなり綺麗な3DCGで書かれた車やら戦闘機やらのCGがイベントCGの半分ほど(下手したらそれ以上かも)を占めています。
背景もかなり気合が入っていて”2030年の東京”を感じさせてくれました。建物のデザインとかはちょっと微妙ですが。


音楽は約20曲ほど。
なかなか良いです。特に緊迫したシーンで流れる曲たちがよかったです。

<システムとか>

右クリックから各種機能という普通のシステムです。
個人的にキーボードショートカットが充実しているのがよかったです。セーブもコメントが付けられてよし。ちょっと箇所は少ないですが。
また、あまりにも長い物語に対応して描画しない既読スキップがオプションで搭載されています。描画しないだけあって超高速。

ちょっとやってて虚しくなりますが。
あと、かなり上質の音楽なのに音楽鑑賞モードがありません。
これはサントラを買わせようという策略ですか?Nitroplusさん?

<総括>

正直に言いましょう。「萌えと燃えの融合」は失敗です。
が、それはこの作品の価値をなんら貶めるものではありません。ゲームを進めるにつれ、前半の長すぎる日常シーンも
それが失われる後半において価値を持つということがわかってきます。

ラブコメとしてははっきり言って失敗作かもしれませんが、近未来SF、アクションものとしては良作かと。
あとはそのあまりにも長すぎるプレイ時間に耐えられるかどうかですね。

はっきり言って本当長すぎて人には薦められませんよ・・・