水夏

Circus 製作


さて、今回はCIRCUS製作の「夏」ADV、「水夏」のレビューです。

ジャンルが「夏」です。一体どんな物語を見せてくれるのでしょうか・・・

<ストーリ、キャラクターなど>

父親の死に立ち会うため、故郷の「常盤村」に舞い戻った主人公。
彼はそこで不思議な少女に出会う。

少女が村を駆け抜けた夏休み。そこで起った4つの恋物語。

全ての結末を見届けたとき、あなたは・・・






とまぁ概略はこんな感じで。
このゲームは1〜4章に分かれており、それぞれの章に別々の主人公が存在して同時期の常盤村で平行して物語が進んでいきます。

真の主人公は4章主人公でしょうね。彼だけ名前変更が可能&4章のみシステムがADV(1〜3章はノベル)になりますから。
全体的に「死」や「憎しみ」といった人間の負の感情がテーマとなったシナリオで、結構暗い感じの話です。

3章バッドエンドなんて痛すぎですよ・・・




特徴としてはその巧みな叙述トリックがあります。
1〜3章はノベル形式なため、物語の語り手が代わることがあるのですが、それをプレイヤーは物語の外にいる人物であるという事を見事に生かしきったトリックとして魅せてくれます。

1章で、本当に死んでいるのは誰なのか判らなくなってくるラスト近くや、2章のヒロインのさやか先輩の視点に移り変わってからの物語の運び方、3章のラストのどんでん返しなど、泣きとか萌えとかではなく「やられたぁぁーーー」と叫びたくなってくる
ような物ばかりでした。

まるでミステリーを読んでいるかのようでしたよ。
うってかわって4章は普通のエロゲーシナリオでしたが。1〜3章をやった人なら「名無しの少女」の正体は容易に想像がつくでしょうし。
まぁ主人公の正体なんかは予想がつきませんでしたがそれほど驚きはありませんでした。


全ての物語が平行して進んでいるため、ある章での行動が次以降の章のシナリオに関係していたりするのは面白いです。
(大筋が変わるわけではありませんが)
例えば1章ラストで2章ヒロインのさやかが登場するのですが2章ではそこがさやか視点で語られ1章では謎だった彼女の行動に説明がつけられたりとか。


とりあえず、1章で道に落ちているエロ本を拾うという超どうでもよさそうな選択肢が2章に深く関わっていたときは爆笑でした。

しかも拾ったほうがいいし。







各章ごとに主人公、ヒロインともども変わるのは前述の通りですが、それが毎回新鮮な気持ちにさせてくれます。

が。個人的には皆余り好きになれませんでした。

1章主人公があまりにも寒いギャグを連発するのと、3章主人公のあまりのへたれっぷりに辟易。4章主人公は可もなく不可もなく。

そして1章ヒロインの伊月は性格が好きになれず、3章ヒロインの義妹である茜はうざく、もう一人のヒロイン透子は怖い。
4章ヒロインの名無しの少女は「人外」「ロリ」「一人称ボク」という俺のストライクゾーンど真ん中な設定で
どれだけ俺を萌え苦しませてくれるのか期待していたのですが、案外たいしたことなかったり。

あまりにど真ん中過ぎたようで。










しかし、2章だけは違いました。

薄幸のお嬢様さやか先輩に見事に撃沈されました
1章ラストで叙述トリックに見事にだまされ、2章は話の結末を予想してやると意気込んで始めたのすっかり忘れてしまうくらいでした。

そして2章主人公。

お前最高だよ。
えろげ主人公にありがちな鈍感な朴念仁でなく、いろいろ経験豊富で常にクールな彼は最高に格好よかったです。

なんたって、さやか先輩視点の時の彼の言動に普通に惚れそうになりましたから(笑)

俺は2章が一番好きですね。

<システムとか>

システムはかなり細かく設定をいじれます。セーブもコメント付で45個。十分でしょう。
既読スキップはなく、独特の「あらすじモード」(シナリオのあらすじを2〜3行程度で説明して次の場面へ)を搭載。

進むのに少ないとはいえマウスクリックがいるのでこれはあまり好きになれません・・・

グッドエンドでクリアして見れるおまけモードで読んだことのあるものなら全シナリオから任意の場面を選んで再生できます。


<総括>

人間の負の感情をテーマにした重いシナリオは好みが分かれるところでしょうが、視点の切り替えによる巧みな叙述トリックは本当に秀逸です。
一体真実はどうなっているのかが気になって時間を忘れてプレイしてしまいました。

話の先が知りたくてたまらなくなるシナリオというのはなかなか凄いと思いました。