カミカゼ☆エクスプローラー!

Clochette 製作


このゲームの存在を知ったそもそものきっかけは、別の記事を目当てに購入したとあるエロゲー雑誌での紹介記事。当時はそこまで心を引かれるものではなく、よくあるキャラ萌え&エロを前面に押し出したゲームというくらいの印象しかありませんでした。

それから、しばらくして。

たまにはこう、キャラクターのかわいらしさとエロの濃さを前面に押し出して売りにしたようなゲームをプレイしたくなるもんですよ。薄味のものばかり食べていると、たまに強烈な味のものを食べたくなるようなもの。
2011年前半にプレイしたゲームがキャラ萌えとは対極にある早狩武志シナリオの作品「恋ではなく」だったこともそれに拍車を掛けました。そんな思いを抱えつつ、どう解消したものかと思っていたところで偶然立ち寄ったエロゲーショップでちょうど良く売られていた本作に再会、すぐさま購入。



というわけで、「カミカゼ☆エクスプローラー!」レビューです。

<ストーリー>

今より少し未来、気候や地表の変化が起き、人の生活圏が少し狭くなってきた時代。
緩やかに変わる世界に呼応するように、若い世代の間で「メティス」と呼ばれる特殊な力を持った者が現れるようになる。
不思議な風が吹くという逸話が残る「上ヶ瀬市(かみがせし)」では、「祐天寺グループ」を中心とした複数の企業による出資のもと「澄之江学園(すみのえがくえん)」が創設され、メティスの持ち主、通称"メティスパサー"達の育成と教育が行われていた。

主人公、速瀬慶司(はやせけいじ)は、そんな能力とは無縁の生活を送っていたが、ある日、学園のエージェントと名乗る人物からなぜかスカウトされ、澄之江学園に入学する事に。
そして、ふとしたきっかけで、澄之江学園とその周辺の問題調査(という名の困り事解決)をする「学園都市調査研究会(通称:アルゴノート)」に参加するようになる。
これまで体験した事のない出来事にとまどいながらも、胸を躍らせる毎日。
そんな中、澄之江学園そして再開発された上ヶ瀬市には妙な噂があると耳にするのだった――。
公式サイトより引用 一部改変)



「超能力者を集めた近未来の学園都市を舞台にしたエロゲー」と聞いて、あなたは何を連想するでしょうか。

授業の一環として行われる能力の訓練。学園都市の裏でうごめく陰謀。ヒロインたちの能力を通じた自己実現と、そのきっかけとなっていく主人公。能力者と無能力者の確執。

本作には我々がこの舞台設定から想起するであろうものがおよそ全て揃っています。……そして、想起するであろうものしか揃っていません。
一切こちらの想像の枠内から出ないけれど、その枠の中であまりにも完成され安定した作りは感心するしかありません。どうもこういう表現をすると褒め殺しと受け取るひねくれた人も居るようなので巨大フォントで強調しておきます。


本当にすごいよ。そして面白いんだよ。


予想を裏切らないと言うことはすなわち安心して楽しめることであり、それは必ずしも退屈を意味しません。
個別ルート分岐から主人公とヒロインが付き合い出すまでがかなり早く、プレイ時間のほとんどは恋人となった彼女たちとの甘い時間が占めています。というか、登場するヒロイン5人のうち3人が昔からずっと主人公のことを好きで、1人は初対面の瞬間にひとめ惚れしているので、最初から主人公にデレていない娘は沙織ひとりしかいないという。プレイヤーを煩わせないこの徹底したお手軽さ、素晴らしい。

描かれていないものが裏にあるかのようにほのめかしながらも深い部分には一切触れないという世界設定の扱い方も上手いです。
海にほんの少し潜るだけで沈んだ街並みが見え、ヒロインと二人でデートする海岸の背景には海面から付きだした廃墟が映り、ヒロインと二人きりになりたいと出かける街外れは過去の津波と海面上昇によるゴーストタウン。主人公たち若い世代にメティスと呼ばれる超能力が発現した理由だって、世界的な海面上昇により生活圏が狭まり追い込まれた人類が進化を模索する過程で生み出したというもの。そしてメティスを使えない旧人類と使える新人類の対立という火種も世界の裏にはくすぶっていたり。
こういうちょっとした近未来SFのような設定を使っておきながらも、お話のメインには決して持ってこないあたりのバランス感覚。だってそうですよ、主人公やヒロインたちにとってはこれらは慣れ親しんだ日常の風景であって何も特別なことではなく、大事なのは目の前にいる恋人との甘い生活なのだから。
超能力による人類の革新とかSF的にかなり熱いネタなんですけど、その辺りに微妙に触れつつも不用意に突っ込まない(=ボロを出さない)のが単純ないちゃラブゲーにならない妙な味わいを与えています。

単純ないちゃいちゃで終わらずに妙にHシーンが濃いのも本作の特徴。
初体験が野外露出の娘が5人中2人もいる時点でなにかもう我々の住む世界とはずれてます。しかも片方は学校の中庭で露出。ひどい。
主人公もヒロインも相部屋の寮生活であるため気軽に自室に連れ込めないという前提はあるにせよ、ちょっと青姦率が高すぎるんじゃ無いですかね。しかも誰も彼も疑問持たないし。風花ルートとか告白直後に超自然に野外露出に走るし、ほんとこの人達は何をやってるのとプレイ当時は度肝を抜かれました。
とまあ、野外だとかそういうことは置いておくとしても、場所とか状況とかいたしながらの会話などによって行為に文脈を乗せるのがとても上手いのには感心するところ。普段のいちゃラブ日常の甘さをそのままうまく接続してHシーンに持ち込んでくるのでそういったシーンが浮いておらず、むしろ日常の愛らしい姿と乱れた姿とのギャップで燃える。その意味では風花ルート、沙織ルートとか最高だったよ……!!

主題はこういったヒロインたちとのいちゃラブとHシーンに置かれているのは間違いないとはいえ、終盤を引き締めるシリアスな展開の置き方も巧みなのがこれまた憎いところです。
特に美汐ルートや風花ルート、沙織ルート終盤は異能バトルとしての基本的なツボを的確に押さえているため、派手なところはないもののやたら面白く感じたものでした。
風花の救出という一つの目的のために結集した全員がそれぞれの能力を発揮して突き進む風花ルート終盤なんてこれぞキャラクターそれぞれが異なる能力を持つ異能バトルものの醍醐味ですし、美汐のリーダーシップの元に結集する美汐ルート終盤もなかなか。あくまで主人公-ヒロインの一対一の関係を掘り下げ、能力と自己実現・自己承認の問題を突き詰めていく沙織ルートも良い。
こうしたところで効果を発揮するのが「『触れた相手の能力』をコピーする能力」という主人公の特性。能力持ちのヒロインたちと恋人同士となった彼はそれはもういろいろと「接触」しているので、つねにそのルートの娘の能力を保持している状態です。お話の黒幕はどのルートでも変わらないものの、お陰で活躍のさせ方にバリエーションが出ていて繰り返しプレイにおいても飽きが来ません。
さらに主人公の頭が切れる奴という人物設定も異能バトルとしての熱さを保証。やるときはやる主人公というのは見ていて実にいいもんですよ、ええ。
異能バトル的な熱さは多少落ちるものの、残る琴羽ルート・まなみルートも上手いことヒロイン達&主人公が持つ能力を発揮できるような展開を持ってきていてます。
……これは逆に、ルートごとに「ヒロイン達の持つ能力と上手い具合に対応したトラブルが起こる」でもありますが。基本的にはそこまで気にならないものの、琴羽ルートではちょっと鼻についたり。水中でないと能力を発揮できない彼女を活躍させるにはああでもしないといけないというのは判るんですがね。


とまあ、ここまで延々と褒め続けるような形になってしまいましたが、なぜこうなるかといえばこのゲームは「いいところ」と「特に言及する必要もないところ」ばかりが満ちていて、「悪いところ」「引っかかりを覚えるところ」が本当に少なく出来ているから。
プレイヤーが何かしらの疑問や不満を覚えそうなところに全て理由と弁解と対策を用意している周到さにはめまいがするくらい。
たとえば舞台設定で言えば、恋愛感情がメティス能力を高めることがあるので不純異性交遊は校則で禁止されていない(なので風紀委員の沙織と付き合うのもたやすい)くらいはまだ予想の範疇だったものの、メティスパサー(メティス能力者)どうし、すなわち学生同士の子供の育児サポートプログラムが存在するという設定が明かされたときには開いた口がふさがりませんでした。うん……そうだね……それなら避妊しないでHしまくってもある意味では大丈夫だね……
とにかくこういったプレイヤーが何らかの引っかかりを覚えそうなありとあらゆる「カド」を前もって全部削ってあるのですよ。これは舞台設定のみならず、ヒロイン達との関係にも及びます。視点が主人公に有りながらもヒロインの内心のモノローグが特に何の断りもなく頻繁に挿入されるのには最初かなり驚きましたが、こうやって全部説明してくれるとプレイヤーは何も考える必要もなくストレスなくいちゃラブに浸れるのです。
そうやってあらゆるところに気が配られていること自体を意識させないくらいに気を配られている(重複表現)なためプレイに際してまったくストレスがなく、ただひたすらかわいい女の子達とのいちゃいちゃに浸り、それを引き締める終盤の異能バトルなシリアス展開に燃えることができるのです。
熱中して没入するのとはまた違う、心地よいぬるま湯にひたすら包まれ続けているような感覚。都合のいいエロゲー的舞台設定や筋書きも、ここまで洗練させればそれは一つの武器になる。

<キャラクター>

速瀬慶司

本作の主人公。
メティス能力は『触れた相手の能力』をコピーする"ジョーカー" いかにも当世風の「最強の無能力者」っぽいですね。
風花ルート序盤の妙に女慣れしてる感、まなみルートでの殺し文句連発などなど、なんかこうすごく自然に格好良い奴。これは確かに登場する娘たちがこぞってこいつに惚れるわ。
さらに頭も切れてここぞという時の度胸もあって知識も豊富。もう完璧や!!
こうやって特徴を列挙していくとすごく鼻につく人物のような印象もありましょうが、その辺りを完璧に制御しきってプレイヤーに反感を持たれるところにまでは行かないようにしているのは流石。色恋沙汰が絡むと年相応の童貞っぽさを発揮してしまったり、自分自身の恋愛感情や性欲にそれなりに自覚的なのもプレイしていていわゆる「鈍感主人公」に堕さずに良いと思ったところ。


……あ、でも彼はちょっと結婚考えるのが早すぎると思います。風花ルートとか恋人同士になった直後にはもう結婚がどうとか考えてたしな!!

以下、ヒロインごとの感想。並びは俺のプレイ順です

姫川風花

主人公のクラスの委員長にして、転校生である主人公の世話役。メティス能力は空気による不可視の絶対防御の盾"アイギス"
タイトルバックの全員集合絵で中心に位置し、実行ファイルのアイコンに顔が使われ、登場順も一番最初にして主人公に最初にメティスを与える、まさにいうことなしのメインヒロイン。
主人公とくっつく過程の自然さでいうと彼女が一番でしょう。「風花の救出」というシチュエーションが異能バトルとしての熱さを担保する終盤の展開も良かった。
本当に教科書(そんなものがあるとすれば)通りのオーソドックスすぎる展開も、癖の全くない素直でかわいい風花のメンタリティと合わさればそこには不思議な良さが生まれてきます。先の展開が読めるお話だろうと、やっていて不快にならずにヒロインの可愛らしさに浸れるのであればそれで!!良し!!

宇佐見沙織

主人公たちと対立する風紀委員会特別班のリーダーの上級生。メティス能力は影法師を操る"アンブラ"
どのルートもよくできている本作の中で、沙織ルートはさらに別格。もうこのルートをプレイできただけでカミカゼ☆エクスプローラー!をやった価値があった。

自己評価が低いけどそれを隠して強がってる友達のいないぼっちの娘を堕としていちゃいちゃするのって最高ですよね!!

自己評価が低いけどそれを隠して強がってる(略)いちゃいちゃするのって最高ですよね!!

自己評価が(略)いちゃいちゃするのって最高ですよね!!

大事なことなので何回も言うよ。
本作のヒロイン中ただひとりの控えめな胸の持ち主。……でも絵を見る限りではC〜Dカップくらいは余裕でありそうで、ハイティーンの日本人女性の平均から行ったら十分に大きい部類だけどなにせ他の連中が圧倒的すぎる。
本人も貧相だと気にしていて、周りからもすごい貧乳扱いされるのに違和感がずっとつきまといました。でもかわいいからもうどうでもいいや!!
内心があからさまに判りすぎる他の4人と違い、沙織だけは「女の子のよくわからなさ」とでもいうべきものの表現がよくできていて素晴らしいんですよ。方々でよくネタにされる宇佐見先輩ルートのHシーン表現のぶっ飛びぶり、それ単体でも十分にインパクトのあるものですが「主人公の予想を超える(性的に)わけのわからない提案を繰り出してくる娘」という形で不可知性を表現。
そんな彼女に何事も予測できると常に余裕ぶっていた居られる主人公が崩されていくのがじつに恋愛っぽくて良い。
お堅い風紀委員長と周りから隠れて恋仲になって、放課後の風紀委員会室で延々キスしていちゃいちゃし続けるとかもう、やばい。ほんとやばい。
さらにこの娘、付き合うとなったら自分から「私ってすごくめんどくさいと思うけどそれでも良いの?」と自信なさげに尋ねてくるからね。自覚してるけどやめられないあたりが……もう……もう……もう……!!!!! (俺はこういう拗くれためんどくさい娘が大好きです)

たんなる異能バトル的燃え展開にとどまらず、能力を通じた自己承認と自己実現を見事にやりきっているのは素晴らしいところ。ここで、自己評価の低いけどそれを隠して強がってるめんどくさい沙織のメンタリティがストーリーときっちりと組み合ってくるのです。
メティスによって得られる他者の心理の完全な認知と、他人の内心を完全に知ってしまったらその相手と「恋愛」は出来ないという葛藤。それを主人公と二人三脚で解消し、さらに他のキャラではおまけ程度にしかなっていないエピローグのHシーンで完璧に回収する。もう素晴らしすぎるよ。宇佐見先輩はめんどくさかわいい!!

沖浦琴羽

主人公のクラスメイトにして幼馴染み。メティス能力は水中呼吸を可能にする"マーメイド"
琴羽ルートがどんな話かと言えば……幼馴染みといちゃいちゃ。以上。
物語のメインにある謎がまったく解決されずにスルーされたまま終わりますからね…… これで良いのか……
そのあたりの要素が話にがっちり食い込んでくる風花ルート・宇佐見先輩ルートを先にプレイしたので、あまりのことに拍子抜けしました。

自他共に認めるお洒落さんで学園のミスコン1位という設定。私服の立ち絵が彼女だけ2種類ある辺りにきちんと反映されています。が、胸があまりにもでかすぎるのでその私服が変なんですよ…… 制服は「乳袋」を形成していると思えば見ていられるものの、せっかくのお洒落さん設定が台無し。
流されて青姦しすぎな本作のヒロイン陣において、たぶん唯一のはっきり「外は嫌」と言ってくる人。常識人や!! でも初体験は学校のメティス実習室。2回目は廃墟。3回目になってやっと自室のベッド。やっぱりおかしい。

速瀬まなみ

主人公の妹。メティス能力は硬化させた鉛筆であらゆるものを貫く"ペネトレイター"
妹といちゃいちゃ。以上。
雰囲気としては琴羽ルートとまったく同じで、甘すぎてからだがかゆくなりそうでした。こちらも物語の根幹に関わる謎にはほとんど触れず。
一度も明言はされないもののおそらくは実妹。しかし実妹を恋人にするというあたりの問題がほとんど表面に上がってこない、あまりにも潔いシナリオには脱帽。親との和解という重い部分に触れないまま終わりますからね。あまりのことにプレイ当時はこれでいいのかとぶったまげました。
他人の感情の機微に聡いという性格付けを生かし、まなみ視点がかなり多用されるのが特徴。風花ルートを裏側から見ているような展開が続き、基本的に主人公-ヒロインの二者の関係にひたすら注力する本作においては少々珍しい展開です。しかしそこで三角関係や修羅場といったプレイヤーにストレスを与えることをしてこないあたり、やはり本作におけるそういう部分を徹底しています。
そして「一緒に育っているので味付けの好みが同じだから信頼できる」という渋すぎる理由でまなみが作ってくる弁当を喜んで食べている主人公はただ者じゃないと思いました。料理の得手不得手ではなく、そんなところで判断するエロゲ主人公って初めて見たかもしれない……

祐天寺美汐

学園の設立にも関わっている祐天寺グループのお嬢様の下級生。メティス能力は司会の中であればどこでも補のを発生される"プロミネンス"
いわゆる昔に実は出会っていた系の幼馴染み。
このパターンだと「思い出す」までにいろいろな紆余曲折を経そうなところですが、このゲームはそんな面倒なことはしません。美汐ルート突入直後にいちど昼食を共にしただけで過去の因縁なんかを全部回収して決着!! その後は延々と恋人同士になった美汐といちゃいちゃ!! この徹底ぶり、嫌いじゃない。
他のルートでサブキャラとして登場する美汐を観ていたときは、本人のルートになったらその辺りの過去の因縁について詳しくやるのかと思っていたんですけどね。あのスピード感には驚きましたよ。
風花・沙織と並ぶ本作のメインヒロインでもあります。アルゴノートを設立したことで本作の物語を基盤づけたのも彼女。主人公にメティスを与えたのが風花なら、アルゴノートという場所に引き込んだのは美汐。
美汐の手料理を評価するときの主人公の基準が「少なくとも味付けのセンスは信頼できる」という渋すぎるものでまなみルート同様にたまげたのもいい思い出ですね。 外面から規定され自覚的に演じている「有名財閥のお嬢様」としての振る舞いと、気弱な内面とのギャップが弱点であり魅力でもある娘。これは突き詰めていくと外部からの規定のみに従って振る舞っているものすごく空虚な人間だと言うことになりそうな要素ですが、もちろん本作はそんな風に突っ込んだりはしませんので安心です。(俺はそういう空虚なキャラが好きなのでここはちょっと不満)




全員のシナリオを終えたところで振り返るに、風花が表のメインヒロイン、美汐が裏のメインヒロイン、沙織が裏のメインヒロインといったところですか。琴羽とまなみ? ……うーん、補完?
設定開示の順番がちょうど良くなること、そして美汐ルートの終盤が物語の最後を締めくくるにふさわしい大団円きわまりないものなので、この順序でプレイしたのは正解でした。

<グラフィック・音楽>

イベントCGの枚数がプレイ時間に比してかなり少なめ。どのヒロインでもCGの半分はHシーンに割かれているため、通常のシーンのCGは6枚程度しかありません(沙織のみ7枚) 実際、プレイ中もほとんどイベントCGが入らないように思えます。
が、その分を非常に豊富な立ち絵のパターンと、カットイン・画面分割等の演出で補って退屈させません。ほとんどのシーンも背景+立ち絵の芝居で押し通してしまうのに、立ち絵芝居と各種演出が上手いのでCGが無いことに違和感を覚えることはないんですよ
唯一、琴羽ルート突入直後の二人で服を買い物に行くシーンを「街路の背景」と立ち絵芝居だけでやられたのはかなり辛かった。無理しなくて良いのよ…… あそこまで行くと演劇的な感すらありました。

イベントCG枚数が少ない分は半端でない数の差分によって補われています。主に表情の変化なのですが、台詞と合わせて細かく動かしてくるので1回のシーンがCG1枚だけで進められることに対する違和感や不満はほとんどありませんでした。
立ち絵・イベントCGともども台詞の途中でもくるくると表情を変えるのは素直に感心してしまうところ。プレイ中で1回しか出てこない表情とか余裕でありますからね。特にHシーンでの適用例が素晴らしく、シーンごとに1枚しかCGが無いことも状況と台詞に合わせて非常に多彩に差分があるので飽きさせません。Hシーンを1回に付き1枚のCGで済ませるエロゲというのはたくさん見てきましたが、その1枚のCGの中でここまで差分を付けてるゲームはなかなか見ませんよ。少ない物でも10数パターン、多いのだと40パターンくらいあるという。


主張しすぎないけれど耳に心地よいし場面を的確に盛り上げる音楽も地味ながらよし。なかでも戦闘シーンの曲が好きですね。

<システム>

2011年発売のエロゲーとしては標準的なくらいのシステム。
動作も安定しておりまったく問題なし。欠点と言えばセーブデータにコメントが付けられないこと、ロード時にそれ以前の文章履歴を見られないところくらいでしょうか。

<総括>

「減点法で採点すると100点になるゲーム」

プレイ済みの方と本作について語り合った際に話題に上がったこのフレーズ、本作を進めれば進めるほどまさに的を射たものだと思わざるを得ませんでした。
ありとあらゆるところに心配りが行き届いており、洗練を極めたその姿はある種の到達点。無難さもここまで突き詰めれば品質を保証するものになり、それだけで十分な価値たり得る。
俺がこのゲームに感じた不満と言えば「全体的にヒロインたちの胸が人間離れした大きさすぎて恐い」というだけですし。それはお前の個人的な好みだ。

なにか独創的なものとか、驚くようなものをエロゲに期待している方は肩すかしを食らってしまうかも知れません。

だがそれとは逆に、とにかく完成度の高いエロゲー世界に浸りたいという人には最高にお勧めのゲームだとだと思いました。 ただし、2次元巨乳に拒否感を覚えないことは大前提。そこを見誤ると大変なことになる……!!