復讐の女神-Nemesis-

ぱれっと 製作


女子校……そこは秘密の花園(男どもの妄想の中では)
女子校の教師……それは夢の職業(男どもの妄想の(以下略)

そして、 「女子校の保険医」

これこそまさに男どもの(以下略)


というわけで、なんだか訳の分からない導入ですが「復讐の女神」レビューです。
(おなじみ邪悪スレで紹介されていたのとふり兄さんのところのレビューがプレイのきっかけでした)

<ストーリー>

時は2027年の春。
個々人の遺伝子を解析することによって病気そのものを根絶する『オーダーメード医療』なるものが確立され、人々は病気とは無縁となった時代。

病院の跡取息子として恵まれながらも退屈な日常を過ごしていた主人公は、事故に遭った従姉の代理として私立南條学園へ保険医として赴任することになる。

病院勤めに比べれば学校の保険医など甘いもの、ちょっとした気分転換くらいに考えていた彼。
だが、その認識は赴任早々にあっけなく打ち砕かれる。


何者かに荒らされた保健室。
前任者である従姉、美夏の事故の裏に見え隠れする黒い影。
身分を偽り赴任した筈の主人公の正体をなぜか知る少女。
保健室のデスクに隠されていた5人分の人物ファイルと、彼女たちを繋ぐ糸。


興味半分で調査に乗り出した主人公は、やがて『オーダーメード医療』の裏に渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく……



死力を振り絞ってハードボイルドなお話っぽくストーリー概略を再構成してみましたがどうよ?
上の文章は嘘は述べていませんが、けして真実を述べているわけでもありません。
なんたって主人公からして
「保険医って暇だな → 暇つぶしに何しよう → じゃあ女生徒喰うか」
という素晴らしすぎる思考回路の持ち主ですから。
エロゲ主人公としては正しいけど、人として根本的に踏み外してはいけないところを全力で踏み抜きに行ってるよ!!

なので調査を進める理由も真っ当なミステリのように陰謀を暴くためなどではなく、女生徒の個人情報を調べだして弱みを掴んで脅迫して喰っちまうため。
陰謀に巻き込まれたりなんだりはついでです。最終的に陰謀叩き潰したりしますがあくまでもついでです。

そして主人公のありえないくらいの小悪党ぶりもポイント。
普段は慇懃無礼に「〜ですね」といった口調で話している割に、ほんの少しでも自分の痛いところを突かれると逆上してヤクザ口調に豹変。
しかも豹変したあげく言い負かされて口ごもるわ、いい歳した大人のくせして未だに父親に頭が上がらないわ(悪党としての格が違う)ここまでくるとその小物ぶりがむしろ愛おしいです。



……主人公の話だけでだいぶ行数を使ってしまったところで本筋のストーリー内容についても少し述べましょう。
個々の女の子たちの裏事情を調べていくうちにそれを繋ぐ一本の糸に気付き、期せずして巨大な陰謀に巻き込まれる、というのはコンセプトとしては悪くないとは思うものの今一歩。
とりあえず世界的な陰謀のはずなのに舞台が主人公の勤務先の学園と元勤務先の病院だけでほとんど完結してるのはどうなのよ。
どうにもあらかじめ決められた結末に向けて無理やりキャラクターを動かしている感が強く、終盤の真実が明かされるシーンでもいまいち盛り上がりがありませんでした。

主人公が上述のようなアレな人になってしまったのも訳あってのことである、というのが序盤から繰り返しほのめかされるものの、やがて明かされる「理由」が恐ろしく軽いものなのも首をひねるところ。


一部の腹黒すぎるヒロイン数名を除き女性陣のキャラ立てがいまいちなのもマイナス。
所詮陵辱ゲーなのだからと言えばそれまでなんですが、上記の一部の腹黒ヒロイン達が本気で輝いていたこと思うとそれ以外の人たちにも光を当ててくれればと惜しく思うことしきりです。

<キャラクター>

南条(大城) 伸哉

主人公。身分を隠し(「大城」はその際の偽名)保険医として南條学園に赴くことになる。
慇懃無礼な口調が特徴的な小悪党。


そのあまりに突き抜けた小悪党ぶりと馬鹿っぷりはもはや神の域。
例えば作中の1シーンを抜粋すると、

保健室で謎の薬品を見つけ、前任の保険医である従姉の美夏の訪れる主人公。
薬について尋ねるのかと思えば、
いきなり美夏に薬品を飲ます → (何も起こらないな…) → 「じゃあ貴方の体に訊いてみましょうか」 → れいーぷ

しかも薬品が錠剤1錠しかないのにこの所行ですよ。
何考えてたらそこで「いきなり飲ませる」という選択肢が出てくるのかマジで判らん。


そしてHシーンでも彼の行動はとどまるところを知らず、相変わらずの慇懃無礼口調で言葉攻め…というより実況。実況ってなんだと思われてもまさにそうとしか表現のしようがありません。
具体的にどうなのかを抜き出すとこの文章自体が18禁になってしまうのでそれは避けますが、とにかく主人公の台詞があまりにも馬鹿すぎてHシーンがただのギャグになっていました。

南 優月

メインヒロインその1。
明るく素直な性格で、好奇心旺盛。誰からも好かれており、社交的な少女。
朝野 真理とは昔からの友人で、両親を亡くした彼女の唯一の心の支え的存在である。

学園に不慣れな主人公のパートナーとなり、捜査を進める手助けをしてくれる。



何の見返りもなしに捜査に協力してくる彼女の行動原理がさっぱり判らず、はいはいエロゲファンタジーと流していたら実はそれなりの意図を持っていてびっくり。
が、明るい態度の裏に秘めた理由という設定自体は悪くないもの、終盤の突然の豹変までそれを匂わせる描写がほとんどの無いのはかなりのマイナス。
言動の一貫性が取れていないため裏があるというより只のおかしい人になってしまってます。

歪んだ笑顔と「私は人が良いだけの女の子じゃないんです!」の台詞の組み合わせは、邪悪ヒロイン好きにはまさに至福としか言いようの無いシチュエーションなので個人的にはかなり好みなんですがもうちょっと描写をきちんとしてくれればなぁ……

朝野 真理

何事にも無関心で、存在が目立たないタイプ。唯一心を許せる友人として優月がいる。
身分を偽り赴任したはずの主人公の正体をなぜか知る少女。
事あるごとに主人公の前に立ちふさがり、思わせぶりな言葉を残していく彼女の真意とは…?
実はメインヒロインその2。
エンディングがあるのは上記の優月と彼女だけです。


腹黒と思ったら良い人というのもまた違い。
徹底して自らの目的を達成するためだけに動いているという意味では裏表の無い人物。

ふり兄さんのところのレビューでも語られていますけど、お互いの目的のために利用し合うだけの関係だった主人公と真理の二人の関係が、最終的に利害が一致することによって歪んだ信頼とでも言うべきもので結びついていく朝野ルートは何気に素晴らしかったです。

愛情というには程遠いものを媒介にし、しかし下手な愛故の関係よりも強固に結ばれたエンディングでの2人の姿にはある種の美しさすら感じました。
…あれだけ好き勝手して女生徒喰いまくったことは過去の事にして善人面かよと(主人公に対して)思わないでもないですが。

少々褒めすぎな気もしますが、対になる優月ルートが単なる裏設定開示シナリオに近くなっていることを考えればなかなか綺麗な終わり方でした。


あと、真理に正体を言い当てられそれまでの仮面をかなぐり捨ててヤクザ口調で脅しにかかったら返り討ちにあって言い負かされるという序盤のシーンは、主人公の小悪党ぶりと真理のクレバーさの双方を端的にあらわした名シーンだと思います。

茜 のぞみ

陵辱要員その1。能天気な水泳部員。
前の保険医である美夏から謎の薬を処方されていたようなのだが……?


逆境にもめげず夢の為に頑張る元気娘が、そもそも前提としていたことが嘘だと思い知らされて落胆のあまり堕ちていくのは実に良い物ですね(←変態)
基本的にメインのストーリーには関らないのであまり深いお話は無し。

下澤 沙耶香

陵辱要員その2。内気でおしとやかないじめられっこ。


この人もメインのストーリーにはあまり関ってこないので大して書くことが…
とりあえず虐められているところをちょっと助けてもらった(もちろん下心あり)だけであんな奴(主人公)になびいてしまうような人が生きていくにはこの世界は厳しすぎると思います。

荻原 恵・荻原 柚

陵辱要員その3・その4。ロリ。
過去の事故で片足が不自由な恵と、そんな妹をかばって近づいてくる主人公を警戒する柚のコンビ。
攻略は二人で1セットです。


序盤の追い詰めモード(後述)における最大の難関。
のぞみ、沙耶香の場合は問い詰め方を多少間違おうが問題なく進むことが出来るのですが、荻原姉妹は選択肢一つ間違っただけで逆襲にあってバッドエンド。
「こんな小娘にっ…」と実に小悪党っぽく悔しがる主人公と、( ̄ー ̄) ←こんな感じの荻原姉妹の勝ち誇った笑顔は実に素晴らしかったです。

そして「障害のある自分を守ってくれる優しい姉」への信頼が、裏返って絶対的な憎悪になる追い詰め成功時の描写も最高。
汚れてしまった自分への絶望とそんな境遇に陥れた世界への復讐心が、天真爛漫なロリっ娘を一級の邪悪ヒロインに変えていく様を見ているとぞくぞくしますね。

……ごめん、俺そろそろ本気でダメかも。

渡良瀬 美夏

主人公の幼馴染かつ従姉かつ南条学園の元保険医。
事故で怪我を負って保険医の職を一時退いている。なにか事故に関しては隠している事があるようなのだが…?


「事故」の真相も含め、物語の根幹となる部分に深く関わる人物。エンディングはありませんが真理、優月と並んでこのゲームのメインヒロインです。
なのでたびたび主人公の尋問を受けることになるのですが、「真相を話してくれないのなら体に訊いてみましょうか」とばかりに尋問の度に主人公にレイプされる実にかわいそうな人。上でも書いてるけど薬のまされたりとか。

夏樹 陽子

主人公の父親(南条病院院長)の秘書。
この人相手の追い詰めモード(仮称)はこちらが追い詰められる立場に立っているので緊張感たっぷりです。
問い詰め方間違うと即殺されるし。


一応黒幕の一味なんですが、序盤にほんの少し登場した後は鳴りを潜めていたのが終盤になっていきなり登場。
そして勝手に独白してくれる陰謀に参加した動機も首をひねるようなものならその明かし方もいかにも唐突。
優月ルートでの優月同様に全てがあまりにも唐突過ぎるため、悪役としての迫力もなにもまるでないのは終盤を微妙に盛り下げていて残念な点の一つでした。

<グラフィック・音楽>

原画はたまひよ
横向きや後ろ向きの立ち絵があるのが珍しいです。
が、それが演出として生かされているというと少々疑問符が。
ただ入れてみただけの域を脱してはいませんでした。

イベントCG枚数は207枚。全体のボリュームから勘案すると可も無く不可もなくといったところ。


音楽は26曲(Vo曲なし)
曲名が「mioblock」「heparin」「nitrol」といった医薬品関連で固められているのはユニークかも。
追い詰めパート時の緊迫感のある曲達はなかなか良いです。
それ以外の曲は特に印象に残るということもないありふれたエロゲミュージックでした。

<システム>

このゲームが他と一線を画しているところはその独自のシステム。
基本的な流れは、

普通のADVの捜査パートで証拠集め

「逆転裁判」風の追い詰めモード

×××

これらのステップの繰り返しで進んでいきます。

この追い詰めモードが意外な面白さ。
発言の矛盾を収集した証拠を突きつけることで崩し、ここぞというところでは思い切ってはったりをかまして押し切る。
上手い具合に証拠を提示していって一発で堕とせたときは妙に気持ち良いです。

そして序盤に女生徒を自分の欲望のために追い詰めたのとは一変し、「冥土の土産に真実を教えてやろう」と余裕ぶる黒幕から口八丁で生き残る終盤の「追い詰められモード」
証拠の提示を少しでも間違うと「その程度のことも推理できない奴に用は無い」とばかりに殺される状況で、小悪党ぶりを遺憾なく発揮しえげつなく生き残るのは主人公のキャラクター性とゲーム性が見事に一致した瞬間でしょう。


とはいえ、証拠集めの段階ではプレイヤーの介入する余地は全くなくテキストを読み進めていくだけですし、追い詰めモードも微妙に作りこみの甘いところがあって推理ゲーとしてみれば及第点ギリギリくらい。
あくまでも差別化のために採用したというだけで、推理そのものを目的にしていると肩透かしをくらうかと思います。

<総括>

まさに「間違った方向に突っ走ってしまった意欲作」

「推理もの」の範疇に入るお話のはずなのにありえない馬鹿さの主人公、むやみに腹黒い一部ヒロイン、そして意外に凝った本筋のストーリーの組み合わせによってなんとも表現のしがたいものが出来てしまっています。
ただの陵辱ゲーではない一味違ったものを作ろう、という製作側の思いは嫌というほど伝わってきて個人的には結構好きなんですがいかんせん詰めが甘いのが難点。

とはいえ企画の方向性自体はそれほど悪いものではないので、物凄い感動超大作みたいなものを期待していない限り普通に楽しめるクオリティだと思います。
主人公の実況にさえ慣れてしまえばHシーンも十分「実用」に耐える出来ですし。