CANNONBALL ねこねこマシン猛レース

ライアーソフト 製作


日記の方で何度も書いていますが、俺は映画の予告編やゲームのデモムービーがむやみやたらと好きです。
下手すると本編以上、予告編を見ているだけで満足できてしまうくらいです。

予告編やデモムービーだけならタダですしね。

そんな俺がふと目をつけたこのCANNON BALL ねこねこマシン猛レースのデモムービー
なんと7分もあるそれのまさに映画の予告編のようなすばらしい出来に、ちょうど燃えゲーに飢えていたこともありムービーを見ただけで購入決定。

そこに待つのはムービーどおりの良作か。
それとも単なる見掛け倒しか。

それでは、CANNONBALL ねこねこマシン猛レース レビューです。

<ストーリー>

「フォクシィ──お前をこの銀河で 一番の女にしてやる」


CANNONBALL それは死と隣り合わせの、宇宙で最も過酷なレース。
乗り手たちが求めるのはたった一つのゴール───銀河系最強最速の証!そのために彼らは命を、いや命より大切なものさえ投げ出す。

惑星ジェノバの掃き溜めにくすぶっていた運び屋フィリオ・ロッシが、伝説的な暗殺者フォクシィと出会ったその時、全てが始まった。

華やかなレースの影で進行する陰謀。襲い来る強敵との死闘。遙かな過去に置き去りにされた禁断の記憶───

クラウン諸君、準備はいいか?冒険を加速しろ。グリッドにつけ、エンジンに火を入れろ!
運命のスタートフラッグが、今、振り下ろされる───
(パッケージから転載)




うん、実に期待通り。
超個性的なライバルたちとの熱いレースシーン、レースとレースの間のお馬鹿な掛け合い、水面下で静かに進行する陰謀。
最終レース付近の展開の燃えっぷりは素晴らし過ぎてもう。

基本的にストーリーは一直線でキャラクターごとの個別エンドはなく、予選通過時の順位で2ルートに分かれる以外はフォクシィをメインに据えたお話です。
なんたって既にプロローグの時点で主人公とフォクシィは出来てますからね。
その後も明示的な描写こそないもののピットシップ内で普通に同棲(1つのベッドで寝てます)してたり主人公が「いまさら見たとか見られたとかで恥ずかしがる仲でもないだろ?」(フォクシィをお風呂に誘って)なんて素敵発言をかましてくれたり。

これだけ見ていると本編ではひたすら主人公とフォクシィのバカップル振りを延々と披露されるのではないかと思われるかもしれませんがそうではない訳で。

レースにおいてはクラウン(ドライバー)とナビゲーターとして甘い恋人同士というよりは生死を共にするパートナー、日常においてはお調子者の夫としっかりものの姉さん女房といった感じの二人の関係はなかなか良かったです。


もちろんエロゲですからHシーンのあるキャラはフォクシィだけなどということはなく、それこそ両手の指では足りないくらい居ますが(比喩ではありません)、ぶっちゃけ浮気です。
しかし性に開放的であっけらかんとした女性キャラが多いのと、なんだかんだいって主人公はフォクシィ一筋なのでドロドロした展開になる事はないです。
フォクシィ以外のヒロインも実に魅力的なのですが、終始一貫して主人公の気持ちがフォクシィに向いているからこそ終盤のあの盛り上がりがあると思うので不満はないですね。

<キャラクター>

いつもなら主要キャラを網羅するところですが、このゲームにおいては本選出場15チーム分のクラウン(ドライバー)+各チームごとにナビゲーターorピットクルー2〜3人とさらに大量のサブキャラがいるためとても紹介しきれないので俺の個人的嗜好で選ばせていただきます。ご了承ください。

フィリオ・ロッシ

主人公。惑星ジェノバのスラムでくすぶるしがない運び屋。
ひょんなことから受けた仕事でフォクシィと出会った事により、なりゆきでCANNONBALLに出場する事になる。

女好きで減らず口ばかり達者で腕っ節はからっきしで逃げ足ばかり速い。
15人のクラウンにはそれぞれ「復活の」アナスタシア 「猟犬」ブッチ・ヘインズ 「天使の唇」メルクリウス 「人形」ティコ・fgr 「聖杯の」ギャラハッド などといった二つ名が付いているのですがこの男は

「ごろつき」フィリオ・ロッシ

まさに言いえて妙ですね。

フォックスバット(フォクシィ)

ネコミミ少女型シミュラクラ(アンドロイド)。伝説的な暗殺者。
主人公とのレース勝負に負け、そのナビゲーターを務めるはめに。
実はその身に重大な秘密を秘めているらしいのだが……

人外+ネコミミ+暗殺者=∞
……すいません個人的嗜好に走りすぎました。

プレイ前のデモムービーを見ている段階では「何の冗談?それ、口説いてるつもりなの?」「運任せは嫌だわ。自分の力で決めたいの」等のムービー中の台詞からえらくとっつきにくいキャラクターかと思っていたのですが、蓋をあけてみれば主人公をよくサポートする自立した大人の女性って感じでびっくり。

浮気性の上に甲斐性無しの夫と、それに振り回される若妻みたいな主人公とフォクシィの関係は、精神年齢が低くて媚を売ってばかりの"萌え系"エロゲヒロインとは違っていてなかなか良かったです。

アナスタシア

大ロシア帝国の戦うお姫様。父親であるヴォルガ大公にぞっこん。
……人類が銀河系オリオン腕全域に広がっている時代にロシアがあるのかという突っ込みは無しの方向で。
大英帝国もまだあるっぽいですしね。

十数人の女性キャラ中1,2を争う扱いの良さです。もしフォクシィ以外の個別エンドが作られるとすれば彼女やティコのエンドになるのではないかと思います。
あと、レース中の立ち絵で剣振り回してるのは正直どうかと思いました。

ティコ・fgr

宇宙軍により開発された戦闘用生体AI。人間とは全く異なる思考形態を持つため、基本的に意思の疎通は不可能。
主人公との出会いは彼女に何をもたらすのか…
人外キャラキ(以下略
いい加減しつこいから俺

上でも述べましたが「ティコルート」が存在するといっても良いくらい扱いが良いティコですが、「基本的に意思の疎通は不可能」というのを表現するため台詞は全てWaveファイル逆再生です。何を言っているか全く判りません。
それなのに話は進んでいくのだから実に不思議です。Hシーンまであるし。

俺はクリアに増えるオプション項目でティコの言葉の内容が判るようにしてからティコルートをやったので良かったですけど、初回プレイでこれやったら何がなんだかさっぱりだと思いますよ。

これ以外にも大量にキャラクターが居るのですが、いちいち取り上げても長くなるだけなのでこれくらいで。
立ち絵と名前がある人で30人くらい居る気がします。そしてこれだけ大量のキャラクターを登場させながらどいつもこいつも非常にキャラが立っていて、扱いの良し悪しはありますが「どうでもいい脇役」があまり居ないのは凄いと思いました。

<グラフィック・音楽>

原画は小梅けいと氏。ちょっと癖のある絵ですが、男女問わずこれだけ大量のキャラクターが居る中しっかりと書き分けられているのは良し。
イベントCGは100枚(差分含まず)
質、量ともに標準以上だと思いますが普通にプレイしていると半分も埋まりません。自力フルコンプはかなり至難の業ではないかと。
俺は7割くらいであきらめました。


音楽は日常シーンは普通ですが、レースパートのBGMが異常に出来がいいです。
乗り物運転しながら聞いたら暴走必至ですね、あれは。
おかげで冷静になってみると大した事をしていないレースパートでむやみに熱くなれました。

<システム>

こればかりは誰がなんと言おうと高評価はしかねます。
とりあえず初回版にはインストール不能という特大のバグが潜んでおり、俺が買ったバグ修正版でも時折怪しい動作をしてくれました。
オプションではスキップに既読未読の区別が付けられるのに実際は未読でも何でもスキップしてしまうとか、テキストウィンドウのボタンを連打すると落ちる(説明書に注意書きがあります)とか見たCGが閲覧モードに登録されないなどなどなどなど。

またCANNONBALLのシステム、というかレースパートのシステムについて説明不足過ぎて困りました。
CANNONBALL本戦が全部で何戦あるのか解説されないので初めの頃はいつ最終戦が来るのかとドキドキしながらやってましたよ。
レースパートも高度な駆け引きなどはなく、とりあえず加速してれば勝てます。
プレイ時間の3〜4割はレースパートに割かれるのですからもう少し工夫して欲しかったです。

それでも何とかやりとおせるのは、上で書いたノリのいい音楽とむやみに凝った実況音声、そしてレース中に時折挿入されるちょっとしたイベント(ライバルから勝負を挑まれたりとか)や台詞のやり取りの燃えっぷりがあるからこそ。
これで「ゲームとして」も面白かったらより良かったんだけどなぁ・・・

<総括>

まさに「欠点はあるが良作」
これほどこの言葉がふさわしいと思った事はありません。

はっきり言ってレースパートは見掛け倒しですし、システムはダメダメ。
ストーリーについても明らかに描写不足な点がちらほらと。

しかしむやみにたくさん居るキャラクター達のキャラ立ちっぷりと、終盤の盛り上がり、あとフォクシィの魅力(←それはお前の個人的好みだ)はそんな事などどうでも良くなってくるくらい素晴らしいです。
悪いところを直すより、いいところを伸ばすという感じですね。悪いところ直さな過ぎですが。

とりあえず燃える話を読みたい人、精神年齢の低い萌えヒロインに飽き飽きした人、スペースオペラな世界観が好きな人(なんたって「地球」が伝説になってるような世界ですから)にはお勧めなのではないでしょうか。
「レースゲーム」として期待するとちょっと厳しいかな・・・